勇者ぺリンの伝説
リナリーンは若い頃、白馬の王子を待ち続けていたが叶わなかった女だ。
手紙を読む限り、今は白馬の王子を諦て、自らの手で最高の男を育成しようとしているらしい。
なんとも厄介な。
「師匠は歳の割には若いんだけど…結婚出来るとは思えない、な…。」
そう、アイツは若い頃、それはそれは美人だった。
軍に入って来た時に、大きな話題になったものだ。
しかし全くモテはしなかった。
いや、語弊があるな。
アイツは寄ってくる男を受け入れるが、自分の理想というものがあまりにハッキリあるらしく、そこから外れた男を弾き飛ばして周った。
物理的にもな。
その中には貴族も混ざっていた。
逆恨みとしか言いようがないが、貴族の兵から襲撃されたこともあるが、それも返り討ちにしていた。
その後、潰してまわっていたのも聞いた。
屋敷を物理的にな。
手駒でどうにもならなくなった貴族は、本来なんの関係もない軍に指令を入たのだ。
なんとかしろと。
なんとかとは?
要は自分の目に2度と留まらない様にしろと言う事だ。
具体的には、殺せと、そういう事だな。
その頃、まだ聖騎士団の部隊長だったシャルルと魔法部隊長の私、そして竜狩りでなお上げたばかりのペリンで彼女の捕獲へと向かった。
恐らく当時、戦闘能力では王国最強であった3人だったが、それは叶わなかった。
単純に負けたのだ。
力負けといえばそうだが、なんというか、差があった。
モチベーションに。
始めから私はやる気が湧かなかった。
リナリーンからすれば、言いよって振られた男の腹いせを8倍返しした。
そこに親がしゃしゃり出て来たのを13倍返ししただけだった。
まぁ、リナリーンもやり過ぎだとは思ったが、私達が駆り出される程の問題か?と思っていた。
ダラダラと、買い食いなんかを挟みながら3人で探していると、自ら現れたリナリーンは私達に、勝てたら私を好きにしていいよと言い襲いかかってきた。
その時の気持ちは良く覚えている。
後でシャルルに聞くいたところ、あの馬鹿も同じ考えだったらしい。
絶対に勝つわけにはいかない。
そう、絶対に勝ってはいけない戦いになった。
好きにしてって言われても困る。
私は恋人を亡くしたばかりだったし、シャルルは婚約者がいた。
それでも襲い掛かってきたなら、放っておく訳にはいかないだろう。
リナリーンの魔法は強力。
負けるにしても、まともに当たるわけにはいかない。
どうにか体力か魔力を削り、怪我をしない程度の魔法を喰らって気絶したフリをしようと思っていた。
長丁場になるな、と思って一歩引くと、ペリンが本気の顔をして突っ込んでいった。
当時のペリンは私達2人より強く、そのペリンが本気で戦い始めたことが分かった。
そして、2人より強いペリンより更に強いリナリーンには、正直引いた。
ペリンの剣がかすりもしていなかった。
こんな女を妻にするだなんて、想像もしたくない。
ペリンを圧倒し、けちょんけちょんにして踏みにじる。
ボロ切れの様になったぺリンに腰掛けながら、リナリーンはコチラを見ながらこう言った。
「せっかくだしアンタらもやっとく?」
全然やる気もないし、ペリンはもう、人より座布団に違い存在になってる。
どうせこの女はこの国に残る気もなさそうだ。
だから、強い者といえばと話に上がる私達を試しにやって来たのだろうな。
間違っても、マグレでも。
絶対に勝っちゃいけない私たちが断ると、いくじなし、と寒気がする言葉を残し、馬鹿でかい鳥に乗ってすっ飛んでいった。
魔女を追い払いこれでこの国は元通りになる。
そう思ったが、数日後ペリンが旅立った。
惚れた女の願いも叶えられない自分が不甲斐ないとのことだった。
本当に無意味で無益な戦いのせいで、この国は最強の魔法使いと、最強の剣士を失った。
この国に残ったのは二つの伝説。
あらゆるものを無茶苦茶にした、災厄の魔女の伝説。
それを追いかけた勇者ペリンの伝説だ。
そうして私達の心に残り続けるペリンは正しく勇者だったのだ。
色々な意味で。
あんな女を追うなんてスゲーな、と。
勇者だな、と。




