30: タミル視点 ギエル殿下との関係
よろしくお願いします。
ティファが錬金術師の学校で頑張っている八年間のうち、六年は僕も貴族の学校に通っていた。そこにはたくさんの貴族の子息や令嬢が通っていた。第二王子のギエル殿下とはその貴族の学校で出会った。
「私はギエル・ジィードだ。学内では王族も関係ない。よろしく」
「タミル・ローウェルです。よろしくお願いします」
僕が挨拶するとギエル殿下は目を見開いて驚愕の表情を見せていた。
「今、ローウェルって言わなかったか?」
「? はい。言いましたけど、何か?」
「君はローウェル宰相の息子なのか?」
「? そうですが」
「……全然似てないな」
(またそれだよ……。どうせ僕は母上似だよ)
家名を言うといつも父上には似てないと言われていた。母親似の僕の顔は、女性が好む顔だと貴族の学校に入って、沢山の女性からアプローチを受けるようになり、嫌と言うほど知った。
でも、ティファのいる僕はそんな女性達を視界に入れることはしなかった。
それから貴族の学校を卒業して、僕は同級生だった第二王子ギエル殿下の側近になるべく王宮で働く事になった。僕の父上は宰相で、僕もいずれは父上の跡を継いでいくことになる。そんな日のために僕は必死でギエル殿下の元で頑張っていた。
王宮で働くようになっても、相変わらず女性からのアプローチは多かった。テラスや廊下を歩いている時に声をかけられて手紙を渡されたり、時にはギエル殿下がいる前でも構わずに声をかけてくる女性に僕は辟易した。
そんな僕を見て、ギエル殿下が不思議そうに尋ねてきた。
「タミル、お前は女に興味がないのか? どの女性もみんな綺麗で愛らしいではないか? 私がお前と代わりたいくらいだよ」
「僕のどこがそんなにいいのか。それに、全然僕のことを知らないじゃないですか」
「そりゃ、中身はともかく、お前のどんな美女も裸足で逃げ出してしまうような見た目がいいんだよ」
「僕は父上のような男性に憧れているんです」
「……お前、目は確かか? 私はお前がローウェル宰相の息子って知ったときは目を疑ったぞ」
「殿下、失礼ですよ」
僕は父上のような男性に憧れているけれど、そのことを母上以外の人に話すと驚かれていたから最近は話さず黙っていた。
かくいうギエル殿下には、まだ婚約者がおらず、国内の有力貴族や隣国の王女などからお相手を探している最中だった。
「本当に羨ましいものだよ。私が本当の王子なのに、お前の方が巷でいう王子様だな」
同級生で仲もよかったギエル殿下はたまにこうやって僕に妬み節を言ってくる。
ギエル殿下にまで聞かれるようになって、流石に僕はずっと誰にもティファのことを言わずに隠してきたけど、ギエル殿下にだけはティファのことを話しておくことにした。
「なんだ、そうだったのか。エンジェライト伯爵家の令嬢か。確か、今グラハ王国の錬金術師学校へ行ってるんだったな」
「よく知ってますね。そうです」
「そりゃ、私も王族だからな。国内の貴族のことはしっかり把握しているよ。まぁこうやって隠さずお前が話してくれたのは珍しいからな。エンジェライト伯爵令嬢が帰国してくるまでの間、お前に変な虫が寄ってきてしまわないように、少し協力してやるかな」
「ギエル殿下、どうもありがとうございます」
それからというものギエル殿下は僕に仕事中に女性が寄ってこれないよう配慮をしてくれるようになった。
おかげで僕はとても仕事がやりやすくなり、仕事も捗るようになった。
「ギエル殿下、これは頼まれていたものです」
「タミル、もうできたのか? 早いな。昨日頼んだばかりじゃないか」
その仕事の早さはギエル殿下にも驚かれるほどだった。
「ギエル殿下のおかげで仕事がやりやすくなりましたよ。ありがとうございます」
「それはよかったな」
僕は頑張っているティファに負けないようにと仕事をどんどんこなしていった。
仕事を頑張ったこともあり、第二王子の側近の地位は揺るがぬものとなっていた。
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