38:プロポーズ
よろしくお願い致します。
私は急いで玄関に向かった。玄関には元気そうなタミルの姿があった。あんなに寝込んでいたのが嘘のように思えてしまう。
(本当に元気になって良かったわ)
「ティファ、今晩は。いきなりなんの前触れもなく寄ってごめんね。家に居てくれて良かったよ。今から僕と出かけないか?」
「タミル! 久しぶりね。うん、一緒に出かけるわ」
私はタミルと一緒にタミルの家の馬車に乗った。
「タミル、最近忙しそうね。体調は大丈夫?」
タミルの顔を近くで見てみると調子は悪くなさそうではあったが。
「ティファ、一ヶ月も連絡できなくてごめんね。体調は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。休んでいる間に仕事がすごく溜まっていてね。今日はやっと片付いたから、どうしてもティファに会いたくていきなり来てごめんね」
タミルは申し訳なさそうな顔をした。
「ううん、私もタミルにずっと会えなくて、気になっていたのよ。それに私もそろそろ私から会いに行こうかなって、考えていたところだから嬉しかったわ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。もうすぐ夕方だけど、まだ明るいし、今から王都の裏山の泉に行かないか? 見て、軽食も用意してきているんだ」
タミルは横にあった大きなバスケットを見せてきた。大きなバスケットの中には美味しそうなスコーンやサンドイッチが入っているのが見えた。
「いいわね! 私も久しぶりにタミルと一緒に行きたいわ」
「良かった。じゃあ行こう」
私達は馬車で王都の裏山の泉に向かった。
「そういえばさ、ティファがギエル殿下に頼まれた錬金術のことだけど、効果があったみたいだよ」
「本当に?」
「ああ。ギエル殿下に婚約者ができたんだよ」
「……タミル、どんな錬金術か聞いたの?」
「ううん、向こうからペラペラ喋ってきた。とても嬉しかったんじゃない? 婚約者ができたことが」
「そうなんだ。それで、どちらの方がギエル殿下の婚約者になられたの?」
「システイン国の第二王女だよ。いきなり降って湧いたような縁談だったらしい」
システイン国はジィード王国の真上にある国で、これから親交を深めていきたいと考えていた国だったとタミルが教えてくれた。
(来るはずだった縁談が呪いのせいで堰き止められていたから、それがなくなって本来の流れになったのね)
「良かったわね。殿下、喜んでいたでしょ?」
「とても喜んでいて、ティファにお礼を言っておいてくれって言ってたよ。それで今日は早く帰らせてくれたんだよ」
「まぁ! そうだったのね。いえいえ。私もギエル殿下に喜んでもらえてとてもいいことをしたわ」
やっぱり呪い解除のブレスの効果は絶大だった。
タミルと話していると王都の裏山の泉までの一時間があっという間だった。
「さぁ、着いたよ。降りようか」
「ええ」
泉には私たちの他には誰も来ていなかった。
私とタミルは軽食のバスケットを持って馬車を降りた。
「ここはいつ来ても変わらないね」
「そうね。私は最近も来てるけど、タミルはすごく久しぶりだものね」
「うん。僕は大人になってからは来てないかもしれない。でも、やっぱりここに来ると元気になるよ」
泉の方へ向かって歩きながらタミルは目を細めて言った。
「昔からそう言ってるわね」
「ティファ、持ってきた軽食を食べない? 実は僕、お昼食べてないんだ」
「そうだったの。じゃあ早速食べましょう」
私達は泉の広場に布を敷いて、そこで持ってきた軽食を食べることにした。
バスケットの中を開けると、スコーンや、サンドイッチの他にデザートのプリンやお茶のセットも入っていた。
私達はお茶を飲みながら、スコーンやサンドイッチを食べて過ごした。
「あー、気持ちいいな〜」
そして、食後のプリンを食べた後、タミルはごろっと横になった。私もタミルの真似をしてごろっと横になっていた。
「ねぇ、タミル。久しぶりに花冠や花船作らない?」
しばらく横になっていたタミルに私は声をかけた。
「いいね。作ろっか」
「どっちから作る?」
「……花冠かな」
「わかったわ。じゃあ、あっちに行きましょう」
私はタミルと花の咲く方へ向かった。ここの広場は年中何かしら花が咲いている。私達は黙々と花冠を作った。
「できたわ! タミル、見て!」
先に花冠を完成させたのは私だった。私はできた花冠をタミルに見せた。
「……早いね。僕はもう少し……できた!」
そう言ってタミルは私の頭に花冠を乗せてきた。私もできた花冠をタミルの頭に乗せる。
「……なんだか王子様とお姫様になったみたいね」
「うん」
私とタミルは顔を見合わせて微笑んだ。
「……ティファ」
ふいにタミルが真剣な表情で私を呼び、私の両手を取った。
「何?」
「ティファのおかげで僕は元気な身体に戻ることができたよ。本当にありがとう。今の僕なら堂々と君に結婚を申し込むことができるよ。ティファ、待たせてごめんね。僕と結婚してください」
「タミル……。はい、よろしくお願いします」
私はタミルからのプロポーズを受けた。
「良かった〜! 僕はティファからのプロポーズも嬉しかったけど、でもどうしても元気になったら自分からティファにプロポーズしたいと思っていたんだ」
その瞬間、私はタミルに思いっきり抱きつかれていた。
「ありがとう。とっても嬉しいわ」
私はタミルの腕の中で心からの笑顔を向けた。
終わり
完結までお読みいただきありがとうございました。




