前へ目次 次へ PR 31/78 第31話:なんでもない(4) 「ねえ、ぽこ」 「なに? くう」 「ふふふ。……なんでもない」 三人の影が、夕焼けに長く伸びていました。 二人は笑っていて、一人は静かに俯いている。 「なんでもない、ってなあに」 「あのね、あっちの雲が、とっても大きなお菓子に見えたから」 「ふふふ。なあんだ」 遠くで崩れるビルの音が、音楽のように響いていました。 明日のことなんて誰も知らないけれど、いま、隣に誰かがいる。それだけで、この世界は完璧に「なんでもない」幸せに満ちていました。