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第73話:なまえの、まじない
後ろをついてくる女の子が、二人の前に膝をつきました。そして、二人の掌に、自分の名前を指先でそっと書きました。
「……忘れてもいい。でも、一度だけ、私を『名前』で呼んで。そうすれば、この魔法の糸が、あなたたちを本当の姿に引き戻すから」
女の子の瞳には、祈るような、けれど消えてしまいそうな光が宿っていました。
「わあ、キミの手、とってもあったかいねぇ」
「ぽこ、これ、なんて書いてあるのかなぁ。……あ、『お・とも・だち』かな?」
二人は、彼女が教えた「名前」を、新しい遊びの合言葉だと思って、デタラメに呼び合いました。
「ねえ、おともだちちゃん! あっちの、光る丘まで競争だよぉ!」
女の子は、自分の名前を「遊び」に変えられたことに一瞬だけ目を見開き、そして諦めたように、美しく、悲しい顔で笑いました。




