8: タミルの体調不良の原因
よろしくお願いします。
「それでわざわざここに戻ってくるなんて、よっぽどよね? 一体どうしたの?」
「……実はタミルが体調を崩してずっと治らないの」
「タミルって、ティファの幼馴染の人よね?」
「うん、そう。よく話題に出してたあのタミルだよ」
「体調を崩しているってことは病気ってこと? シックポーションは試したの?」
「試したけどダメだった」
「そっか……シックポーションは毒も効くから、毒でもないわね。呪いは?」
「それも違った」
「呪いもダメか……うーん他には何かあるかなぁ」
「……そういえばサラはどうして図書館にいたの?」
私はサラがどうしてここにいるのか気になった。
「私は物語の本を借りに来たのよ。ここにある物語の本って、一般的な物語の本と違って実際の話を本にしているって言われていて、面白いのよね」
「へー、そうなんだね。サラって、昔からよく物語の本読んでるよね」
「うん。楽しいし、息抜きになるしね」
「どんな話の本を借りようとしてたの?」
「妖精と人間の恋の物語。この表紙の妖精、かっこいいでしょ? 王子様らしいわよ」
サラが見せてきた。
「……この妖精の王子……」
「どうしたの?」
「タミルに似てる……」
「えっ! ティファの幼馴染の子に?」
「うん……」
「彼、めちゃくちゃかっこいいのね。似てるなら会ってみたいわ」
「……」
「ティファ? どうしたの?」
「もしかして、タミルは……妖精なのかもしれない」
この本のように妖精であれば、あの恐ろしく整った容姿の辻褄が合う。
「……この絵は本当の妖精の姿を描いているって言われているのよ。この絵にそっくりならそうなのかもしれないわね」
私達錬金術師は“私達の共存者“と呼ばれる人間以外の存在が実在していることを知っている。
「妖精だったら、人間のためのシックポーションが効かなくても当たり前かもしれない。ありがとう、サラ!! 私は全然そんなこと思いつかなかった。私図書館に戻るね!」
サラのおかげで閃いた。
(この世界にいるのは人間だけじゃない。妖精もドワーフもユニコーンも存在してる)
私は“私達の共存者“について書かれた本を探してみた。探してみるとさすが錬金術師の学校で、何冊もあった。ある一冊の本は絵ばかりの本で、妖精、ドワーフ、ユニコーン、それぞれが絵で紹介されていた。
(妖精は人間に似た容姿だけど、整いすぎて人間離れしてる。それにさっきの物語の本の妖精の絵に似てるし、タミルにもどことなく似てるわ)
私はもっと詳しく妖精ついて知りたいと思い、詳しく書かれた本を探した。
(妖精に関しての本は何冊かあるわね。よかった)
ある一冊の本にはこう書かれていた。
『しばしば妖精は人間の赤子を妖精の赤子と取り替えることがある。その子供は妖精の取り替え子という』
(チェンジリングのことね、先生と一緒だわ)
実は錬金術師学校の先生が、赤子の頃にチェンジリングにあったと親から聞いたって言っていた。ちょうど、その時に部屋に戻ってきた親が妖精に気づいて取り返したけど、親が来なかったらそのまま妖精に連れ去られただろうと。
(このチェンジリングなら妖精が人間界にいてもありえるわね。タミルはきっとチェンジリングにあった妖精ね。……でもチェンジリングにあっていたら……ご両親は気づくわよね?)
それにタミルの顔立ちはルーシア様にそっくりだった。
(それじゃあルーシア様がチェンジリングにあった妖精なのかしら? そうだとすればタミルは妖精のハーフ?)
色々考えながらもページを進めていくと
『そして、妖精は人間の世界の波動に身体が合わない。妖精であればいずれ身体に不調をきたすことになるだろう』
(これ!! タミルやルーシア様がよく体調を崩していたことの説明がつく!)
やっぱり、ルーシア様の方が妖精で、タミルは妖精と人間のハーフなのかもしれない。ハーフでも妖精の血が流れているのだから、同じようなことが起こるのだろう。
(本当に妖精のハーフだとしたら、どうやって身体の不調を治すのかしら?)
私は図書館にある妖精の本を全て読んでみた。本には妖精の取り替え子のことや妖精が好むもの、身体の特徴などは書かれていたが、肝心の身体の不調を治す方法は書かれていなかった。でも、タミルが妖精のハーフかもしれないと気がついたことは大きな収穫だった。
(タミルは自分が妖精のハーフってことを知ってるのかな……)
“私達の共存者“の存在は錬金術師だけの秘密だし、妖精のルーシア様がタミルに妖精のことを教えなかったらわからないだろう。
(タミルが自分が妖精のハーフって知らなくて、なんでずっと調子悪くなるんだろうって思って悩んでいたら……)
そう思ったらとても辛い気持ちになった。先の見えない暗いトンネルの中にいるような……。
(でも、ルーシア様の性格を考えると、教えているわよね。それでも、知っていたところでどうしようもできないから、今のようになっているんだろうな……)
本当にそうだとしたら“私達の共存者“の実在を知っている錬金術師なのに、不調を治す方法を見つけることができていないのが私は悔しい。
どちらにせよ、絶対に私がタミルを治すという気持ちは変わらない。
本を家まで持っていくことができないので、私は本の内容で必要だと思うところを書き写していくことにした。書き写すためには受付で許可を取る必要があった。
無事に許可が下りて、私は本を書き写し始めた。本は全部で六冊だったので、その日だけでは終わらず、次の日も図書館に通った。
そして、グラハ王国に来て四日経った頃には、私は一応目的を果たすことができたので、ジィード王国に戻ることにした。戻る前にもう一度サラに会って、妖精について調べた内容を話した。
「そうね、それなら私もティファと同じように妖精のハーフだと思うわ」
サラの考えも私と同じだったので、確信を持ってジィード王国に帰ることができた。
お読みいただきありがとうございました。




