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転々転生  作者: まつり
勇者と龍そして魔女

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アイキャンフライ

HELLO!

バイリンガルなんて目じゃないぜ、今の僕は。


異世界初心者パックであるべき能力をわざわざ選ばなきゃいけないのは忸怩たるだ思いだけども、この世界の全言語を手に入れたからには、今のうちに色々言葉を覚えたいね。


今回の能力は翻訳。


まだこの世界の言語を理解していなかった頃に選ぶか迷ってやめたやつ。

あの頃はね、こんな気軽に死ぬなんて思ってなかったから、言葉なんかに神様の力を使うのを勿体なく思ったけれども、気軽に死ねるってことを学んだ今は全然選択の余地があるよね。


なんだ気軽に死ねるって。


力の中身はといえば、僕が口に出して話すと勝手に相互翻訳されるらしい。

いや、これくらいサービスでくれてもよくない?

こんなんさ、別にこれで解決できることなんて殆どないって。


ま、いいけど。


さて、神様が言った通り、ペリンさんが僕に出会う感じで向かって来ているんだろうけど、出来ればこっちからも向かいたい。


なるべく早く出会うに越したことはないし、あんまり村をうろつきたくはないし。


どっか近くにはいるらしいから、ゆっくり寝て朝になってから行くべきだろうけど、寝る所がない。

だって貞操の危機が訪れる可能性が、ラルフ調によると58%くらいはあるからね、楽観的にみても、なお。


もう夜だからあんまり人が出歩いてないのは助かるけどなぁ、周りの地形も知らなければ、土地勘もない。

ペリンさんがうろついているだろう場所の見当さえつかないんだから、本当はここでじっと待っているべきなんだろうけども。


周りを見渡してもなにも…あ、犬。


近所の家で飼われてる犬。

翻訳って動物もいけるのかな。

力は試してみないと本番で使う気がしないから、あの犬で試してみよっかな…。


こんにちは。

この辺でお爺さん見なかった?

この村ではお爺さんなんて激レアだと思うんだけど。


うんうん、へっへっへっへってね、なるほど、そうだよね、飼い犬ってあんまり吠えないよね…。


こっちの言ってることが伝わったとて、向こうが声を出してくれなきゃ意味がない。


…かわいいな、撫でとこ。

あ、外犬だから臭い!

餌も前世と違うからか、口から未知の匂いがする…!

鼻はやめて…鼻は舐めないで…。


かわいかった。

安らぎは得たけど、何の情報も得られませんでした。


猫はこの世界で見たことないんだよなぁ。

犬も何犬って聞かれたら全然分からない。

犬っぽい何かかもしんないけど。


犬の知能って5歳児ぐらいなんだっけか。

…じゃあ、そもそも話せても人探しなんて無理かもしれない。

訓練されている訳じゃないだろうし。


んー、高いところから見てみよっかな。

土魔法で棒を作って伸ばせばいけるでしょう。


にょいんとね、土を棒状に生やして、一応足をかけるところを作って。

いけ!伸びろぃ!


おぉ、タケノコみたいにぐんぐん伸びて…あ!怖い!


高い!怖い!風が強い!

棒がしなって揺れるぅ!


しっかり捕まらないと吹っ飛んでいきそう。

一応着地のことも考えてはいるけど、それとこれとは別。

高所恐怖症じゃなくても、ぐわんぐわん揺れる棒で高いところにいるのはめちゃくちゃ怖い。


いや、そんな事言ってないで、見渡さないと。

2回はやりたくないからね。


あー…全然ダメ。

暗過ぎる。

前世のように街灯とかある訳じゃないしなぁ…。

勇者なら光り輝いていておくれよ。

全く…近頃の勇者ときたら…。


ん?

村の外に淡く光ってる所があるのが、暗いから逆によくわかる。

田舎のパチ屋とか、田んぼの自販機ぐらい目立ってる。


焚き火かな?


あそこの人は起きてるってことだよな。

行ってみよう。


たぶんだけど、アレが、あそこにいるのがペリンさんなのだろう。

こんな秘境で魔境のほとりに、キャンプをしてまで腰を据えていそうな人物が他に思い浮かばない。


迷い人なら、遠くへ逃げるように伝えよう。


さ、飛んでいくかな。

土魔法で羽を作り、滑空していく。

落ちても風魔法で何とかなる。

これが神の子の叡智で編み出した落下対策である!


超怖い。

ふわっと飛び立った僕は、真っ直ぐ光の元へ向かって行く。


おぉ!

いけるもんだな!


思えば異世界にきてしばらく経ったもんだ。

こういう前世だと考えられなかった無茶ももうお手のもんよ!


あはは!


がっ!


真っ暗で見えなくなっていた樹にぶち当たって、激痛に悶えながら真っ暗闇に落ちていく。

慣れてなんていなかったみたいだ…。


慣性のままバキバキと枝を突き抜け、地面に転がった。


良かった……死ななくて。

死ぬのは別にどうでもいいけど、龍と話す前に能力を失うと困るって。


いたた。


聖魔法も覚えてて良かった…。

足と腕の骨、明らかに折れてたし。


こんな自爆着地する予定じゃなかったのになぁ。

どうやって止まる気だったのかと聞かれても、それはそれで困るけど。


ドサリと落ちた僕は、焚き火にあたるペリンさんと目があった。


気まずい。


「どこから落ちて来たのだ、ボン。」


あ、こんばんは。

ラルフと言います。

はじめまして。


「…変な奴だな。

もっと言うことがあるだろう。」


確かに。

変な所が異世界慣れして来てるみたい。


…異世界関係ないか。

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