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【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして【連載版】  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
本編

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43/46

43『運命』は、溺愛に気付く


「「「奥様、おかえりなさいませ」」」

 

 王都のヘンルートゥ家へ帰ると、侍女のアーネ、ミナー、ジリルが出迎えてくれる。


「ただいま。高いところの掃除とか、無理しなかった?」

「大丈夫でございます」

「奥様は心配のしすぎですよ」

「そう言って、ミナーはまた腰を痛めていたではないですか」


 アーネたちを見ると、帰ってきたな……という気がする。


「こら、私のことは無視かい?」

「旦那様もいたのでございますね」


 さらりと失礼なことをアーネは言うけれど、それに対してライラクスはやれやれと溜め息をこぼすだけだ。


 そんなライラクスを見つつ、こんなにも助けてもらったんだし、何かお礼をしたいな……と思う。

 うん? お礼?

 何かを忘れているような……。


「あっ!」

「どうした?」


 心配そうにライラクスは聞いてくれる。


「思い出しただけだから、大丈夫だよ。このあと時間ってある?」

「ヴォレッカのためなら、いくらでも」


 おぉう。キザですね。

 それが様になることが恐ろしいわ。


「その前にお召し物を着替えましょうか」

「そうですね。長旅でしたでしょうし、お体もきれいにしませんと」

「久々に腕が鳴りますなぁ」


 アーネたちに引っ張られていく私にライラクスは小さく笑いながら手を振っている。


「終わったら、すぐに行くから」

「分かった。待っているよ」


 それから小一時間かけて磨き上げられ、久々に可愛らしいドレスを着せられる。


「出かけないんだし、もっと楽な服でも……」

「なりません。まだ日中ですよ」

「はーい」


 実家では楽な服で過ごしていたので、お出かけでもないのにドレスを着るのは少し窮屈に感じるけど、仕方ない。


「ライラクス、入ってもいい?」


 コンコンと扉をノックすれば、ジーシが開けてくれる。

 そのまま紅茶を用意してくれると、ジーシは出ていった。


「あの、これなんだけど……」


 サミレット領に帰る前に刺繍していたハンカチを渡す。

 作ったまでは良かったものの、渡すのをスッカリ忘れていたのだ。


「ヴォレッカが作ったのか?」

「うん。その、お礼にと思って……。何がいいか分からないから、普段遣いできるものがいいかなって」


 そう言って、チラリとライラクスを見れば、眦(まなじり)を下げて嬉しそうにハンカチを見ている。

 高級なものではないし、たかだか刺繍したハンカチだ。そこまで喜ぶようなものではないはずなのに……。


「ライラクスって、私のこと好きなの?」


 思わず口から溢れ、慌てて口を閉じた時にはポカンとした表情のライラクスが私を見ていた。

 リーゼと約束していたけど、こんなに直球で聞くつもりなんてなかったのに……。


「今まで、ずっと伝えていたつもりだったが、伝わっていなかったのか……」

「え?」


 私を見る視線の熱さに、何だかじりじりと体が熱くなる。

 いや、まさか、でも……。

 そうかもと思ったこともあったけれど、ライラクスは誰もが振り返る美丈夫で、比べて私はどこにでもいる平凡な令嬢だ。

 だから違うと、勘違いだと思っていた。

 それでも、ライラクスの眼差しに気付いてしまった。気付かされてしまった。


「好きだなんて、愛してるなんて言葉じゃ足りないくらい、ヴォレッカだけを想っているよ」

「え……あ、その…………」


 挙動不審になった私にライラクスは微笑む。

 何か答えなければと思うけれど、どうしたらいいかも分からない。

 そもそも、恋愛的な意味で人を好きになるということが私にはまだ分からないのだ。


「無理に答えなくていいよ。片思いなのは、分かっていたから。でも、まさか今まで私の気持ちが伝わっていなかったとは……。これからは、もっと伝えていくことにしようか」


 何だろう。

 すごく愛されてるっぽいのに、それ以上に逃さないという意思を感じるのは……。


「ヴォレッカは私の妻なのだから、一生をかけて振り向かせてみせるよ。覚悟しておいて」

「お、お手柔らかにお願いします……」


 まさか、領地の危機を救うために王都にやってきて、『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻が待っているなんて思いもしなかった。

 しかも、婚姻だけじゃない。溺愛まで待っていたなんて……。


 サミレット領の問題は解決したけれど、それ以外の問題はまだまだ残っていて、これから先がどうなるかは分からない。

 それでも、私はライラクスの妻として生きていく。

 この恩は、一生をかけてでも返していくんだ。


 その中で、もしかしたら私もライラクスに恋愛感情を持つのだろうか……。


「まずは、結婚式でヴォレッカがいかに私に愛されているのかを周囲に見せつけないとだね」

「……え?」

「私に愛されているヴォレッカを見たら、ヴォレッカにちょっかい出そうなんてする男は減るだろう? それでも、ちょっかい出す奴は……ね」


 ライラクスの浮かべた黒い笑みに、顔が引きつる。

 溺愛なんて可愛いものじゃなかった。執着されている……。


「ヴォレッカは、私の世界一可愛い妻だからね。害虫は排除しないとだろ?」

「誰も私に見向きもしないから、安心して」


 生まれて初めて、平凡で良かったと思う。

 そうでなければ、ライラクスが何をしでかすか……。


 部屋には二人きりなのに、乾いた笑みを浮かべる私をライラクスは誰にも見せたくないとでもいうように抱きしめた。




〜おしまい〜



 

完結です。

最後までありがとうございました。

たくさんの方に読んでいただけて嬉しく思います。あまりにも嬉しいので、近々番外編を書こうと思います!!


もし少しでも楽しんでいただけましたら、☆の評価をお願いいたします。


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