帰ろう
じゃあ、そろそろ僕らは帰るよ。
「あぁ、世話になったな。
また来いよ。」
城の主人みたいに言うじゃない、ペリン。
まぁもう結婚するならそういうもんか。
結局村の役目は完全には無くならないとのことだった。
龍が棲んでいるところというのは、元々魔力暴走が起こりやすい溜まりになっている土地で、たまに払う必要があるらしい。
龍が死ぬと同じところに龍が生まれる。
その際に溜まった魔力をズドンと消費するシステムになっていたのだけれど、龍自体が居なくなっちゃったから、結局は誰かがやらなきゃいけないとか。
ただもう龍が暴れるとか、それを心配する必要はなくなった。
「ま、私らがやっていくしかないね。
いいさ、たーんと子供を作れば1人くらい継いでくれる物好きも出来るだろ。」
そういえば。
あの後大変なことに気がついた。
赤い光がまだ付いて来ていたのだ。
ペリンとリナリーンの分らしい。
そりゃそうだ。
ドラゴンスレイヤーは3人いるんだから、僕だけ叶えてお終いってのは変だもの。
寝る頃になって、早く願いを言えと言われたらしい。
気の長い光でも、流石に痺れを切らしたのだろう。
2人はそれぞれ若返った。
子供が欲しいのと、エアリスと年齢を合わせないと、未来に1人置いていくことになるのは忍びないから、と。
本来若返るのって龍討伐の報酬レベルなんだなぁ。
まぁ、お父さんはお父さんで色々やって来ているらしいから、細々としたのを合わせ技一本で若返りを果たしたと考えよう。
これで幼馴染が3人とも若返っちゃったから、こうなるとシャルルさんが可哀想に思えてくるね。
みんは若返ったのに自分だけそのままなんだから。
それを言うと3人は大笑いし、日頃の行いだ、と言った。
「じゃあね、師匠。
娘が出来たら将来嫁がせに行かせるからよろしくね。」
勘弁してよ。
来年出来たとしても12、3歳違うんだから可哀想だよ。
「あはは、冗談だよ。
なんかあったら助けになるからね、相談しにおいで。」
うん、ありがとね。
「ラルフ、これあげる。
私のツノと爪と、羽の一部。
本来は身体丸ごと戦利品何だけど、ラルフの剣の塊で切り飛ばされたところ以外は残ってなかったから、これだけだけど。」
おー。
じゃあこれは龍の一部ってことか。
凄いね。
「それ軽く見せて貰ったけど、とんでもない魔力が含まれてるよ。
ツノと爪は土魔法で形を簡単に変えられるみたいだから、ネックレスとか腕輪にでもして身につけといて、いざという時に武器にでもしたらいいさ。
これより硬い素材なんて私は知らないから、凄いものになるよ。
羽の一部は、私にはどういうものかわからなかったね。」
おぉ!
本当だ。
簡単に形が変わるね。
とりあえず腕に巻いておこう。
大きさもある程度変わるのね。
凄いなこれ。
「形を変えられるのは、龍が屈服した証拠。
喜んでくれるならよかった。
またね、ラルフ。
今度会う時までにはもう少し人間らしくなれてるように頑張るから。」
うん。
エアリスも元気でね。
力とか一体どうなっているのか龍のままだもんね。
矛盾した肉体だ。
林檎が割れるとか可愛らしいパワーじゃないもん。
地面が割れる。
浮気とか絶対できないよ、ペリン。
すり潰されちゃうから。
比喩じゃなく、マジで、物理的に。
んじゃ、本当にそろそろ行くよ。
僕はお父さんの召喚した鳥に乗った。
鳥に乗るっていうのも何度目だったか、始めは違和感満載だったけれど、もう慣れたもんだね。
ダチョウとかなら乗ろうと思ったら乗れるんだっけか。
まぁ、前世の世界に帰ることが出来るとは思えないからどうでも良いか。
「もう良いのか?
ふむ、ならば行くか。
じゃあな、ペリン、リナリーン。
次はラルフを拐うような迷惑かけずに遊びに来いよ。
酒でも飲みながら、老け込んでいるシャルルを揶揄ってやろうじゃないか。
エアリスさんも、また。
3人ともお幸せにな。
ペリン、夫婦喧嘩なんかするなよ。
勝てっこない妻を貰ったんだから。
ははは。」
珍しく冗談を言うと、お父さんは鳥に合図を送る。
鳥の体がグッと少し沈み、空へ飛び立った。
振り帰って下を見ると、ぐんぐんと村が離れていくのが見える。
「大変だったらしいなぁ、ラルフ。
本当に無事でなによりだ。
まさかリナリーンに勝って、ドラゴンをも倒してしまうとは信じられない。
実績だけで言うなら、神の子で、魔女狩りで、ドラゴンスレイヤーか。
あっはっは。
…次は魔王でも滅ぼすの、か?」
やめてよ縁起でもない。
しかし今回は閉じられた村の中でよかったよ。
これを王国でやっちゃってたらさ、とんでもないことになってたんじゃない?
なんか、目立っちゃってるみたいだし。
それこそ逆に国で生きていけなくなるところだった。
山で隠遁生活。
それはそれで憧れるものはあるけれど、せっかく家族が出来たんだから、今はまだ街中で生きていきたいもんだよ。
しっかし、なんでお墓の周りに花を咲かせたかっただけなのにこんなことに…。
でも楽しかったな。
村の人たちとも仲良くなれたし。
無事に帰ったら少しゆっくりしよう。
…
……
………
◆
「なぁリナリーン。
お前、願いは何にしたんだ。
俺は俺とお前の2人を若返らせてくれって頼んだんだ。
もしかしたら1人ずつしかダメで同じ願いなのかもしれないと思ったが、通ったってことは、だ。
お前は別の願いを叶えたんだろう?」
「あら、気がついてた?
私は最初から若返る気なんてなかったんだよ。
エアリスなら子供作れるだろうから、その子を育てていければ良いかなって。
祖母でも名乗ってさ、それはそれで楽しそうじゃあないか。
いやぁね、師匠、あの子さ、自分の願いなんて忘れてたろ?
一番頑張ったのに。
アンタはあんまりそういう気は回らなそうだからさ、私の願い事を使ってやったんだよ。
あんまりだからね、龍を倒しておいて報酬も無しだなんて。」
「まぁなぁ。
ボン…いや、ラルフが一番頑張ったのは間違いないか。
それで、なにを願ったのだ。」
「だからさ、ししし。
龍を討伐して何を得るかなんて、大体一つしかないものさね。
古今東西、あらゆる物語の最後に、英雄は何を得るか知っているかい?」
「あんまり学がないからな、俺は。
何を得るかか。
富や名声か?
あんまり欲しがりそうじゃないがな、ラルフはその辺。」
「私、知ってるよ。
龍達の話でもあるもの、有名な龍を倒した人の話。」
「へぇ、何を得たんだ?
いい加減教えてくれ。」
「そりゃあ…。」
「お姫様。」
「そうか、お姫様ね。
良い伴侶をってところか?
そりゃあ良いな。」
「そうさ。
どうやって叶えるか知らないけど、師匠がその子と結婚の報告に来た時に言ってびっくりさせてやるんだ!」
「ん?ラルフ、婚約者いるよ。
言ってたよ。
帰ったら会うのが楽しみって。」
「え?そうなのかい?」
「大丈夫なのか…?
あの赤い光…無茶はしないよな…。」
「龍神様は無茶するよ。
存在が無茶苦茶なんだから。」
「…結婚の報告が来ても、このことは言わないことにするよ。」
「バレないといいな。
アイツは賢いから!」
「バレちゃうよ、ラルフ賢いから。」
「バレるかな…。
ま、いっか!
そうしたら私らみたいに3人で暮らせば良いだけだ!
あはは。」
3人は大笑いした。
結婚して笑顔が増えた。
それは良いことだ。
もちろんラルフも喜んでくれるだろう。
彼が今、帰り道に見知らぬ龍に回収され、運ばれている途中でなければ。
4章おわり




