第70話:お支払いは「なつやすみ」
二人の前に、ゆらゆらと陽炎が立つ「熱砂の門」が現れました。
『通行料:汝が今得た、心躍る「夏」の感触を、冷気回路の燃料として捧げよ』
「あ、これ。またお供えの時間だねっ」
ぽこは、迷うことなくパネルに手を置きました。
「……ねえ、ぽこ。いいの?」
くうが、門の前で立ち止まりました。
「せっかく思い出した『スイカ』も『お海』も……。あんなにキラキラしてて、大好きだったのに。消えちゃうんだよ? もったいないよぉ……」
くうの瞳には、獲得したばかりの「夏の輝き」が、手放したくない宝物のように宿っていました。
「いいんだよ、くう。だって、門の向こうに、もっと涼しい風が吹いてる気がするんだもん。スイカがなくても、あっちに『もっとおいしいもの』があるかもしれないよ。それにね、くう。わすれちゃっても、僕たちが一緒に歩いていれば、毎日が夏休みみたいなもんでしょ?」
ぽこが目を閉じると、さっき獲得したばかりの「砂浜の感触」も「波の音」も、すべて青い熱エネルギーになって門に吸い込まれていきました。
「……あ。いまね、頭の中が『ふわっ』てしたよぉ!」
門が砂のように崩れて開きます。二人は、夏がどんなものだったか、一瞬で忘れました。
「ねえ、くう。なんで僕たち、こんなに喉が渇いてるんだろう?」
「わかんない! でも、あそこに『光るお水』があるよ、行ってみようよ、ぽこ!」




