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【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして【連載版】  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売
本編

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27『運命』と赤薔薇のお茶会

  

「ようこそ、ファララス公爵家へ」

「お招きありがとうございます」

 

 ロゼリア様が出迎えてくれ、温室へと案内をしてくれた。

 温室に入れば、薔薇(ばら)の花が美しく咲き誇っていて、思わず感嘆のため息がこぼれる。

 大きな温室の中を、きょろきょろしながら進んでいくと、ひときわ大きな真っ赤な薔薇が目に留まった。

 

「あそこの薔薇、ロゼリア様のようですね」

「よく言われるわ」

「ロゼリア様ほど、赤が似合う方もいませんもんね。お名前の由来も薔薇からなんですか?」 

「そうよ。赤い髪を見て、薔薇を思い浮かべたんですって。お父様も赤い髪なのに、笑っちゃうでしょう? さ、着いたわよ」

 

 ロゼリア様が足を止めたそこには、真っ白なテーブルと二つの椅子が用意されている。

 

「……二人だけですか?」 

「えぇ、言ってなかったかしら?」 

 

 お茶会をするということと、日時しか教えてもらっていなかったので頷けば「そうだったかしら……」とロゼリア様は小さく首を傾げる。

 

「ライラクス様に熱をあげていた私と、婚姻したヴォレッカがそろったお茶会なんて、どんなに和やかに行われたところで、社交界で面白おかしく噂されるもの。他の人を呼んだりしないわよ」

「あぁ、なるほど」

 

 たしかに、私がロゼリア様の立場だったとしても、他の人は呼ばないだろう。

 

 ロゼリア様にとって、私は恋敵になるはずだったんだよね……。

 夜会で、きっぱりライラクスへの想いを断ち切ってくれたから、そうなることはなかったけど、何で私によくしてくれるんだろう? 

 どれだけ考えたところで、ロゼリア様にとっての利益が見つからない。

 むしろ、私と一緒にいると、好奇の目で見られることは間違いないし、ロゼリア様にとって不本意な噂が流れる可能性だってある。

 ライラクスと親しくなりたいという理由なら納得できるけれど、今はそれも違うしなぁ。

 

「私といても、不利益の方が多いと思うのですが……、何でお茶会に誘ってくれたんですか?」

「その不利益は、ヴォレッカが私へと意図的に与えているものなのかしら?」

「違いますけど」

「なら、問題ないわ。私が誰と一緒にいるかは、私が決めるもの。ヴォレッカ、それは余計な心配というものよ」

 

 きっぱりと言われ、その通りだな……と思う。

 

「失礼しました」

 

 素直に謝れば、ロゼリア様はくすりと艶のある笑みを浮かべた。

 

「別に気にしてないわよ。ねぇ、ヴォレッカは私とふたりでは嫌かしら?」

「そんなことありません。ライラクスのことで嫉妬されたり、詮索されたりするのが嫌なので、助かります」

「あぁ、それは間違いなくされるでしょうね」

 

 だから、今日のお茶会が二人だと知った時は、正直少しホッとしたんだよね。

 ロゼリア様は、そこらへんも考慮してくれたのかもなぁ。

 

 なんてお話しているうちに、目の前にはケーキやクッキー、フルーツなどが並び、温かな紅茶もティーカップへと注がれた。

 

「用があったら呼ぶから、全員下がってちょうだい」

 

 人払いをすると、ロゼリア様は紅茶へと口を付けた。

 美しい所作に目を奪われていれば、ソーサーにカップを置いたロゼリアと視線が交わる。

 

「リーゼはうまくやっている?」

「はい。あまりにも優秀なので、本当に来てもらっていいのかと思うほどですよ」

「そう……。それなら、良かったわ」

 

 どこか安心したように言うと、ロゼリア様は立ち上がり、空のお皿を手に取る。

 

「どれを召し上がるかしら?」

「……まさか、ロゼリア様が取ってくれるんですか?」

「そうよ」

 

 当然のように言うけれど、公爵令嬢のロゼリア様にケーキを盛ってもらうわけにはいかない。

 ここは、私がやるべきだ。

 

「自分でやりますし、ロゼリア様の分も私が取るので、座ってください」

「客人にさせるわけにはいかないわ」

「いえ、私も家格が上のロゼリア様にやってもらうわけにはいきません」

「……二人きりなんだから、別にいいじゃない。決めないなら、私のおすすめを盛るわよ」

 

 そう言って、チョコレートケーキとチーズタルトを皿へとサーブしてくれる。

 

「ありがとうございます」

「二人きりの時は、家格のことは考えないでくれると助かるわ。あれ、線を引かれているみたいで、嫌なのよ」

「分かりました」

 

 なるほど。言われてみれば、そうだよなぁ。

 でも、私からその差を崩すことはできないし、言ってもらえて助かった。

 気持ちをハッキリ言ってくれるから、ロゼリア様と一緒にいるのってちょっと楽(らく)だわ。

 

「わっ! このチョコレートケーキ、濃厚でめちゃくちゃ美味しいですね」

「でしょう? そっちのタルトはレモンの風味がしてさっぱりしてるのよ」

「それ、この二つで無限に食べられるやつじゃないですか」

「分かってるじゃない。最強コンボよ」

 

 なんて言いつつも、ロゼリア様はクッキーを食べている。

 

「ロゼリア様は、おすすめしてくれたケーキじゃないんですね」

「その組み合わせは、ストレスが限界を超えた時の最後の砦だから、普段は封印しているのよ」

「……そうですか」

「これから先、ストレスが増えそうだし、その時に思う存分食べることにするわ」

 

 そう言ってロゼリア様は笑うけれど、目がまったく笑っていない。

 

「ヴォレッカは、普段どうやってストレスを発散するの?」

「そうですね、掃除が多いでしょうか。汚れを無心でひたすら落としていくと無になれるといいますか……」

「無心になれるって、たしかに大事よね。掃除だと、試せなさそうで残念だわ」

 

 ロゼリア様が掃除を始めたら、お屋敷内が大騒ぎになりそうだもんなぁ。

 

「ストレス発散方法を探しているんですか?」

「えぇ、限界を超えそうになる度に、大量にケーキを食べるのでは体に悪いでしょう? 何か、別の方法があればいいと思って」

「無心になれる系でしたら、刺繍とか、絵を描くとかはどうですか?」

「やったことはあるのだけど、集中できなくて刺繍は指が血だらけになって、侍女に止められたわ。絵は好きなんだけど、私の絵を見ると侍女が泣くのよ。怖いんですって」

 

 えっと、泣くほど怖い絵って、何だろう。

 

「いつもリーゼが一番泣いていたわね……」

 

 どこか懐かしそうに言う姿に、リーゼのことを大切に思っているのが伝わってくる。

 

「ロゼリア様とリーゼって、仲がいいんですね」

「そうだったかもしれないわね。主人と侍女という関係だけど、少なくとも私は良好な関係が築けていたと思っていたわ。……どうしてリーゼを紹介したか、聞かないのね」

「それについては、もう教えていただいてますから」

 

 キシスの筋肉に惚れ込んだからだって。

 実際は、他にも理由はありそうだけど。

 

「言いたくなければ、言わなくていいですよ。でも、リーゼにとって、必要なことなら教えてもらえると助かります」

「……ヴォレッカに、リーゼをお願いして良かったわ」

「人手不足なので、ものすごく忙しいですけどね」

 

 私の言葉に、ロゼリア様は小さく笑みを浮かべる。

 そして、意を決したように口を開いたけれど、続いた言葉は世間話であった。

 

 

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