36: タミルの完治
よろしくお願い致します。
「こんにちは、タミルに会いたいのだけれど、今日のタミルの調子はどうかしら?」
玄関で出迎えてくれるマイルドにいつものように声をかけた。
「 ティファレット様、こんにちは。今日もタミル様は調子が良さそうですのでお会いになれると思いますよ。どうぞ」
「ありがとう」
私はマイルドにタミルのところまで案内してもらった。
マイルドが部屋をノックすると、こちらが声を掛ける前にタミルから声がかかった。
「ティファが来てくれたの? 入って」
タミルは私に手紙を書いてくれていたので、きっと私がすぐに来るとわかっていたんだろう。
私はドアを開けて、タミルの部屋に入った。
「タミル、こんにちは。今日の調子はどうかしら?」
タミルは今日は珍しく、ベットにいなかった。部屋にあるソファに座っていた。
「タミル、ベッドに寝てなくて大丈夫なの?」
「ああ、なんか今日は調子いいんだ。それより僕の手紙を読んでくれたから、報告も兼ねて来てくれたんだよね?」
「ええ、手紙ありがとう。それもあるけど、実は今日は“スケルトンフラワー“のエッセンスを作って持ってきたのよ」
「えっ、もう完成したの?」
「そうよ。ちょっと飲んでみてくれるかしら? それで2種類あるから両方飲んでみてくれる?」
「うん。わかった」
私は持っていた“スケルトンフラワー“のフラワーエッセンスが入った小瓶と、セカンドフラワーエッセンスの瓶をタミルに渡した。
「まず小さな瓶の方から飲んでみてくれる?」
「わかった」
タミルは机にあったコップに小瓶の中のエッセンスを注いだ。
「少ししかないけど、それでもいいかしら?」
「うん、いつも一回の量が、これくらいの量だった。これを何度も飲んでいたんだ。だから大丈夫だよ」
タミルが“スケルトンフラワー“のエッセンスを飲んだ。
するとーーーー
突然タミルの身体全体を覆う弱い黄色の光が発光した。
「タミル!? 大丈夫?」
「ああ。なんともないよ」
しばらくすると、光は収まり、タミルの身体がはっきりしてきた。
(あれ? なんだろう? タミルの身体の線が今までよりはっきりして見える……)
うまく説明できないけれど、以前は線の弱いような雰囲気があったのだけれど、それがなくなったのだ。
タミルは自分の身体のあちらこちらを確認していた。
「タミル? どうしたの?」
「いや、なんか、すごく身体が楽なんだよ。なんか何も感じなくなってさ」
「? どういうこと? 身体が楽なのはとてもいいことだと思うけど……」
「ティファにそこまで説明していなかったけど、いつも何か身体の気力を奪われているような感じがしていたんだ。でも、それがなくなった」
「えっ!! そんなことを常に感じていたの? それはとても大変だったわね。でもそれがなくなったのならすごく良かったわ。じゃあ、もう一つの方も飲んでみてくれる?」
「うん」
さっきと同じくらいの量のセカンドフラワーエッセンスをタミルはコップに注いで飲んだ。
またタミルの身体全体を覆う弱い黄色の光が発光した。
「……さっきと同じね。タミル、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「調子は?」
「さっきと変わらない。すごくいいよ」
はっきりとまだ断定はできないけれど、母液となるフラワーエッセンスとセカンドフラワーエッセンスはきっと同じ効果のままだろう。
「良かったわ」
「……ねぇ、ティファ。なんかもう全然調子悪くないよ。僕、これから普通に生活できると思う」
「えっ。本当に?」
「うん。ティファ、ありがとう」
タミルは私に笑顔を向けた。私はその笑顔を見ていたら段々と視界がぼやけてきた。
「ティファ?」
気づいたら私は涙を流していた。
「タミル、良かったよ。本当に良かった」
今までのことを走馬灯のように思い出していた私は止めどなく涙を流していた。
「ティファ、泣かないで。本当にありがとう」
涙を流す私をタミルが抱きしめた。
タミルは私を抱きしめたまま、私が泣き止むのを待ってくれていた。
「タミル、もう大丈夫だよ」
嬉し涙を流していた私はしばらくして落ち着いた。
「……僕はもうしばらくこのまま抱きしめていたかったけどね」
タミルは抱きしめた腕を離してくれた。タミルの言葉に私は顔が熱くなった。
「そういえば、ギエル殿下はよく“サンカヨウ“を分けてくれたね。正直にいうと、僕の手紙くらいでは難しいんじゃないかって思っていた」
タミルが思い出したように呟いた。
「ええ、分けてもらうにあたって、ギエル殿下のお願いを錬金術で解決したわ」
「ギエル殿下のお願い? そんなものを頼まれたの?」
「そうよ。その報酬で分けていただいたのよ」
「どんなお願いされたの?」
「それは秘密よ。錬金術師の守秘義務よ」
「……残念。でもすぐにわかるだろうけどね」
タミルは悪い顔を見せた。ギエル殿下に対してのタミルは何故かいつも別人のようだった。
「これなら仕事もできそうね」
「うん、ティファのおかげだよ。本当にありがとう。父上にも報告して仕事に復帰するよ」
「わかったわ。でも無理しないでね」
私達の話が途切れたタイミングを見計らって、部屋で控えていたマイルドが声をかけてきた。
「タミル様、本当に良かったです。旦那様は今日は執務室にお見えでございますよ。報告に行かれますか?」
「そうだな。父上が良ければティファと一緒に報告に行くよ」
「承知いたしました。確認して参ります。お待ちください」
「ああ、頼むよ」
マイルドは部屋を出て行った。
「おじさまも喜んでくれるわね。報告するのが楽しみね」
「うん」
しばらくすると、部屋にノックが響いた。
「マイルド? 入って」
入ってきたのは、マイルドではなく、ローウェルのおじさまだった。
「タミル! 体調が治ったって本当か?」
おじさまは部屋に入ると矢継ぎ早にタミルに話しかけてきた。
「父上!! はい、そうです。今回ティファが作ってくれた“スケルトンフラワー“という花からできたフラワーエッセンスを飲んだらとても調子が良くなり、もう明日からでも仕事に復帰できそうです」
「なんと!」
タミルの言葉におじさまはとても驚いていた。そして、私の方へ来て、頭を下げた。
「おじさま!?」
いきなり私に頭を下げたおじさまに私はびっくりした。
「 ティファレット錬金術師殿、私の息子の、タミルの体調を治してくれて本当にありがとう」
おじさまの声が涙声になっていた。おじさまはとても心配していて、タミルもルーシア様のようになってしまうのではないかとずっと気が気ではなかったのだ。
「おじさま、頭を上げてください。タミルはおじさまの息子ですが、私の大切な婚約者でもあるんですよ。当然のことをしたまでです」
「それでも、お礼は言わせてほしい。本当にありがとう」
「はい」
私はおじさまに笑顔を向けた。
お読みいただきありがとうございました。




