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転々転生  作者: まつり
勇者と龍そして魔女

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村の変化


この村に来て5日にしては、正直やり過ぎたと言わざるを得ない。


なんか楽しくなってしまったのだ。


看取って来た女の子たちの夢を託せるような受け取り手が現れて、僕の、というか、俺のテンションがおかしくなってしまった。


てへへ。


リナリーンさんにお姫様らしい食べ方や話し方を教えて、土魔法で出来た細く小さなポールに火魔法で熱をあたえ、髪をカールさせ、メイクは深めの赤が基調だったものを柔らかいピンクにした。


本人はずっと、物語の描写通りにしたかったんだけれど、細かい描写がなかったし、見たことのない物を文章を読んで自分なりにやっていたので、チグハグだったらしいよ。


真っ赤な頬、と書かれていても、本当に赤って訳じゃないものね。


それを僕が矯正して、ちゃんとお姫様っぽくしようとした。

…まぁ?僕も?この世界のお姫様なんて知らないけれど?

人間が好む色合いとかは、大きく差はないだろう。


多分。


いいんだ、リナリーンが頑張って維持していこうと喜んでいるなら。


僕も嬉しいよ。


2日目は、リナリーンへ宿題を与え、僕は村の散策へと出かけた。


この村にはあまり男はおらず、僕はなんか可愛がられた。

近所のお姉さんに剣を習ったり、魔法の使い方を教わったり、買い物をするとリンゴを一個おまけしたり。


そんな彼女たちの態度が3日目から一変した。


リナリーンが僕のことを師匠と呼び始めたから。

確かに厳しくしていた自覚はあるよ。


自覚はあるけど、そんなことを言い始めるとは思わなかった。


だって僕が土魔法を習いに来たんだし、本来僕が弟子じゃないか。


リナリーンはこの村の村長。

この村には女しか産まれることはなく、他所から男を調達して維持されているとか。


門番をしていた、元ヒゲの人ことサンドラちゃんが言っていた魔女の村。

それはここで間違いないっぽい。


そんな村で、リナリーンはずっと畏怖されてきた存在だった。

何故なら、誰にも媚びず、物心ついてから今までずっと一番強く、魔女の象徴として君臨していたから。


そんな彼女に憧れて、ストイックに過ごす風潮が村を支配していたみたい。


一時期婿探しに旅に出ていたらしいが、20数年前に戻ってから長を継ぎ、それからもずっと最強なまま。


そんな村の魔王が、たった数日でお淑やかになったのだ。


村はぶったまげた。

意味がわからなかったが、男の子が師匠と呼ばれていること、あの子が来てからリナリーンが変化したことに気がつくと、色々な人が相談に来た。


サンドラちゃんが言っていた、男を拐うなんてのも事実だったようで、理由もあった。


ぶっちゃけ、この村の女はモテない。


女しかいないので、恋愛感覚がおかしくなっていた。

女の園でやっていくために身につけ、長年かけて熟成された強気な気質が男受けしなかった。


しかもストイックで超強い。


なので、やむを得ずに、村を維持するために誘拐を繰り返していたんだって。


超強いから、楽勝だったし。


しかし皆、愛されたいのは愛されたい。

かわいいって言って貰いたいし、頼りたい。


キマッた人が書いたハーレクインみたいな甘々展開な怪文書が、この村のスタンダードな恋愛バイブルみたいになっているのに、気性は戦闘民族。


自分たちがプリティガールとなる為には、何かが噛み合っていないことを、変わった村長を見て少し自覚し始めた村人。


そんな迷える子羊…いや、迷っているけど、血走った狼たちが僕に聞きに来た。

血走っている事が露見する前に捕まえてしまえば、獲物は逃げられない。

狼に被せる羊の皮の作り方。

それを学びにやって来た。


やれやれ…僕がどれだけ小さい女の子の話を合わせるために少女漫画を読んだと思っている。


任せろ!僕に!

この、アバンチュールマスター、ラルフに!


お前らまとめてロマンチックにしてやんよ!



もし、この場に神様が居たならばこう言ったことだろう。


「貴方前世でモテモテだったわけじゃないのに、よく自信満々にそんなこと言えますね。」


と。


しかし、噛み合った。

村が持つ勤勉で気が強い性質と、ラルフの持つ正しくファンタジーで、全く等身大ではないお姫様像の偏見が上手いこと噛み合ってしまった。


強弱のバランスが取れ始めたのだ。


近い未来、この村の戦闘力がほんの少しだけ落ちることとなる。


何故なら魔法の練習一辺倒だった村の授業に恋愛の授業が加わっていくのだから、そうもなるだろう。


女磨きという新たな新風に、時間が割かれ始めた。


失ったほんの少しの力と引き換えに、この村の男不足は解消していくこととなるが、それが意味する事とは。


もちろん厄介さが格段に上がったと、言わざるを得ない。


戦闘民族から逃れられるのは、それ以上に強い者だけ。

そんな骨のある男など、世界に何人いるのやら。

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