19: タミルの嫉妬
ちょっと間が空いてしまいましたがよろしくお願いします。
「ティファレット、よかったな」
「ありがとうございます。お兄様」
数日後、お兄様が私とタミルの婚約を聞いて家に来てくれていた。
「一時はどうなるかと思って心配だったぞ」
「ご心配をおかけいたしました」
お兄様は私が落ち込んでいた時を見ていたので、タミルとの婚約をとても喜んでくれていた。
「そういえば、タミル君の調子は最近はどうなんだ?」
「タミルの調子はフラワーエッセンスで少しずつ良くなってるわ」
「フラワーエッセンス?」
「私が花を使った錬金術で作ったものよ」
お兄様に今からタミルのところへ持って行こうと思っていたフラワーエッセンスを見せた。
「すごいな。さすがは錬金術師様だ」
「ありがとうございます。それではタミルのところへ行ってきます」
私はタミルの婚約者となったので、大手を振ってタミルのところへ行くことができるようになった。
「こんにちは、今日はタミルの調子はどうかしら?」
私はいつものように玄関先で出迎えてくれたマイルドに声をかけた。
「こんにちは、ティファレット様。ティファレット様のおかげで少しずつお元気になられてきていますよ」
「欠かさずにフラワーエッセンスを飲んでくれているみたいね」
「はい。しっかり飲んでいらっしゃいます。このマイルド、よく見ておりますので」
「まぁ、ありがとう。頼もしいわ」
タミルの部屋の前でマイルドが声をかけた。
「タミル様、ティファレット様がお見えになっております」
「ティファ! どうぞ、入って!」
「タミル、こんにちは。今日も調子は良さそうね」
「ああ、ティファの作ってくれたフラワーエッセンスのおかげだよ」
「嬉しいわ。ところで、あれからキーミル伯爵はどうなったの?」
私はこの前見た花びらの浮いた泉の水を使って、キーミル伯爵もフラワーエッセンスを生成してくるのではないかと思っていた。
「キーミル伯爵には父上がお断りのお詫びをして、エルダ嬢との婚約の話も断ってくれたよ。心配させてごめんね」
「ううん。教えてくれてありがとう」
「当たり前だよ。ティファは僕の大切な婚約者だからね」
「私もタミルは大切な婚約者よ。私、これからもっとフラワーエッセンスの改良を頑張って、タミルが以前のように元気でいられるように頑張るからね」
「ありがとう。ティファレット錬金術師殿」
「任せてちょうだい」
そうは言ったものの、私のフラワーエッセンスの改良は上手くいっていなかった。
色々な花で試したのはもちろん、違う花で作ったフラワーエッセンスを一緒に錬金釜に入れて新しいものを生成してみたりもした。
それをタミルのところに持ってきていたのだけど、思いつく限りの花でフラワーエッセンスを作ってタミルに飲んでもらっても、タミルの体調はあまり変化がなかった。
タミルは以前よりは起き上がれるようになり、家の中を少し歩いたりできるようにはなったけれど、仕事に行けるほどタミルの体調は回復していなかった。
(もう手詰まりなのよね……。今度サラとアズラエルに会うから相談してみよう)
サラには会っていたが、今度卒業後に初めてアズラエルとサラと私の三人で会うことになっていた。
「今度、手紙にも書いていたからタミルも知ってると思うけど、錬金術師の学校で仲の良かったサラとアズラエルと会うの。二人がジィード王国へ来るのは初めてなのよ」
「あー、あのクラスメイトの人達ね」
タミルはそっけなかった。
(あれ? なんかすごく無関心っていうか、素っ気ない気がする……)
タミルはよく話を広げて聞いてくれるのに、これで終わってしまった。
「……うん。久しぶりだから楽しみだなぁって……」
(なんか話が弾まないわね。この話はもうやめておいた方が良さそうね)
「……そういえば、アズラエルって人は婚約者ともう結婚したの?」
「えっ、アズラエルに婚約者がいることをよく覚えていたわね。まだだと思うわ。式には招待してくれるって言ってたけど、まだ何も連絡がないから」
「そうなんだね」
冷たい声でタミルが答えた。
(タミル、どうしたんだろう? なんかさっきから変じゃない?)
「タミル、どうしたの? 調子悪い?」
「……ティファには僕の知らない世界があって、男の友達までいる……」
ぶ然とした顔でタミルが言った。
「タミルも会ってみる? 実はね、以前サラがタミルに会いたいって言ってたの。でもタミル、まだ体調悪いから難しいわよね……?」
「……いいよ、会うよ」
「えっ! 本当に?」
「うん。ティファのくれたフラワーエッセンスでだいぶマシになったし、少しくらいなら会えるよ」
「じゃあ、その時にアズラエルも一緒に連れて来るけど、いいかな?」
「ああ、そいつも連れて来ていいよ」
「わかったわ。来週の頭に二人がこっちに来た時にタミルのところへ連れて来るわ」
「じゃあ、この話はもう終わり。僕はちょっと休むよ」
「ええ、わかったわ。じゃあ、私はそろそろ帰るわね」
「うん、ごめんね。じゃあまた待ってるね」
普段と様子の違うタミルに違和感を覚えながら私は自宅に戻って行った。
お読みいただきありがとうございました。




