9: タミルの秘密
よろしくお願いします。
ジィード王国に再び戻ってきたのはタミルのタウンハウスに行ってから一週間以上経った頃だった。こんなに時間が経ってしまい、私はタミルの具合がとても心配だった。
「こんにちは、しばらく来られずにごめんなさい。タミルの具合はどうかしら?」
私はジィード王国に着くと、タウンハウスに帰らずにすぐさまタミルのところへ行った。
「こんにちは、ティファレット様。残念ながら、まだあいかわらずでございます。今日もありがとうございます。タミル様は今起きていらしゃいますよ」
私はいつものようにマイルドにタミルのところまで案内してもらった。
「タミル、しばらくお見舞いに来られなくてごめんね。実は錬金術の学校で色々調べてたの」
タミルの体調はやっぱり悪そうなままだった。
「ううん、気にしないで。いつもお見舞いありがとう。学校では僕の体調のことを調べてきてくれたの?」
タミルは辛そうな身体をおして起き上がり、ベッドに腰掛けた。
「ええ、そうよ。タミル、寝てなくていいの?」
「ああ、少しなら大丈夫だよ。それより何かわかった?」
「うん。そのことで、ちょっとタミルに聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「何?」
「ちょっと聞きづらいことなんだけど……」
「うん、大丈夫だよ。何?」
私はマイルドの方を見た。
「……マイルド、十五分くらい席を外して」
タミルが気づき、マイルドに声をかけた。
「承知いたしました」
マイルドは部屋から出ていった。
「ティファ、話していいよ」
「ありがとう……タミルって、妖精って知ってる?」
タミルは目を瞬いた。
「……妖精は知ってるよ。おとぎ話とかで出てくるよね」
「うん。それでね、色々調べていたら妖精にたどり着いたの」
「……どういうこと?」
タミルの顔色が変わった。
……私の考えた通りだろうと思った。
「……妖精はね、人間界の波動が身体に合わなくて、不調をきたすらしいの。これって、タミルやルーシア様と一緒だなって……。それに何より本物の妖精を描いたと言われている絵がタミルにそっくりだったの。タミルはルーシア様によく似ているし……だから私はタミルが妖精のハーフなんじゃないかって思ってるの」
「そんな……たまたま絵が似ていただけなんじゃない? 僕が人間じゃないなんて、そんなことあるわけないじゃないか」
それでもまだタミルはしらを切っていた。
「……タミルに飲んでもらったシックポーションが効かなかったのは、人間じゃない血が入っているからなの。人間だったらシックポーションで体調不良は治るものなのよ」
「……」
タミルが下を向く。
「……今度は否定しないってことは、やっぱりそうなのね」
「……ああ、ティファの言うことは大体合ってる。僕は妖精のクォーターなんだ」
タミルは顔を上げて、私の目を見てはっきりと言った。
「妖精のクォーター……」
「母方の祖母がチェンジリングにあった妖精なんだ……」
「……どうして今まで教えてくれなかったの?」
「……そんなこと信じないと思ったし、何よりティファが僕を気味悪がって離れていってしまうんじゃないかって思うと怖かった」
再びタミルは下を向いた。
「タミル……」
「ティファはこんな人間じゃないものの血が流れている僕を気味悪いと思わない? 僕は自分が純粋な人間ではないって知った時、気味が悪くて受け入れることができなかった。それに……ティファは子供の頃、普通ではありえないくらい頻繁に僕が体調を崩していたのを知ってるよね?」
「……うん。月の半分以上寝込んでた時もあったわよね」
「ああ、その時に母上から言われたんだ。これが妖精の血が流れているってことよ、この弱い身体が妖精の血が流れている証なのよって。僕は自分の身をもって知らされてしまった。もう受け入れるしかなかった。今だって、こうやって体調が悪くなっているのもティファが言っていた通り、妖精の血のせいだ。それに僕は自分が一生このままベッドから起き上がれなくて、母上のように死んでしまうんじゃないかって怖くてしょうがないんだ」
顔を上げ、涙を流しながら苦しげな表情でタミルは訴えた。
「タミル……」
私はカバンからハンカチを取り出してタミルに渡した。
(やっぱりタミルは自分が妖精の血のせいで体調が悪くなっていることを知っていたんだ……)
「タミル、さっきはタミルの気持ちをわかってあげられなくて、責めるようなこと言ってごめんね。言いにくいことを話してくれてありがとう。とても辛かったわよね。私はタミルと長年一緒に過ごしてきて、タミルのことはよく知ってる。タミルが妖精のクォーターでもタミルはタミルだから、私は気味悪いなんて思わないわ。それにタミルには錬金術師の私がついているわ。私は人助けをテーマに錬金術を頑張ってるのよ。だからタミルのことも絶対助けるわ。タミルを死なせたりしない!」
私はタミルの両手を取り、励ますように答えた。
「……ティファ、ありがとう」
タミルはまた泣いていた。
「タミル、泣かないで」
「これは嬉しくて泣いているんだ」
タミルは涙を流しながら嬉しそうにはにかんだ。
「もう、タミルったら。それよりもタミル、体調は大丈夫?」
タミルの部屋にきてしばらく時間が経っていた。タミルの顔色が最初より悪くなっていたので私は心配になった。
「……ごめん。そろそろ横になりたいかな」
「そうよね、わかったわ。また来るわね」
さっきの話で身体だけでなく、心にも負担がかかったのだろう。また日を改めてタミルのところへ来ることにした。
お読みいただきありがとうございました。




