33:スケルトンフラワー
よろしくお願いします。
私はすぐさま呪い解除のブレスレットを生成し始めることにした。自分の部屋に戻って、呪い解除のブレスレットを生成するのに必要な素材を集めた。
この前作ったばかりなので、まだ素材は残っていた。私は生成書をみて必要な素材の分量を計量した。
「えっと、粗塩、銀、厄除け守り、ギエル殿下の髪の毛の順で入れてと……」
素材を錬金釜に入れると、錬金釜から白く光が放たれた。私は光が消えるのを待った。
錬金術が終わったので、中を覗いてみる。
(うん、無事にできているわ。これを明日ギエル殿下に渡せばいいわね)
次に“サンカヨウ“を“スケルトンフラワー“にするために入れておく箱を錬金術で作っていくことにした。
(テーマから集めるものは、ガラスの箱、水差し、それから水差しの水を霧状にして出す水差しの先に刺す蓋のようなもの、氷)
ガラスの箱はガラスと紙の箱で錬金術をすることでできた。水差しは家にあるものを持ってきた。水を霧状にして出す水差しの先に刺す蓋のようなものは、水差しの口についている蓋と針山で作れるのではないかと閃き、錬金術を試してみたら無事に生成品ができた。氷は厨房からもらった。
(これで、順番を考えて錬金術をすればうまくいくんじゃないかしら?)
私はガラスの箱に氷を入れた水差しをいれ、その水差しの口には霧状に水が出てくる蓋をつけて、錬金釜に入れてみた。
錬金釜から白く光が放たれ、私は祈るような思いで光が消えるのを待った。
(どうか……! 成功していますように!!)
ーー中を覗くと
錬金術が成功していたーー
(やったわ! 一回で成功できたわ。嬉しい。やっぱり作りたいもののテーマって大事よね)
テーマが生成を成功させる意図のようなものだと改めて感じた。
次の日、できた呪い解除のブレスレットを持って、ギエル殿下の元を訪れた。
ギエル殿下は執務室で忙しそうに書類と格闘していた。
「やあ、 ティファレット嬢。よく来てくれたね」
私が部屋を訪れると、こちらに気付き、手を止めてくれた。
「ギエル殿下、ごきげんよう。頼まれていたものをお持ちいたしました」
「ありがとう。それでどんなものを作ってきてくれたんだい?」
「こちらでございます。このブレスレットを身につけていただけないでしょうか?」
私はギエル殿下に作ってきた呪い解除のブレスレットを渡した。
「わかった」
ギエル殿下がブレスレットを腕につけると、ブレスレットは粉々に壊れた。
「……? なんだこれは? 失敗したのか?」
粉々に壊れたブレスレットを見て、ギエル殿下は怪訝そうな顔した。
「いいえ、これはこれでいいのでございます。これは呪い解除のブレスレットで、このブレスレットが粉々になる時は呪いがかかっていたということです」
「なんと……」
「でも、これで呪いは解けましたので、これからギエル殿下にはいい縁談が来るでしょう」
「それは本当か!!」
「はい。呪いが殿下の良い縁談を堰き止めていたのです。同じような事例を学生時代に友達が経験しております」
「それは楽しみだな。よし、これなら報酬として“サンカヨウ“を分けることができるぞ」
「ありがとうございます!!」
私はギエル殿下に連れられて、王宮の庭園に行き、“サンカヨウ“を一株もらって家に帰った。
(ギエル殿下に“サンカヨウ“を一株分けてもらったのはいいけど、これって今回フラワーエッセンスのために使ってしまったら、もう花は咲かなくなるのかしら?)
私は花に詳しくないのでそこがわからなかった。
家に帰るとタミルから手紙が届いていた。
『ティファへ
ギエル殿下から返事がきて、すでにティファに“サンカヨウ“を渡したから心配しないでほしいって書かれていたよ。ティファが殿下に会いにいってくれたのかな? いつも本当にありがとう。
タミル 』
ギエル殿下は昨日家を訪ねた後に、タミルに手紙の返事を書いて送ってくれていたようだ。
(これで後は“サンカヨウ“を“スケルトンフラワー“にするだけね。箱は完成しているけど、どうしようかしら……)
私はまだ猶予があるなら自然に“スケルトンフラワー“に変化したものを使いたかった。
(そうだわ。ちょっとうちの庭師に相談してみようかしら)
私は“サンカヨウ“を持って庭師のところへ行った。うちの庭の隅に小さな家があり、庭師はそこに住んで庭の管理をしてくれている。今は仕事中なので、庭で作業をしていた。
「ちょっといいかしら?」
私は作業中の庭師に声をかけた。
「はい、 ティファレットお嬢様どうされましたか?」
「この花を知っているかしら?」
持っていた“サンカヨウ“を庭師に見せた。
「これは“サンカヨウ“ですね! 珍しいです。うちの国だと、見かけないものじゃないでしょうか?」
「よく知っているわね。そうよ。これはちょっといただいたのよ。それで、これを“スケルトンフラワー“にしたいのだけど、どうしたらいいかしら? あなた知ってる?」
「はい。“スケルトンフラワー“のことは知っておりますが、この“サンカヨウ“はもう二、三日で終わりだと思います。でもそれ以前に、この辺りの気候や天候では“スケルトンフラワー“にするのは無理だと思います。これは基本的に山に生息するものなので」
庭師の返答は私にとっていいものではなかった。
「そうなのね。わかったわ。ありがとう」
「いいえ、お気に召す返答ができず申し訳ございません」
私の顔が暗くなっていたのか、庭師は謝ってきた。
(やっぱり錬金術で作ったガラスの箱を使うのが賢明ね)
部屋に戻り、私はガラスの箱に“サンカヨウ“を入れた。
ガラスの箱には横にスイッチと、上には氷を入れるための穴と刻まれた時間の横にランプが付いていた。刻まれた時間は残り時間を表しているようだ。数字は一から十まで書いてあり、今は十のところにランプがついている。
(きっとこれは後、十時間ってことね)
生成品はどのようになっているのかを知るには使ってみるしかない。横についていたスイッチを入れるとガラスの箱が曇りだし、霧のような雨が降り出した。
(わー我ながらすごいわね。朝までこのままでいけるわね)
私は“サンカヨウ“の入ったガラスの箱をそのままにして、その日は休んだ。翌日の朝、ガラスの箱を確認した。
ガラスの箱の中にはまだ霧のような雨が降っていた。“サンカヨウ“がどうなっているのか確認すると、白かった花びらが雨に濡れて透明に変化していた。
ーーーースケルトンフラワーができていた。
(うわぁ〜綺麗!! これが“スケルトンフラワー“ね。名前の通り、花びらが透けて透明になっていて、こんな花は初めて見たわ)
“スケルトンフラワー“になった“サンカヨウ“が綺麗すぎて、私はしばらく見入ってしまった。
(しまった! 見惚れている場合じゃなかった。これでフラワーエッセンスを作らなきゃいけない)
私は急いで“スケルトンフラワー“でフラワーエッセンスを作ろうとした。
(あれっ、なんか忘れてる……。あっ!! 泉の水!!)
私は“スケルトンフラワー“に気を取られていて、フラワーエッセンスを作るための泉の水を汲んでくることをすっかり忘れていた。
(どうしよう。このままにしておいても大丈夫かしら?)
私は心配になって、慌ててガラスの箱ごと庭師のところへ運んだ。
「朝早くからごめんなさい。ちょっとまた聞きたいのだけれど」
「 ティファレットお嬢様、おはようございます。どうされましたか?」
庭師はもうすでに作業を始めていた。私は抱えていた“スケルトンフラワー“が入ったガラスの箱を庭師に見せた。
「これは“スケルトンフラワー“になっているじゃないですか!! すごいですね! どうなっているんですか?」
「ちょっと錬金術で“スケルトンフラワー“になるようにしてみたの。それより、これってどれくらいこの状態でいるものなの?」
「これは濡れていればずっとこの状態です。このまま後二日くらいは持ちそうですね」
「そうなの? よかったわ。ありがとう。それから、これって花を取ってしまったらもう咲かないのかしら?」
私はついでに気になっていたことを聞いた。
「いえ、今年は無理ですけど、来年も植え替えれば咲きますよ。花は何かに使うんですか?」
「ええ、そうなの。じゃあ、花を取ったら植え替えてもらえるかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。植え替えいたしますよ」
「ありがとう。じゃあ後でまた持ってくるわ」
「承知いたしました。その時はまたお声掛けください」
私が気になっていた疑問点が全て解決できてスッキリした。この後はまた部屋に戻って、ガラスの箱を置いたら泉の水を汲みに行くことにした。
お読みいただきありがとうございました。




