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第55話:なんでもない(7)
「ねえ、ぽこ」
「なに? くう」
「ふふふ。……なんでもない」
二人は、虹色に光る水たまりに石を投げて、広がる波紋を見ていました。
「なんでもない、ってなあに」
「あのね、水たまりに映ったぽこのお顔が、お化けみたいに伸びちゃったから」
「ふふふ。なあんだ」
二人の心は、もう未来の計画も、過去の誓いも持っていませんでした。
ただ、いま、水面が揺れるのが面白くて、隣に大好きな友達がいる。
後ろで女の子が、二人が捨てた「あしたの約束」をそっと拾い上げ、手記のページを濡らしていることにも気づかずに。
世界はどこまでも静かで、そして、あまりにも「いま」だけが輝いていました。




