土魔法を教わりに来たんだった
オラついていたというか、押忍ついていた村の空気がキャピキャピしてきた。
うんうん、これで彼女たちの目的はそのうち達成されるでしょう。
別に恋愛が全てじゃないとは思うけど、村の維持には必要な事だし、それを犯罪で賄うよりは健全だろうね。
満足した僕は本来の目的をやっと思い出した。
リナリーンに土属性魔法を教わりに来たのだ。
ん?いつ呼び捨てにし始めたのかって?気がついたら呼び捨てになってたよ。
弟子だし。
「そうでございました。
師匠は土魔法を覚えたいんだってね。
土魔法と言っても広いからなぁ、何を覚えたいかによって道筋が違うけど、土魔法で何をしたいのさ。」
こらこら、リナリーンさん、言葉遣いが荒っぽってよ。
何をしたいかと言われれば、まずは花を咲かせる魔法を覚えたいな。
石碑の周りの花を元気にしたくて習得しようと思ったんだから。
「流石ね師匠。
いいじゃない。
花。」
…本当に興味ある?
まぁ、でも、リナリーン、今ならよく似合うと思うよ。
「あら、嬉しいわ。
それではね、まずは魔力で花の様子を見てくださいな。
師匠は聖属性が得意なら、診察の魔法と似た感じよ。
花の魔力を感じ取れると思うわ。
ほら、そこの石像に供えると思って生やしてみるといいよ。
さ、やってみて。」
魔力をゆっくり広げていくと、点々と植物の魔力を感じる。
それぞれに魔力を込めると、花だけでなく草や何かの細い木なんかも生えて来た。
そのせいで石像が雑草まみれになっちゃった。
あ、よくみたらあの石像、神様じゃん。
ならいいか、祟られはしないだろう。
「あらあら。
こりゃ、全ての植物を活性化させてしちまってんな。
おほん、花だけに絞って下さいな。
土の栄養が足りなくなって枯れてしまうの。
可哀想でしょ?
それにしてもすごい精度ね。
とてつもない才能を感じるね、アンタ、このまま魔女の村に住んじまいなよ。
歓迎されるぜ、強ぇ魔法使いはさ。
おほん、土の栄養も土属性で足せますからね。
そっちも覚えてしまいましょうね。」
神さまの力付きの土魔法の成長はやはり早く、花を咲かせる魔法はあっさり覚えてしまった。
リナリーン曰く、土魔法の特性としては花を咲かせるものはおまけの様なものらしく、造形魔法と言えるくらいに形を模ることが得意らしい。
魔法で固めた土は硬く、地面から槍の様なものを生やしたり、空に巻き上げた土を固めて尖らせ降らせたりがメイン戦術らしい。
雨の様に降る石の槍。
そりゃ怖いね。
そして僕に合う魔法もある。
なんと土で剣を作ることが出来るとか。
その剣は土なので、自在に長さも変えられるし、自分の魔力で形成しているので魔力も込め直しやすい。
やってみたいなぁ。
便利そうだし、武器を持ち運ぶのって日本人的にはどきどきしちゃうから、手ぶらでいられるのはありがたい。
早速教わった通りに発動すると、神の能力でドーピングされた土魔法は、精度良く土中から金属を集め剣を作り出すことも可能なようで、出来上がった剣は土らしくなくピカピカだ。
「おお!すごいじゃないか!
おほん、失礼。
すごいのよ、それ。
その辺の剣なんかポキポキ折っちゃうんですから。
なつかしいわぁ。
ペリンの剣をポキポキと折っていったらぺリンの心もポキポキと折れてしまったのよねぇ。」
ペリンさん?
どなた?
「あぁ…
サシュマとシャルルの同期の剣士よ。
強いって聞いていたから期待してたんだけど、そこまでじゃなくってねぇ。
がっかりしちゃった。」
そうなんだぁ。
リナリーンは強い人が好きなんだね。
「私が結構強いからね。
役目もあるから自分より弱い人を伴侶にする訳にはいかないのよ。」
そうなのか、大変そうだなぁ。
いい人が強いって訳じゃないから探すだけでも大変そうだ。
「師匠も訓練になるから、私と戦ってみる?
結構勉強になるわよ?
魔法使いとの戦い少ないんでしょ?」
ぜひ戦ってみたいな。
シャルルさんとの戦いは楽しかったしね。
今の土魔法ドーピング状態なら多少戦えるんじゃないだろうか。
やってみよっかな。
「いいねいいね。
ルー!ラー!
決闘場を開けてちょうだい。
指導戦だよ。
聖属性魔法はラーが使いなさい。
早速やりましょっか。
師匠。」
そう言えばペリンさんってどのくらいの強さだったの?
「んー?
当時のサシュマとシャルルよりは断然強かったけど、私よりは弱かったなぁ。
サシュマとシャルルが10だとしたら15くらいで私が20くらいかな。」
え…あの2人より倍強いって事?
でもまぁ…訓練だから。
「ラルフ先生、気をつけてね。
村長、夢中になると…。
頑張ってね。」
やめてよルーさん!
「前に挑んだ人ってどうなったんだっけ。
…えーと、あっ。
…ラルフ先生、気をつけてね」
やめてってばラーさん!
めっちゃ集まって来た村人、その中に大勢いる僕の生徒達が1人残らず心配そうだ…。
訓練だからね!
訓練…ですよね?
振り向くとリナリーンはお姫様とは思えない笑顔で歯を剥いていた。
説教すべきか…いや、無理そうか。




