5: 呪い解除のブレスレット
よろしくお願いします。
私はタミルの家から戻って、次は呪い解除の生成品作りに取り掛かることにした。
呪い解除の生成方法の基礎は教科書に載っていた。でも教科書に書いてある素材だけでは生成品はできない。そこから自分で何を作るかテーマを考えて、そのテーマに合った素材を足して生成書を完成させる必要があった。
私は学生時代に“人助け“という幅広い意図で錬金術をやっていたので、呪い解除までは手が回らず生成書を作らなかった。
(まさか必要なことがこんなに早く来るなんて。ちゃんと生成書を完成させておけば良かった……)
私は作るテーマとして“身につけても呪い解除とわからないアクセサリー“とした。生成のテーマは出来るだけ細かく設定するのが成功するコツでもある。
(アクセサリーなら呪い解除のためのものって気づきにくいと思うし)
タミルに身に着けてもらうとしたら、ネックレスよりもブレスレットの方が着けてもらいやすいと考えた私はブレスレットを選んだ。
教科書をみると、素材は解除者の髪の毛1本、厄除け守り4つ、粗塩20gと書いてあった。私は銀のブレスレットにするので、銀をそこに足すことにした。
(入れる分量は粗塩と同じ量にしてみよう)
思いっきり勘だった。
今まで何度も錬金術を行ってきて、大体分量は他の素材と同量のことが多かった。
しかし、ここでまた問題があった。呪い解除の生成品はポーションとは系統が違う。
ポーション系の生成品は材料と分量が決まっており、入れる順番も関係なく簡単に作れるけれど、呪い解除の生成品は、錬金釜に入れる順番を間違えると失敗してしまう。
これは学生時代に先に成功していた友達のアズラエルから聞いていた。アズラエルは何度も失敗してとても苦労したらしい。
それと、自分で選んだ素材の銀の分量は勘なので、分量で失敗する可能性もあった。入れる順番を見つける方が大変な気がしたので、ダメだったら後で分量を見直そうと思った。
(えーっと、必要なものは、タミルの髪の毛1本、銀20g、厄除け守り4つ、粗塩20gだったな。銀と粗塩は十分手元にあるけど、厄除け守りは持ってなかったわね)
厄除け守りは教会で購入しないとなかった。私はすぐさま教会まで厄除け守りを買いに向かった。教会はうちの家から離れたところにある。
場所は王都が一望できる裏山の崖の上だった……。
途中までは馬車で行けるのだけれど、途中からは道が細くなるので馬車が通れず、馬車を降りて歩いて裏山を登らないと辿り着かない。タミルとよく行った裏山の泉の場所は梺だった。
(素材集めに時間がかかるっていうのが錬金術師の苦労の一つよね)
私はたくさん歩いても大丈夫なように、靴は登山用のしっかりしたブーツでスカートの下にズボンを履いていた。
馬車から降りて細い荒れた山道を歩く。三十分ほど歩くとようやく崖の上の教会が見えてきた。
(やっと、着いたわ。結構歩いて疲れたわ)
帰りは下りだったけれど、それはそれで勢いがついて、転ばないようにゆっくり歩くのが大変だった。
そして、ようやく馬車を待たせていた場所に着き、私は家に戻った。
「よし、早速作っていくわ」
実はここからがとても大変だった。失敗したら順番を変えて何度も挑戦する必要がある。四種類なので、最悪二十四通り試すことになる……。
厄除け守りは96個欲しかったけど、売り場には30個しかなかった。これは七回分の数だった。失敗したらまた明日買いに行く羽目になる。私は気合いを入れて取り掛かった。
まずはタミルの髪の毛、銀、粗塩、厄除け守りの順に錬金釜に入れる。錬金釜から白く光が放たれ、光が消えるのを待った。
錬金術が終わったので、中を覗いてみる。
(……だめだ。失敗だわ)
黒い炭ができていた。錬金釜の中の炭は洗って綺麗にしないと次の錬金術ができない。失敗すると面倒なのだ。
私は順番を何度か変えて作ってみたがことごとく失敗していた。
(もう、これが最後だ。なんとか成功しますように!!)
望みをかけて錬金釜に入れた。錬金釜から白く光が放たれ、私は祈りながら錬金術が終わるのを待った。
(どうかな……無事にできてるといいけど)
錬金釜の中を覗く。
「また炭ができてる……。失敗だよ……」
結局七回目も失敗して、私は明日も教会に厄除け守りを買いに行く羽目になった。
(またあの崖の上まで登るのか……とほほ)
ーーーー
早朝、私はまた教会に行って、厄除け守りを買ってきた。
「厄除け守り、また30個しか買えなかった。一人が一回に買える数が決まってるのかな」
今日も七回しか錬金術ができない。完成しなければ、また明日も買いに行かなくてはいけない……。
「えっと、粗塩、銀、厄除け守り、タミルの髪の毛の順で入れてと……」
私は八回目の錬金術を始めた。
「次こそ成功していますように!!」
錬金釜から白く光が放たれ、少し待つと光が消えた。錬金術が終わったので、中を覗いてみると、ブレスレットができていた。
「やった〜!! できたわ!」
私が生成書と生成品の両方を作った証としてブレスレットの上に少し浮き出て青字で月の中にTの文字の印が見えた。
(それとやっぱり銀の量は粗塩と同じでよかったみたい)
私は生成書に素材と入れる順番をしっかりと明記した。
そしてできたブレスレットを持って、すぐさまタミルのところへ向かった。
「こんにちは、お見舞いに来たわ。タミルの調子はどうかしら?」
玄関でマイルドが出迎えてくれた。
「こんにちは、ティファレット様。お見舞い、ありがとうございます。タミル様のご様子はこの前から変化はございませんね……」
「そうなのね……タミルに会えそうかしら?」
「はい、さっきお部屋にお伺いした時には起きていらっしゃいましたので、大丈夫だと思います」
この前は昼どきだったけど、今日はまだ午前中だった。マイルドにタミルの部屋に案内してもらう。
部屋の外からマイルドがタミルに声をかける。
「タミル様、ティファレット様がお見えになりました。入室してもよろしいでしょうか?」
「……どうぞ」
この前より声に元気が乏しい。
「……タミル、調子はどうかしら?」
タミルの顔を見ると相変わらず良くなかった。
「ティファ、来てくれて嬉しいよ。……調子は良くないかな……」
「そっか。そうしたら今からこれを腕に着けてみてくれる?」
私はさっき作った呪い解除のブレスレットをタミルに渡した。これをタミルが着けた途端、粉々になれば呪いが解けるのだけど、そうなれば呪いがかかっていたということになる。
「うん。着けたよ」
ブレスレットは粉々にならなかった。
(呪いではなかった)
調子は良くならなかったけど、タミルが呪われてなくてよかった。
「……このブレスレットはもらっていいの?」
「あ、うん」
呪い解除とは言わないでおこう。
「ありがとう。大事にするね」
「うん」
呪い解除の生成品だけど、タミルは嬉しそうだった。一応装飾品だもんね。
「また考えてみるわね。タミル、この前より辛そうだからもう寝た方がいいわ」
(呪いも違ったか……うーん。何が原因で調子が悪くなってるんだろう……)
「……ありがとう、そうするよ。ティファも無理しないでね」
「私は大丈夫よ。じゃあ、またね」
私はタミルの家から自宅に戻った。
お読みいただきありがとうございました。




