龍狩り
ふわり浮いていくエアリス。
やっぱり綺麗な生き物だなぁと感じる。
長い毛の様な表皮が、その動きに合わせて夏の草原に吹く風の様になびいている。
僕は出し惜しみする事なく魔力を全開にして土魔法を使う。
いや、だってさ、龍よ?
ラスボス通り越して裏ボスじゃんか。
命を削る程に魔力を練り込み、地面から金属を地面から引き抜いて剣の形へ。
リナリーン戦で土魔法でカチカチの剣を作るコツ自体は掴んでいたけれど、神様バフのない僕の本来の能力じゃここまでしてようやく作ることが出来る。
「あらら?ミスリルじゃない、その剣。
人間がよくそんなの操れるわね。
すっごぉい。」
ありがと。
これミスリルだったんだ。
龍にも効きそうな響きじゃないか。
エアリスは余裕そうだけども。
さてさて、僕の剣術なんてそんな大したもんじゃない。
超自覚があるって。
自惚れてなんかないよ。
一生懸命習ったとは言え、たったの3年。
実戦も2回半ってところでしょ?
駆け出しの自覚があるからさ。
僕の役割は、多分適当に戦ってきた超実戦派の爺さんのサポートをするしかないよねぇ。
ペリンさん、コレ使って。
「おん?なんだ?
俺は武器なんて何でもいいんだぞ?」
そんなこと言うから傷も与えられないんだよ。
確かに筆を選ばないのはカッコいいけどさ、裏ボスを縛りプレイで戦うのは3周目からやって頂戴な。
人生に3周目なんてないだろうけど。
ま、いいから、これでエアリスを足止めしてよ。
ミスリルの剣で龍をしばくなんて、勇者っぽいじゃない。
サポート魔法使いの僕は、とりあえず唯一効く可能性のある超強い土魔法弾を飛ばす準備するから、なるべく長くよろしく!
「任された。
お、魔力通しやすいな、これ。」
当たり前だよ。
いままで使ってた剣がなまくら過ぎるって。
何その銘。
掘りが汚すぎてなんで書いてあるか分からないんだけど。
よくそんな職人から剣を買おうと思ったね。
エアリスの足元にある剣を見た時正気かと思ったよ。
土魔法の能力は失ったけど、聖属性以外のどれよりも上手く使える。
やっぱり魔法の能力をもらった場合、使う魔力を踏み倒すんだなぁ。
金属を精製した時気絶するかと思ったし、でっかい土魔法爆弾を作ろうと魔力を集めた瞬間、ハゲそうなくらい身体に負担が掛かっているのを感じる。
…ここ最近よく戦ってる気がするよ、格上ばっかりと。
そんな人たち相手には、やっぱり戦いとしては全然上手くいってないけど、この爆弾は結構驚かせられたと思うんだよ。
エアリスは浮き上がったままチリチリと音をさせる。
あぁー…やっぱりとんでもない魔力量を感じるわ。
リナリーンも凄かったけど、多分比じゃないんだろうなぁ。
実力差が酷すぎて、差がわからないレベルなんだけど。
あ、こっちに突っ込んできた。
絶対避けられないや、こんなの。
頼んだよぉ。
勇者を信じるよぉ。
勇者なんだし、勇者なんだから、仲間を守り切れるでしょぉ!
僕はそちらをチラリとも見ずに魔法を練り続ける。
嘘!
無理!
カッコつけた。
無理だよ。
すっごい風圧とか来るし、ガインガイン大きな音と振動がある中、精神統一を続けられる方が変だよ。
見ちゃうよ。
怖すぎるから!
うっわ。
でっかい馬ぐらいのドラゴンが振るう爪や尻尾の攻撃を、剣一歩でマジで受け止めてるよ。
かっこいいね、カッコつけなくてもさ。
実力があるってのは。
僕は補助。
僕はサポート。
せめて邪魔だけでもしてやろうと、本命の魔法と並行して出した小石を飛ばす。
目とかに当たれば戦いの邪魔くらいにはなるでしょ。
そう思って出したのだけれど、エアリスがチラッとこっちを見るだけで、石は空の彼方へ消えていった。
何をしたかも分かんないや。
あはは。
エアリスがこちらをもう一度チラッと見ると、試す様に笑った。
あ、攻撃が来る。
そう感じたから急いでその場を動いたけれど、全然間に合わなかったみたいで脇腹に穴が空いた。
「あらあらあらあら。
ダメよ、そんな子供騙しも避けられないなんて。」
「すまんな!守りきれなかった!
次はなんとかしてやるからな!」
くっそ。
エアリスからしたら気にする必要もない雑魚。
ペリンさんからしたら守る必要のある完全なる足手まとい。
…補助だから。
ペリンさんのつよつよ攻撃を手伝うだけ…。
痛いなぁ!
ちょっと困ってもらわないと割に合わないよ!
イタズラしちゃお。
ポンポンとエアリスの足元に花を咲かせていく。
あんた花が好きだろ。
踏まれた花なんて一輪もないんだ、この空間に。
寝床にしてる岩の下もお花畑だしね。
花に囲まれていく勇者を置いて空中に逃げるエアリスを追って脇腹に穴を空けられながらも手放さなかった、必死に練った魔法を放つ。
死角。
舐められている。
気にされてもいない…のに。
僕の現状最大の攻撃は、空高くで大爆発を起こした。
分からなかったけど、よけられでもしたんじゃない?
分からなかったけど。
…触れられもしないのか。
……でも補助だからさ。
エアリスとペリンさんの間に石を設置していく。
意図が伝わったペリンさんはそれを階段にして駆け上がっていく。
「任せろボン!この剣もいいぞ!
折れない!お前はやるなぁ。」
「あら、ペリン来ちゃうじゃない。
あなたの魔法なかなか厄介ね。」
やっぱりこの戦いは2人だけの世界があって、僕はお手伝いしてるだけ。
何年も何年も積み重ねてきたお互いの絆みたいなのを感じるわ。
良いんだけどさ。
補助だからさ。
良いわけあるか!
聖属性魔法で治したけど!
腹に穴空いてんだこっちは!
…いちゃいちゃしやがって!
「俺」を無視すんなよ。
俺は自分に死魔法をかけて成長させた。
これはいつものやつだ。
動ける様になるし、頭も回る。
そしてペリンさんに聖魔法をかける。
へへへ、若返らせちゃう。
あんたもう50過ぎだろ。
絶対二十歳そこそこの方が動けたはずだろ?
はっは!若い頃のあんた、かっこいいじゃないか。
な?
エアリスもそう思うだろ?
「おお…?ボン!
こんな魔法があるのか。
ははっ!動けるな!動けるぞ!」
ボンと呼ぶなよな、ペリン。
俺の方が歳上だぜ。
ラルフさんと呼びな。
さんをつけろ。




