12:キーミル伯爵との対峙
よろしくお願いします。
家に帰って、部屋に戻った私は花のエッセンスができているタミルに見せた花船の瓶で錬金術をしてみることにした。
タミルに持っていった瓶の中身はインパチェンスと泉の水が入っていた。
インパチェンスと泉の水が入ったガラス瓶を錬金釜に入れる。すぐさま白く光が放たれる。しばらくして光が収まり、中を覗いた。
(……炭になってない。成功したみたい)
ガラス瓶には液体が入っていたけど、インパチェンスは消えていた。
(これってつまり、インパチェンスのエッセンスが集まった水? だってインパチェンスが消えて水だけ残ってる。錬金術でインパチェンスの大事な花のエッセンスが水に移ったってことだよね)
他の花でも生成したいので明日また王都の裏山にある泉に行ってみることにした。
次の日の早朝、私は王都の裏山にある泉に来ていた。
(この前より沢山水を汲んでいこう。それから花も摘んでいかなくっちゃ。そういえば、泉の側にある木は花をつけるんだったな)
すっかり忘れていたけど、泉には広場だけでなく、木にも花が咲いていた。
しかし、木に咲いていた花はすでに散って、泉の中に沢山落ちていた。
(花びらの一枚、一枚で泉に浮いて、これはこれで綺麗ね)
その時、馬の嗎が聞こえた。声の方を見ると一台の馬車が停まっていた。降りてきたのはキーミル伯爵だった。
(またキーミル伯爵とタイミングが合ってしまった)
やっぱりキーミル伯爵は泉の水を汲みにきたようで、こちらに向かっていた。
「おや、ティファレット嬢ではないですか。まるで私の予定を知っているかのように本当によく会いますね」
「ごきげんよう、キーミル伯爵。本当にそうでございますね。私も驚いておりますわ。ところで、この前タミルのところへいらっしゃっておりましたね」
「……よくご存じですね。そうですよ。ローウェル侯爵から正式にタミル様の治療のことを依頼されましてね」
「……そうでしたか」
「そういえば、ティファレット嬢もタミル様のために色々頑張っているのでしたね。タミル様に聞きましたよ」
「ええ、そうですわ」
「でもまだ治すための錬金術が見つかっていない。そうでしょう?」
「……」
「でしたら、もうここであなたは手を引きなさい。あとは正式に依頼された私がタミル様を治しますのでね」
「いいえ、私もタミルを助けたいんです。だから私もタミルを治す方法を探すのを続けますわ」
キーミル伯爵は私が言い返してくると思っていなかったんだろう。驚いた顔を見せた。
「……まあ、いいでしょう。どうせあなたより先に私がその方法を見つけてタミル様を治して差し上げますけどね。では失礼しますよ」
そう言ってキーミル伯爵は花びらがたくさん落ちている場所の泉の水を汲み出した。
私も広場に咲いている花の数に合わせたガラス瓶すべてに泉の水を入れていく。泉に落ちていた花びらがガラス瓶に入りそうだった。
(私は花びらはいらないから、泉の水だけを汲んで……よしっ。これでいいわ)
すべて汲み終わったので、私は馬車に戻り帰ることにした。
(あんな場所で汲むなんて、キーミル伯爵はわざとそうしているとしか思えないわ。もしかして、キーミル伯爵も花のエッセンスのことを気づいて……)
私は泉から遠ざかっていく馬車の中から、水を汲んでいるキーミル伯爵を神妙な面持ちで見ていた。
お読みいただきありがとうございました。




