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第76話:なんでもない(10)
「ねえ、ぽこ」
「なに? くう」
「ふふふ。……なんでもない」
二人は、真っ白な門をくぐった先の、何もかもが透明な世界で、自分たちの声が響くのを面白がっていました。
「なんでもない、ってなあに」
「あのね、さっきまであったはずの僕たちの影が、いつの間にかどこかへ遊びに行っちゃったから」
「ふふふ。なあんだ」
二人の「しあわせ」は、もう何の記憶にも支えられていませんでした。
ただ、いまの空気が澄んでいて、隣に大好きな友達がいる。それだけで、この世界の終わりは、最高に楽しいピクニックのようでした。




