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転々転生  作者: まつり
勇者と龍そして魔女

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勝ち…?



「なんだいなんだい。

急に大きくなったと思ったら、アンタ…!


…かっこいいねぇ。」


そいつはどうも。

ラルフィード様謹製だからな、好みはあれど欠点は無いビジュアルだと思うよ。


あんた好きだろ?

ラルフィード様。

家の庭に像があるんだもんな。

推し、なんだろ?


じゃあ、俺も好みの顔だろ?

無意識に手加減とかしてくんねぇかなぁ。


「死属性魔法だね?

レアな魔法を使うじゃないか。

…まさか格好良くなって終わりじゃないよね?


そんなんで喜ぶような…いや、嬉しいし、村民は盛り上がってるけどね、私はそれだけじゃ満足しないよ。」


んー、見た目より強さを重視してんのはブレねぇのなぁ。

まぁ、見とけって。

子供の姿よりは強いぜぇ。

なんせ、動かし慣れてるからなぁ。


そんでな、神子とか呼ばれたり、神様の目があるってんでなんとなく良い子でいないといけないって自覚はあるんだけどよ、この姿なら別にそんなのどうでも良いかと思っちゃうんだよ。


なんでかな。


ま、そんな適当な大人の悪辣さ見せてやるよ。


俺は足元にポコポコとデフォルメされたクマを生み出す。

かわいいだろ?クマちゃんだぜ?女子供に大人気。

クマだぷー。

攻撃したら嫌だぷー。


クマってなんて鳴くんだっけ。


「はっは!

今更かわいいからって躊躇すると思ったかい? 


…後でもう一度作ってもらうけど、ねっ!」


バキバキに壊しながらそんなこと言うなよ。

前世のかわいいを司る人たちが考え抜いた結晶をよ。


ま、そのクマちゃんは練習だ。

デフォルメした方が簡単だろ?彫刻の才能なんて貰ってないからな。


でも…びっくりもさせておこっかな。

サプライズを忘れないのが出来る男ってね。

なんかに書いてあった…気もする。


手元に残るクマちゃんのいくつかを、シャルル戦で使った水蒸気爆弾に変える。

特製びっくりサプライズクマちゃんを走らせながら、俺は足元に別の生成を始めた。


こっちは時間はかかる、が、本命だから精密に作っておきたいなぁ。


土魔法は創造、造形。

そう教わったんだから成果も見せておきたいしな。

なにより見た目が精密な方が勝つ可能性があがる。


「見え見えなんだよ!

何体かのクマぷーだけ魔力の流れが違うんだ!

近寄らせないよ!」


あららバレバレか、でもいいんだ。

練習と煙幕が目的だからさ。

…クマぷー?


何体かのクマが爆発し、何体かのクマは破壊と同時に真っ白な煙を吐き出す。

爆発に紛れて宙に舞っただけの、石英の粉だけどね。

真っ白になって見辛くなるだろ。


「ははっ、子供騙しだね。」


そんなあんたにプレゼントだ。

子供は平気だけど大人は苦手なものってなーんだ。


「やー!なにこれ気持ち悪い!

虫!?虫!」


なんで大人になるとダメになるんだろうね。

地中にいっぱい居たよ。

土魔法で作った虫じゃなくて、魔法で集めたマジ虫。

俺も鳥肌が立つぐらい蠢いてるアレをけしかけるのは気がひけるが、もうちょい時間がいる。


そのまま錯乱しといてくれよ。

悪いけどさ。


なんせ今回は色合いまで指定があるんだから。


俺は足元で生成を続ける。

足が4本、長めの首、太い胴体。

ふさふさのたてがみに尾。


ゴーレム。

馬の、白馬のゴーレム。


更に土魔法で赤いマントを作り馬に跨る。

こっちは機能性もないカチカチの見た目だけマントだが、あった方がらしい、だろ?


クマで練習したゴーレムの動かし方を活かしてなるべく馬らしく動かす。


さ、覚悟を決めろ、俺、途中で笑うんじゃねぇぞ。

吹っ飛ばされてもカッコよくしていたのを活かせ。


俺は馬を駆り、リナリーンへ向かって真っ直ぐ突っ込んでいく。

兜は着けていない。

今回の作戦の肝は、言いたかないがこの顔だ。


彼女はラルフィード様の像を置いている。

好きなんだ、ラルフィード様、神様が。


しかし、祈っている姿なんて見たことはない。

でも、好きなのだ。


見た目がどストライクなのかもな。

本当の意味でのアイドルってやつか。


それを知っていたので、今回の作戦をとった。


俺の見た目はラルフィード様に近い…というか、生き写しと言ってもいい。

自分を基に俺を作ったらしいからな。


つまり俺もストライクゾーンど真ん中、絶好のホームランボールだろう?お姫様。



虫を散らしこちらに気がついたリナリーンから攻撃は飛んでこない。

彼女の目には、想像していた王子様が写っていた。

白馬に跨り、ラルフィードのような高潔そうな見た目で、強くなりすぎた自分の攻撃を問題なくいなす存在。


これまで何度妄想してきたか分からないシチュエーションを蹴散らす程には、リナリーンの乙女は死んではいなかった。


ラルフは馬から身を乗り出しリナリーンの腰に手を回し、リナリーンを馬の上へと抱き寄せそのままゆっくり馬を走らせた。


リナリーンに向かい王子様が言葉をかける。

顔と顔が触れ合いそうな距離、吐息が耳をくすぐる。


「リナリーン。

お前に勝てば俺の好きに出来るんだろう?」


その言葉はリナリーンにクリーンヒットした。

理想的な姿、状況。

その上でかけられた男らしく力強い言葉。


「はい…。」


そう言い残し、彼女は意識は失われた。

ラルフの完全勝利である。


後に残る影響を考えなければ、の話ではあるが。

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