22:タミルを訪問
よろしくお願い致します。
「それで、ティファが言っていたフラワーオイルだけど、私はまだ作ってないわ」
「そうなの? 実は私、最近生成してできたのよ」
「えっ、見せてちょうだい」
私は以前タミルのために作ったインパチェンスのフラワーオイルをサラに見せた。
「これって、髪につけるもの? ……あんまり匂いもしないわね」
サラは瓶の蓋を開けて、中身を手に取って匂いを嗅いでいた。
「ううん、これはこうやって使うつもりで生成品を作ったわ」
私はアルコールランプでフラワーオイルを炙る。すると、インパチェンスの香りが部屋に充満してきた。
「わ〜いい香りね。これはルームフレグランスの代わりになりそうね」
「本当だ。ほんのり香る程度で、全然香りもキツくない。これならそんなに人も選ばないな」
二人にとても好評だった。
「よければ生成書を渡すけど、どうする?」
「いいの? ティファが見つけたものなのよね」
「そうよ。これはタミルのために作ったのだけど、効果はなかったの。だからもう使わないし、サラが商会で売って人のためになるならいいわ」
「ありがとう。じゃあ売れたらティファにもいくらかお支払いするわね。また契約書を送るわ」
「こちらこそありがとう。それは思ってもみないことだったけど、嬉しいわ」
「印が入るし、当たり前じゃない。作者なんだもの」
サラの計らいが嬉しかった。
部屋にノックが響いた。
「はい、どうぞ」
私が返事をすると、メイドが顔を出した。
「ティファレット様、タミル様から使いの者が来られて、今からの時間であれば訪問されて構わないそうです」
「ありがとう。わかったわ」
「タミル様の準備ができたのね。早く行きましょう〜」
メイドの伝言を聞いたサラは浮き足立っていた。
「サラはどうしてそんなに浮かれているんだ?」
アズラエルが不思議そうに尋ねた。
「だって、めちゃくちゃかっこいいらしいのよ。楽しみじゃない」
「……人の婚約者だぞ」
「わかってるわよ。でも妖精王子にそっくりなのよね〜」
「妖精王子? なんだそりゃ」
「サラの読んでいた物語の本の挿絵の妖精王子にタミルがそっくりなのよ」
「へー。今その本持ってるのか?」
「あったりまえじゃない。密かに比べてみようと思って持ってきたわ」
サラはカバンから本を取り出し、アズラエルに見せた。
「これよ。この表紙の絵にそっくりらしいのよ」
「えっ!! これにか!? まさか」
人間離れした美しさの挿絵にアズラエルは驚いていた。
「……本当なのよ。会ってみたらわかるわ」
「……そうか」
驚くアズラエルと浮かれたサラを連れて、私達はタミルの家に馬車で向かった。
ーーーー
「こんにちは、タミルに会いにきたわ。今日は錬金術師の友達も連れてきたの」
「「こんにちは」」
サラとアズラエルはマイルドに挨拶をした。
「こんにちは、ティファレット様。それからお友達の方々。ようこそいらっしゃいました。タミル様から応接室に通すように言われておりますので、ご案内させていただきますね」
「ありがとう」
マイルドに連れられて、私達は応接室に向かった。
「応接室で会えるってことはタミルは調子が良いのかしら?」
「そうですね、フラワーエッセンスのおかげで少し歩けるようになりましたし、以前より随分と調子がよろしいようでございますよ」
「それならよかったわ」
「はい」
私とマイルドの会話の間、二人は無言だった。
「では、こちらでしばらくお待ちくださいませ。タミル様をお呼びいたしますね」
「ありがとう、お願いね」
私達三人はソファに座ってタミルを待った。
「……なんか私、緊張してきたわ」
「俺も……」
「えっ、なんで?」
「だってねぇ……」
「ああ……」
サラとアズラエルは顔を見合わせていた。
すると、ノックが響いて、タミルが部屋に入ってきた。
「!! うそ!!」
「……本当だ」
タミルの姿を見た二人は驚愕の表情をしていた。私は久しぶりに歩いているタミルをみて、なんだか嬉しくなった。
タミルが私達のところまで来て、ソファに座ろうとした。その途端、慌ててアズラエルは立ち上がり、タミルに挨拶をした。
「初めまして、僕はアズラエル・ムーインと言います。ティファレットとは錬金術師の学校で同級生で友達でした。よろしくお願いします」
「……ティファの婚約者のタミル・ローウェルです。ティファがお世話になっていたようでありがとうございます」
アズラエルの丁寧な挨拶にタミルも返していた。
「サラ、サラも挨拶しろよ」
アズラエルが小声で隣でタミルに見惚れていたサラをつつく。
「あっ、そうね」
我に返ったサラが立ち上がってタミルに挨拶をした。
「初めまして、私はサラと言います。アズラエルと一緒にティファとは錬金術師学校で同級生で仲良くしていました。よろしくお願いします」
「ティファの婚約者のタミル・ローウェルです。ティファと仲良くしてくれてありがとうございます」
そういって、タミルはサラに笑顔を向けた。タミルの笑顔を見たサラはまたポーッとタミルに見惚れていた。
サラとアズラエルの反応を見て、私はこの前の夜会を思い出していた。
(私は見慣れているからなんともないけど、やっぱり妖精の血が入っているタミルは人間離れした美しさの持ち主よね)
部屋にマイルドが入ってきて、私達にお茶とお菓子を用意して出て行った。
「ティファ、ティファ?」
私が思いに耽っていると不意にタミルに声をかけられた。
「えっ、ああ。何?」
「こちらのお二人が君が以前から話してくれていた錬金術師のお友達なんだね」
「ええ、そうよ。タミルに会いたがっていたのはサラね」
「はい、ティファと婚約されたようでおめでとうございます。婚約者になられたので、ぜひお会いしたいと思ってティファにお願いさせていただきました」
「そうでしたか。それはご丁寧にありがとうございます」
タミルはわかってやっているのか、サラと話すたびに笑顔をサラに向けていた。サラはその度に赤くなり、タミルに見惚れてしまい無言になっていた。
「タミル、アズラエルは来年婚約者の方と結婚するみたいよ」
「そうなんだね」
「はい、僕は来年を予定しています」
すかさずアズラエルは答えていた。
「アズラエル様、おめでとうございます」
「ありがとうございます。式にはティファレットも呼ぶつもりです」
「そうですか」
(なんとなく、アズラエルはタミルに気を遣っているように思えるわ。変に誤解されないようにしてくれているみたいね)
一方サラはひたすらタミルを見つめていた。
(本の挿絵とそっくりかどうか思い出しているのかしら……)
いつもと違う様子の二人とタミルと共に、私はお茶を飲みながらお菓子を食べて楽しい時間を過ごした。
「ねぇ、タミル。身体は大丈夫なの? そろそろ私達、帰ろうかと思うわ」
私の言葉を聞いて、タミルに見惚れていたサラがハッとした。
「そうだね、ちょっと……」
タミルはだいぶ我慢してくれてたようで、顔に疲れが出ていた。身近な人以外に会うのは久しぶりなせいもあると思う。
「わかったわ。サラ、アズラエル、そろそろうちに戻りましょうか?」
「そうね、ティファ。そろそろ帰りましょう」
「ああ、そうしよう」
「お二人ともせっかくきてくれたのに申し訳ない」
「いえいえ、お話できてとてもよかったですわ」
「僕もです。ありがとうございます」
「これからもティファをよろしくお願いしますね」
「もちろんですよ」
「こちらこそです」
最後にタミルは特大のスマイルを見せていた。これにはサラだけでなく、アズラエルも顔を赤くしていた。
「タミル、また近いうちに来るわね」
「うん。ティファ、待ってるね」
お読みいただきありがとうございました。




