29: サンカヨウを手に入れたい
よろしくお願いします。
サラとアズラエルにも色々と報告したかったが、“サンカヨウ“の咲いている時期が二週間と短いため、手紙での報告にした。
雨が思うように降らなくて、“スケルトンフラワー“にならない時のための錬金術を私は帰りの船の中で考えていた。
(霧状の水が低温、高湿度の状態のままで長時間“サンカヨウ“に降り注ぐようにして、“サンカヨウ“を入れておく箱のようなものを錬金術で生成すればいいんだわ。テーマは“スケルトンフラワー“を作る箱ね)
必要な条件を挙げて、そうなるような箱のようなものがあればいいことを閃いた。
(そのためには、まずガラスの箱、水差し、それから水差しの水を霧状にして出すものが必要ね。水差しの先に刺すキャップのようなものが……それと氷もいるわね)
錬金術の目星はついたけど、肝心の“サンカヨウ“がないと始まらない。
(早くおじさまに会わなきゃ)
私はジィード王国に着くのが待ち遠しかった。
やっとジィード王国に着き、私は半日かけて王都まで戻ってきた。そして、そのまま自宅に戻らず、タミルの家に向かった。
「こんにちは、タミルの調子はどうかしら? いきなり来てしまったけど、会えるかしら?」
いつものようにマイルドが出迎えてくれる。
「ティファレット様、こんにちは。グラハ王国から無事のお戻りになられてよかったです。お帰りなさい。タミル様のご様子はお変わりございませんし、お会いできますよ」
「ありがとう」
私はマイルドに案内されてタミルの部屋に向かった。
「タミル様、 ティファレット様がお見えになっております」
ノックをし、ドア越しにタミルに声をかける。
「ティファが帰ってきたの!? よかった。どうぞ」
タミルの合図とともに、私は部屋に入った。
「タミル、ただいま。調子はどうかしら?」
「ティファ!! お帰りなさい。無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。僕の調子は変わらないかな」
この前部屋から出て、私達とお茶をすることができていたから以前よりは良くなっていると思っていたけど、タミルは相変わらずベッドにいた。
この前はかなり無理をしていたのかもしれない。私は少し胸が痛んだ。
「ありがとう。そうなのね。でも悪くなってなくてよかったわ。実はね、タミルの身体を完治させる方法が見つかったの」
「えっ、それ本当?」
「ええ。でも、そのために必要なものがあって……」
「何?」
「“サンカヨウ“って呼ばれる花なの。別名“スケルトンフラワー“と呼ばれるものよ」
「僕は聞いたことない」
「それはそうかもしれない。だって、その花はこの国では王宮の庭園にしかないの」
「王宮の庭園……」
「それを手に入れたいと思っていて、おじさまに相談しようと思っているの」
「父上に?」
「だって、おじさまは宰相でしょ? なんとか手に入れることができるんじゃないかって思って」
「……父上が手に入れるにはたくさんの人に僕が妖精の血を引いていることを話さないといけない可能性がある……」
「……じゃあ、どうしたら……」
「ギエル殿下に手紙を書いてみるよ」
「ギエル殿下に? ギエル殿下はタミルが妖精の血を引いていることを知ってるの?」
「……知らない」
「いいの?」
「父上に協力してもらうとたくさんの人にバレてしまう可能性がある。でも、ギエル殿下は信頼できるし、流石に僕はもう休みすぎているから。そろそろ本当のことを話す時期だとは思っていたんだ」
「わかったわ。じゃあ、おじさまじゃなくてギエル殿下に協力を仰ぎましょう」
「うん。手紙の返事が来たらティファに連絡するね」
「ええ、でもね、あんまり時間がないの」
「どういうこと?」
「その花はいつも今くらいの時期に咲いているらしいんだけど、咲き始めて二週間しか保たないの。多分、もう咲いていると思うから、あと一週間くらいしか時間がないかもしれない」
「わかった。すぐに返事がもらえるように事情も書いて、速達で手紙を送るよ」
「ありがとう」
「お礼を言うのは僕の方だよ。いつも僕のために色々ありがとう」
タミルが笑顔を見せた。タミルの笑顔を久しぶりに見た私はなんだかドキドキしてしまった。
(なんか、いつもはドキドキしないのに。今日は変だな)
「ううん。タミルのことは私が絶対に治すって決めているからね」
いつもはしっかりと目を見て答えるのに、なんだか恥ずかしくなってしまった私は少し目を逸らして返事をした。
「……ティファ? どうしたの?」
そんな私にタミルはすぐに気づいた。
「えっ?」
「いつもちゃんと僕の顔を見て話してくれるのに、目が合わなかった」
「そんなことないよ」
そう言いながら私はそっぽを向いてしまった。
「あれっ? 顔が赤い。熱でもあるの?」
タミルが私の額に手を伸ばしてきて、私はますます顔が赤くなってしまうようだった。
「もしかして、ティファ、なんか照れてる?」
タミルが面白そうに言ってきた。
「じゃあ、私は帰るね。返事が来たら教えてね。またね」
タミルにバレてしまった私は余計恥ずかしくなって、答えずに自分の言いたいことを一方的に言ってタミルの部屋から出て家に帰った。
お読みいただきありがとうございました。




