14: ローウェル侯爵からの苦言とタミルの婚約話
すみません、書き足しました。よろしくお願いします。
タミルの部屋から玄関まで向かっていると、珍しくローウェルのおじさまと出会った。
「こんばんは、おじさま。お久しぶりです。今お仕事のお帰りでしょうか?」
「……ティファレット?」
突然私に声をかけられたおじさまは驚いた顔をしてこっちを見た。
「はい、そうです。ローウェルのおじさま」
私はおじさまに笑顔を向けた。
「……ちょうどいいところで会った。ティファレットに話そうと思っていたことがあったんだよ。帰りがけにすまないが、少し私の執務室に寄ってくれるかい?」
「はい」
硬い表情をしたおじさまに連れられて、私はおじさまの執務室に行った。
「さあ、かけてくれ」
私は執務室に入り、ソファに座るように言われた。
「はい。話ってなんでしょうか?」
「いきなりすまないね。ところで、君は無事に錬金術師になって戻ってきたんだね。タミルから聞いていたよ。おめでとう」
「ありがとうございます」
「それとタミルのために錬金術を使って色々考えてくれているとタミル本人やマイルドから聞いているよ。ありがとう」
「いえ、タミルは私の大切な幼馴染なので当然のことをしているだけですわ」
「……大切な幼馴染か。ティファレット、もう君とタミルは大人だ。いくら大切な幼馴染でも、婚約者でもない男のところへ頻繁に年頃の女の子が出入りするものじゃない」
「!! でも、私はタミルの身体を治そうと思って会いに来ているだけで……」
「ありがとう。その気持ちはとても嬉しいよ。でも君に変な噂が立ってしまったら君の将来に傷がついてしまう。タミルのことは筆頭王宮錬金術師のキーミル伯爵に依頼しているんだ。もうここに頻繁に来るのを控えた方がいい。呼び止めてすまなかったね」
ローウェルのおじさまの話を聞いて、その後どうやって家に帰ったか覚えがないくらい私はショックを受けた。
(おじさまにタミルに会いに来るなって言われてしまった……)
あれからしばらく私は何も手につかない日々を送っていた。工房の準備もストップして、部屋でも錬金術もせずにただベッドでゴロゴロしていた。
(あの日からもう二週間が経つな……タミルどうしてるかな? フラワーエッセンスは沢山置いてきたから調子が悪くなっていることはないと思うけど)
「ティファレット様、昼食のお時間でございますが、今日もお部屋でお召し上がりになられますか?」
「ううん、今日は食堂で食べるわ」
私はあの日以来、部屋にこもってゴロゴロして、食事も運んでもらっていた。お父様やお母様も心配して部屋に来てくれたけど、大丈夫と言って部屋に閉じこもっていた。そろそろ顔を出さないとまずいと思った。
「ティファ! 大丈夫か? 一体どうしたんだ?」
食堂に行くとお兄様がいた。
「お兄様、心配ありがとう。大丈夫よ」
私は席につき、用意してあった食事を食べ始めた。
「大丈夫じゃないだろう、ずっと部屋に閉じこもっていると父上と母上から聞いたぞ。何かあったのか?」
お兄様は食事の手を止めて、私を心配してくれた。
「うん、実は……ローウェルのおじさまにちょっとね」
「ローウェル侯爵に何か言われたのか? もしかして、タミル君とキーミル伯爵の娘のエルダ嬢との婚約のことか?」
「えっ? タミルとエルダ様が婚約?」
「なんか噂になっているんだよ。タミル君とエルダ嬢が婚約するんじゃないかって」
「どういうこと?」
「今、タミル君は体調を崩しているだろう? そのことでローウェル侯爵が王宮錬金術師のキーミル伯爵に治療薬の依頼をしたらしい。そしたらキーミル伯爵が治った暁にはタミル君とエルダ嬢を婚約させて欲しいって持ちかけたらしいんだよ」
「……」
「ティファ? 大丈夫か? お前、顔が真っ青だぞ」
「……私、部屋に戻るわ」
私は目の前が真っ暗になり、ふらふらになりながら部屋に戻った。部屋に戻ると、ベッドに突っ伏して、お兄様から聞いた話を思い出していた。
(タミルとエルダ様が婚約するかもしれない……ローウェルのおじさまは私のために会いに来ない方がいいと言ってたけど、本当はこのためだったんだろう……)
幼い頃にタミルと出会ってから、私はずっとタミルと一緒だった。錬金術師になるためにグラハ王国へ留学した時も、会えなかったけどタミルはずっと手紙をくれていた。私はタミルとこれからもずっと一緒にいると思っていた。
(だけど、もしタミルがエルダ様と婚約したら、もう今までのような関係ではいられない)
これ以上タミルを助けることもできないし、何よりタミルに会いに行くこともできない。そう思うと私は胸が苦しくなり、その途端、目の前がぼやけてきた。
(あれ、どうしたんだろう……)
ぼやけた視界を戻そうとぎゅっと目を瞑ると涙が溢れてきた。
(……タミルのことは大切な幼馴染だと思っていたけど、本当は私はタミルのことが好きだったんだ)
自分の気持ちに気づいてしまった私は、溢れてくる涙を止めることができなかった。
私は自分の気持ちに気づいても、ローウェルのおじさまにあんなことを言われてしまった手前、どうしたらいいのかわからなかった。
そして、それから一週間経っても相変わらず部屋に閉じこもっていた。
お読みいただきありがとうございました。




