前へ目次 次へ PR 59/78 第61話:なんでもない(8) 「ねえ、ぽこ」 「なに? くう」 「ふふふ。……なんでもない」 二人は、錆びついた線路の上に座って、一羽の青い小鳥が毛繕いするのを眺めていました。 「なんでもない、ってなあに」 「あのね、小鳥さんが一回だけ、こっちを見てあかんべえをした気がしたから」 「ふふふ。なあんだ」 遠くで、止まったままの巨大な歯車が風に吹かれて「ギィ……」と鳴きました。 世界がどれほど壊れていても、二人の時計は、ただ「いま」という一秒だけを刻み続けていました。