第65話:お支払いは「誇り」と「目的地」
列車が終着駅に着くと、目の前には「黄金の改札」が現れました。
『通行料:汝らが今得た、自己への「誇り」と、帰るべき「場所」の記憶をすべて供出せよ』
「あ、これ。またお供えの時間だねっ」
ぽこは、迷うことなく改札に手をかざしました。
「……ねえ、ぽこ。いいの?」
くうが、改札の前で立ち止まりました。
「せっかく思い出した『かっこいい僕たち』も……。あんなに綺麗だったお家のことも、捨てちゃうの? 捨てちゃったら、僕たち、またどこへ行けばいいかわかんなくなっちゃうよぉ」
くうの瞳には、獲得したばかりの「故郷」への未練が、重たい涙となって溜まっていました。
「いいんだよ、くう。だって、改札さんが『通っていいよぉ』って、綺麗な音で鳴ったんだもん。重たい誇りなんてなくても、僕たちはこうして手を繋いで、どこへだって歩いていけるでしょ? 行き先なんて、これから見つければいいんだよ」
ぽこが目を閉じると、さっき獲得したばかりの「英雄の誇り」も「愛する街の記憶」も、すべて青い電気信号になって改札に吸い込まれていきました。
「……あ。いまね、頭の中が『ふわっ』てしたよぉ!」
改札が開きます。
「ねえ、くう。なんで僕たち、こんなに身軽なんだろうね?」
「わかんない! でも、なんだかスキップがしやすくて最高だねぇ、ぽこ!」
二人は、空っぽになった心で、また新しい「きれい」を求めて、駅の階段を駆け上がっていきました。




