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第66話:わすれものの、におい


「ねえ、ぽこ。さっきのヘビさんのなかの『おべんとう』、どんな匂いだったっけ?」


駅の出口を抜けながら、くうがふと立ち止まりました。


「えーっとね、くう。……とっても、お日様の匂いがしたよ」


「そうだったかなぁ。……なんだか、お花の匂いだったような気もするし、もうわかんなくなっちゃった」


二人の前には門も装置もありません。けれど、一歩進むごとに、誇らしかった記憶の端っこが風にさらわれ、透明になって消えていきます。


「……わかんなくても、いいよね。いま、お腹がポカポカしてるのは本当だもん」


「うん。ぽこがそう言うなら、そうだねぇ」


二人は、自分たちの記憶が「お供え」しなくてもこぼれ落ちていくことに、ちっとも気づいていませんでした。


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