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転々転生  作者: まつり
勇者と龍そして魔女

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負ける気がしないんだけど

師匠には日課があって、毎日必ず剣の練習と神への祈りを欠かさなかった。


まだ小さい身体で、ずっとそうして来たんだろうね。

手の傷がそれを物語っていたよ。

私が無理矢理連れて来たに近いとはいえさ、目的であった土魔法も真剣に学んでいたしね。


礼儀作法も、周りへの対応も、感心するほど勤勉。


私の色々な物語に影響された、チグハグなお姫様像を気味悪がることもなく、理解を深化させてくれたし、ウチの村人たちと他の国の恋愛観の齟齬を指摘して、正してくれたし。


10歳やそこらの少年。

だけど、その有様を心から尊敬しちまったから、師匠なんて呼ぶことにした。

彼はおそらくお姫様というものを教えたお礼で、戯れだと思ってんだろうが、そこではなく村長としての導くものとして敬意を評したってのが大きいわけ。


まぁ、あとは、将来美形になりそうだからね、なんというか、何かキャラ付けしてさ、なりきらなきゃ、恥ずかしくなっちゃう。


ま、スゲーと思ったのは本当さ。


そう思わなければ子供相手に修練の手合わせなんて提案しなかったって。

戦ってる内に師匠の目的の土魔法の修練も進むしね。

闘う様子を見たかったのもあるけどさ。


そしてラルフは期待以上だった。

戦闘力は…まぁ、互角とはいかないけども。

とにかく心が強くどうにかしてやろうと、工夫する姿は好ましいよ。


あとはアレだ。

死ぬのが怖くないんじゃないかってくらい、守りより攻めに振れてるね。

生物の本能的に防御に回りそうな時も、何故かそのまま攻めてくるんだもん。


殺そうと思えば殺せた、けど、その性質が逆に読みにくくさせる。


読みにくいと感じていた私と対照的に、彼は笑ってしまう程に私の弱点を理解していた。

死魔法で自身の年齢を上げると、絶世の美青年。


そして私が教えた土魔法で白馬を生成し、馬の上から抱え上げられてしまった。


美しさにビビったねぇありゃあ。

子供に負けたって経歴よりも、1秒でも長くこのシチュエーションに浸る方を選択したもん。


まぁ、そんなことされたからね、幼い頃から夢にまでみた状況に私の精神は持たずに、気を失っちゃった。


私の弱点…ガサツで暴力で男を計るクセに、ロマンスファンタジーを求める乙女を攻めて来たんだ。


感心するね。


そんで、朝に気絶から目が覚めたらよ。

ラルフが居なくなってんだもん。


日課である祈りをしているところにも、剣の鍛錬をしていた庭にも居ない。


いきなり魔法戦に放り込んだ私に、愛想を尽かしてしまったのかとも思ったけど、そんな素振りもなかったじゃない?

楽しそうではあったしさ。


どこかにはいるんじゃないかって、村を探すついでに村人たちに見なかったかと聞いて回ったけども、誰も見ていなかった。


いやぁ、村の女どもが騒いでたよ。

大人ラルフはカッコよかったしね、私に勝ったんだから、理想の男が現れたって持ちきりさ。


流石に師匠が勝ったのは嘘じゃないかって、決闘の結末を聞いてくるやつもいてね、素直に私が負けたって答えるたら、村の代表たる村長が負けた悲しみより、みんなの師匠が勝ったことの喜びの方が強いみたいなんだから参るよ。


この様子だと、独占したくなった村人に拐われた線も薄いだろうね。

まぁ、村人から狙われる人生になってでも、そうしたくなる奴が出てもおかしくないけど。


そそるだろ?

美男子と逃避行なんて、憧れるところもあるさ。


いやはや、一体どこへ行ってしまったのかね。

子供の身で。


見当たらないと話す私に、心配だからと探しにいこうと言う村人たちと話していると、空に爆発音が聴こえた。


私は急いで鳥を召喚すると空へと飛び立った。

どこから聴こえた爆発音かわからないが、音の元には心当たりがあったからね。


ほら、私と戦った時のクマ爆弾と同系統、つまり師匠の魔法だって分かったから。


方向的には…恐らく龍のねぐらの方だと思う。

だけどはっきりとはわからなかった。


くそ、もう一度だけでも鳴ってくれないだろうか。


そう思う私の心を撫でる様に閃光が上がった。

昼に星が出たほどの光量。


あそこだ。

多分、呼ばれているって思ったね。

そうだろう?意味もなく大きな音や光を出す人じゃあないから。


龍のねぐらね…。


上からねぐらへと飛び込む私の目に映ったのは、蛇の様にうねりながら龍と彼を飲み込む大量というにはあまりに数が多い、剣の奔流だった。


「…誰だ。


まさか、お前!リナリーンか!

ボンが、ラルフが剣に飲まれた!

助け出すのを手伝ってくれ。


子供が巻き込まれたんだ!」


…ペリン?

なぜペリンがここにいる。


「手伝え!

剣が刺さっていても不思議じゃ無いんだ!」


もうやってるよ!

土魔法で持ち上げて潰れない様にしてんだ!

早く剣を退けな!

あの子を助けられなかったら私があんたを同じ目に遭わせるからね!


必死で力を振るい、掻き分けている私とペリンを嘲笑う様に、ボワと剣の山の隙間から光が漏れる。


その光はフワフワと漂い、私の中に吸い込まれていった。


…あー、知ってるわ、この魔法。


その瞬間、剣の山が弾き飛んだ。


「助かったよリナリーン。」


師匠は変な魔法ばっかり達者だね。

あの男と見たら尻尾を振って寄りかかるあのクソ女と同じ呪属性じゃないか。


ま、生きてたんならなんでもいいか。


「なんかさぁ、リナリーンに手伝って貰うのは悪いような気がするよ。


ほら、お姫様は龍に囚われている側で、倒す側じゃないでしょ?」


ははっ。

こんな状況で何言ってるのさ。


バカ言ってんじゃないよ。

魔女は滅ぼすもんさ。


それが…龍だろうとね。


その隣に勇者が居るなら、正しく英雄譚なんだろうけど…おぉ、今回は居るね。

ジジイになっちまったみたいだけれど、勇者が。


負ける気がしないじゃないか。

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