再会
今まで以上に勢いよくガインガイン剣を振るペリン。
もう呼び捨てだから。
年下だから。
「あっはっは!
若いっていうのはいいなぁ、ボン!」
さんをつけろよ、さんを。
良いけどさ、別に。
…もう一つ嫌がらせしちゃおっかな。
ペリンは良いやつだ。
だから急所は狙わない。
エアリスで言うと、顔は狙わない。
エアリスはペリンを愛してる。
だから急所は狙わない。
命を奪うような攻撃はせず、剣を狙って攻撃している。
事情を知ってんのよ、俺は。
それなら、二人の剣と爪が、どうぶつかり合うかの予測も立つってもんよ。
そしてさ、その剣誰が生成したと思ってんの。
俺はペリンの剣をグッと伸ばして、グリッと曲げた。
爪を避ける様に、エアリスの爪を避けて、身体に届く様に。
受ける剣が消えたら、ペリンは危ねぇだろうけど、そこはペリンラブなエアリスが意地でも当てないでしょ。
ピッ。
おぉ!
初めてだ。
初めてみたよ、エアリスのダメージを。
ほっそい毛みたいな切り傷で血も出てないけど、切れたのは切れた!
やったぜ。
「あんた、やるじゃない。
攻撃を受けるなんて…何年ぶりかしら。
いいわ、貴方も認めてあげる。
そう言えば聞いてなかったかしらね、貴方のお名前。」
ラルフだよ。
名乗ると同時に俺は火魔法を手の中に集めて、投げた。
あんまり練習してなくて得意じゃないんだけど、威力はどうでもいいから良いんだ。
光れば眩しいはずなんだから。
「うおっ、なんだ!まぶしっ!俺も何も見えんぞ!」
ばっか、お前、口に出すなよ。
エアリスに近づく足音が俺だってバレちゃうじゃねーか。
2連続で目眩しとは我ながら芸がないが、もう一度投げた光る弾は、今度はエアリスの魔法の風に阻まれて遥か上空に飛んで行った。
たまやー!
土爆弾に引き続き、閃光弾まで明け方の暗い空で光り輝いたってな。
今日は花火大会か。
二発も目立つ魔法を打てば…そろそろだろ?
俺はまだ目が見えてないことをお祈りしながら、エアリスへと近づく。
あ、やっべ。
バッチリ目があったな、見られてるわコレ。
手には剣。
大きく飛ぶ前に拾ってきたやつだ。
あ?そこらに落ちてた、ペリンの安物の剣じゃあない。
ちょっとカッコいい棒だ、あんなもん。
使えるか!
作ったのよ土爆弾を作りながら、エアリスに牽制もしながらこの剣を。
超大変だった。
誰か褒めて。
でもコイツぁ、ミスリルみたいな希少な金属じゃあないから、エアリスの綺麗な長い毛のような龍の皮膚?鱗?毛皮?を傷つけられる訳じゃない。
土中にありふれたもので、普通に土魔法を使ってもふんだんに含まれている成分だ。
俺は選り分けただけ。
剣は手の中で形を変えていく。
選り分け切ってしまったら、「僕」には扱えなくなっちゃうから、今、直前、完成させなきゃいけないんだ。
あ、子供にもどっちゃった。
死魔法の魔力が切れちゃったみたい。
元々魔力切れが近かったからなぁ、ペリンの若返りに多く魔力をさいたから仕方ないんだけど。
まぁ良いさ、ペリンが若いままならチャンスが残る。
くらえぃ!
これは希少金属なんかじゃない。
ありふれた鉱石だ。
形作るは、イタズラの基本のキ。
平べったい丸に、細い足を沢山つけて、先をクルンと丸める。
河原を歩くと、ジャージに引っ付いてなんだかなぁってなるアレ。
正式名称不明の植物、くっつき虫。
それをありふれた鉱石、ネオジムで作る。
知ってるかな、異世界人たちは。
これと、鉄と、ホウ素を混ぜると何が起こるか。
便利なもんだね、土魔法ってのは。
エアリスあんたの言う愛の結晶に抱かれな。
◆
ラルフが作成し、投擲した大ぶりなネオジム磁石。
それに生成したフック状になった毛の様なトゲが、エアリスに刺さ…りはしない。
表面に絡みつくだけ。
果たして、龍の毛は、どこまで強靭なのか。
毛自体はとてつもなく。
普通の鉄の剣など通さず、かつ滑らか。
では、それを支える毛根は?
弱いはずはないだろう。
ラルフはそう考えた。
「なんだ、地面が…震える!」
驚きを口にしたペリンが始めに感じたのは、地面の揺れ。
「痛い!いたたたた。」
痛いと言う割には呑気な声のエアリス。
それはそうだろう。
彼女が感じている痛みは、ラルフの磁石が絡み付いた一部分の毛が強く引っ張られている痛みなのだか、大袈裟に叫ぶほどではないものだ。
愛の結晶。
ラルフはそう表現した。
何故なら、エアリス自身がそれらをそう表現していたから。
地面にある数多の鉄剣が浮き上がる。
強力な磁力に当てられた剣たちは、まるでラルフの磁石を親だと思い込んだ飼い犬の様に、エアリスを蛇の様に襲う。
1000か、2000か。
これまでペリンが挑み続けて折られて来た安価な鉄剣。
ペリンの努力と挑戦の証が、この世界の人智を超えた磁力の力で加速しエアリスへと突き刺さる。
何本か、何十本か刺さり傷はつけたが、膨大な数の殆どは当たらずエアリスの風で弾かれ、流された。
ペリンは持っていた剣でそれらを砕き、避けてやり過ごした。
ラルフは舞い狂う剣を避けきれず、その身に受ける。
傷の具合はもちろん致命傷だが、ラルフは健在をアピールするために空へ向かって火魔法の光を放った。
健在を?
誰に?
ラルフの魔力が切れ、形を維持出来なくなった魔法。
磁力を失った剣が雨霰の様に降り注ぐ。
剣と共に地面へと落ちたラルフは目に映るものは4つ。
傷ついた龍。
惚ける勇者。
落ちてくる大量の剣と、もう一つ。
災厄の魔女。
◆
遅いんだよ。
爆弾やら閃光弾やら、合図を出しまくった甲斐があった。
剣の瓦礫の中で僕は笑う。
お互い感動の再会だ。
あんたたち2人の。
僕は、神様との。
「死んじゃいましたね。」
そうなんですよ。
今回は急ぎでお願いします。
速達で、マストで、ファストパスで。
「ははは、なんですかそれ。」
マジで急いでんの!




