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【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして【連載版】  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
本編

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35/46

35『運命』は、故郷へ帰る

 

「姉様だっ!! 父上、母上! 姉様が帰って来たよ!!」 

 

 玄関ポーチに座り込んでいたエリオットが、御者席に座っている私を見た途端、屋敷の中に向かって叫ぶ。

 そして、私の方へと走り出した。

 私もまた、急いで御者台から降りてエリオットの元へと駆ける。

 

「姉様っ! おかえりなさい!!」

「ただいま、エリオット」

 

 ギュッと抱きつかれ、小さな体を抱きしめ返す。

 サミレット領を出てから四ヶ月ちょっとなのに、もう何年も帰っていないような気さえしてしまう。

 それくらい王都での生活は濃いものだった。

 

「おかえり、ヴォレッカ。会いたかったわ。デーリッヒも久しぶりね」

「ほんの数日前にナーサ姉さんからの手紙が届いてね。デーリッヒが護衛していると書かれていて、驚いたよ」

 

 お父様とお母様も屋敷から出てきて、私とデーリッヒ兄を出迎えてくれる。

 

「ライラクスが来れなくなって、急遽決まったんだ」  

「そうか。子どもが生まれたばかりなのに、申し訳なかったね」

「謝んないでくださいよ。俺が自分で志願したんですから。騎士の時より遠征も減って、給金アップなんで、ライラクス様には感謝しかないですよ。……それにしても、まさか、叔父上にヴォレッカと同じ心配をされるとは。俺とリヒルもそうやって似るんですかねー」

 

 デーリッヒ兄が楽しそうに話すと、お父様もお母様もホッとしたようだ。

 

「長旅で疲れただろう。ゆっくり休んで……って、四人で来ると聞いていたのだが、二人だけかい?」

 

 その問いかけに、デーリッヒ兄と顔を見合わせる。

 

「執事のジーシと侍女のリーゼも一緒なんだけど、今は門の外にいるんだ」

「あら、それなら早く入っていただかないと」

「いや、そうなんだけどね。賊がたくさんいて、一先ず待機しているというか……」

 

 そう言う私を、キョトンとした顔でお父様とお母様は見る。

 

「賊って、人を襲う賊のことかい?」

「うん。途中で襲われたのを、連れて来ちゃった」

「誰も怪我はしていない? もしかして、執事と侍女が怪我したとか……」

「あ、違う違う。二人とも、かすり傷一つないから」

 

 むしろ、大変な目にあったのは賊の方なんだよね。 

  

「そう、良かったわ……。えっと、その賊は衛兵に引き渡せばいいのかしら」

「たぶん?」

 

 私もよく分かっていないので、思わず首を傾げてしまう。

 ただ「賊を引き連れて行くと驚くでしょうから、先に現状をお伝えしてくれませんか?」と言われたのだ。

 

「叔父上、伯母上、絶対に驚くから覚悟してください。エリオットは見ない方がいいかもですね」

「嫌だ! 僕も見たい! ……ねぇ、おじさんいいでしょう?」

「おじさんじゃなくて、お兄さんな」

 

 お兄さんを強調してデーリッヒ兄は言った。

 デーリッヒ兄はまだ二十三歳だし、おじさんと呼ばれるのに抵抗があったのだろう。

 

「デーリッヒ兄様?」

「そうだよ。エリオットは可愛いなぁ」

 

 よしよしと頭を撫でられているエリオットは不満顔だ。

 

「僕、もう六歳だから可愛くないよ。かっこいいんだよ!」

「そうだな。エリオットはかっこいいもんな」

「うん!」

 

 嬉しそうに笑うエリオットに、デーリッヒ兄は声を潜めた。

 

「かっこいいエリオットにしか頼めないことがあるんだ」

「え? どうしたの?」

「実は、久しぶりに遊びに来たから、屋敷の中がどうなっているのか忘れちゃったんだ。こっそり屋敷の中を案内してくれないか?」

「いいけど、何でこっそりなの?」

「忘れたって言うのが恥ずかしいんだよ」

 

 少し考える素振りをしたあと、エリオットはデーリッヒ兄の腕を掴んで歩き出す。

 デーリッヒ兄から、エリオットは任せとけ! と、アイコンタクトを送られ、小さく頷く。

 

「お父様、お母様、こっちへ」

 

 そう言って門の外まで出れば、馬に引きずられてボロボロになった賊と、いい笑顔のジーシとリーゼがいた。

 

「サミレット子爵、夫人、お初にお目にかかります。 ヘンルートゥ家執事のジーシと侍女のリーゼと申します」

「あ、あぁ、はじめまして。いつもヴォレッカが世話になっているね」

 

 お父様は返事をしながらも、視線は賊へと向けられている。

 

「この者たちは道中襲ってきたのですが、せっかくなので労働させようかと思いまして、連れて参りました」

 

 ん? 労働?

 

「その……労働とはいったい何を……」

 

 お母様が恐る恐るジーシに聞く。

 その表情が強張っているような気がするのは、気のせいではないだろう。

 

「堤防づくりを手伝わせます。体力仕事ですから、男手は多い方がいいでしょう」

「な、なるほど?」

 

 うんうん。分かるよ、その気持ち。

 私も同じこと思ったもの。

 

「しっかりと見張り、悪さは一切させませんので、ご安心ください」

「あ、はい。でしたら、急ぎ彼らの部屋の用意を──」

「いえいえ、お気になさらず。そこの木を一本お貸しいただけますか? 縄を巻いても良いと助かるのですが」

「それは、かまいませんが……」

 

 お父様とお母様は顔を見合わせて頷いた。

 それを確認したジーシとリーゼの動きは早かった。

 我が家で一番古い樹齢百年の木に、賊たちを縛り付け、動きを封じている。

 

「ジーシ、リーゼ、それはいくら何でもやり過ぎじゃない?」

「命を奪わないだけ温情だと思いますが……」

「そうですよね。命を狙うのですから、奪われても文句は言えませんよね」

 

 ジーシだけじゃなく、リーゼまで……。

 た、助けて、ライラクス……。

 リーゼはともかく、ジーシを止められるのはライラクスしかいないよ。

 

「因みに、堤防が完成したら彼らはどうするの?」

 

 私の言葉に、賊たちは怯えた顔をする。

 疲れて走れなくなったが最後、馬にひたすら引きずられるという経験は、彼らの心を相当に折ったらしい。

 まさか、縄の長さを短めにした理由が頭を打たないようにではなく、極限まで精神を追い詰めるためだとは思いもしなかった。

 

「それは彼らの働きと、どれだけ心を入れ替えられるかでしょうか」

 

 にこやかに微笑むジーシから、そっと視線を外す。

 馬車の中で尋問されていた賊のリーダーがずっと震えているのは、見なかったことにしよう……。

 

 

本日『悪役令嬢にざまぁされたくないので、お城勤めの高給取りを目指すはずでした2』が発売となりました。

Web版の投稿を小説家になろう様でも行ってますので、ご興味のある方は是非読んでみてくださいね!!

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