後遺症
とんでもない事に気がついてしまった。
朝起きて背伸びをしながら窓に目をやると、外がやけに輝いて見えた。
いやー、確かに大変な戦いだったから、こうして落ち着いて朝を迎えると世界は輝いて見えるものなのかもね。
いや、違う、輝いているのは世界じゃない。
窓に映る僕が、キラキラと輝いていた。
うっそー…!
背伸びで手を上に挙げただけで、僕の上には天から降り注ぐキラキラな光の粒。
いやあ、神々しい。
神々しいなぁ。
……剣を掲げた時だけじゃなかったの?
これはいけない。
こんなんじゃ外を歩けない。
ちょっと手を挙げたらキラキラキラキラ。
神様って、ダンスの神様だっけ。
オートミラーボールシステムって能力名だったとしても疑問をもたないよ、僕は。
踊ってやろうか?
あ?
早くハズレの教会へと行って、どうなっているのか問いただしたかったけど、それもちょっと無理そう。
重い二つ名を、寝てる間に勝手に付けられた。
それからというもの、屋敷の前で祈る人やら出待ちの人やら、なんかよくわからない人が門の外に居るのよ。
すんなり出かけられない……かは、試してないから分からないけれど、あの人たちを無視して通り抜けるメンタルを持ち合わせてはいない。
二人のジジイと神様が派手にハジけた結果、僕の評判は勝手に上がって信仰を受けているような状態に陥った。
望んでもないのに。
曰く、幼いのに剣の達人だの、魔法の大家の孫なんだから魔法の方が凄いだの、神に祝福されているだの、謙虚だから家から出ないだの、家で平和を祈り続けているだの、もう言いたい放題だ。
訂正しようにも何がどこまで広がっているのかも分からない。
押し掛けて来た人に何の話をしようとも、どうせ僕のいうことをアクロバティックな受け取り方をして、また変な誤解が広がるだけだろうしなぁ。
ほとぼりが冷めるまで大人しくしているしかないよ、こんなの。
「あたしとティナはね、ラルフが剣を真面目に始めるって聞いたときから、めんどくさそうなことになるって思ってた、よ。」
シーちゃん、そう思ってたなら止めてよ。
殴ってでも止めるべきだったって、それは。
「ね。
ラルフも皆も、シャルルおじいちゃんから逃げる為に強くなったら、余計に執着してくるなんて、なんで微塵も考えなかったのが不思議よね。」
言われてみれば確かにそう。
そういえばタナさんにもそんなこと言われたよ。
お父さんに頼んで魔法にのめり込んでいれば、その内諦めたかもしれないのに…。
お父さんはお父さんで、若くなったサシュマとバレてからとっても忙しくなった。
当然だけど。
神の奇跡をその身に浴びた聖職者なんだもん、まぁ呼ばれる呼ばれる。
全然家にも学園にもいられないみたい。
学園の長が居なくなると問題があるって、誰か代理になんて話し合いは進んでいたようだけど、その隙をついて園長代理についたのはシャルルさん。
権力と、イカれた行動力でその座についていた。
元々教え魔なので、ウキウキで仕事をしているらしい。
ルーベンスさん、ぺぺさん、ララさんは今までとそこまで変わらないが、外に出かけると僕とお父さんの話をせがまれてしまって大変なそうな。
ちなみにもう一人、困ったことになってる人物がいる。
アンヌだ。
正式な婚約はしていないのに、正式に二つ名が聖女になってしまったらしい、アンヌに至っては本当になにもしていないのに。
よく知らない人に好意を抱かれ、勝手に決闘の賞品扱いになっていただけ。
その決闘を受けたのが僕みたいな訳あり物件だったせいで巻き込まれて、神の子の隣にいるんだから聖女でしょ。
みたいなノリで認定されちゃったみたい。
あんまりだよ。
そんなんだからアンヌも外へ出ると面倒なので、あまり家から出ていないとのことだった。
可哀想に。
結局、得したのは自身の目的ついでに教え子を大量ゲットしたシャルルさん。
そして僕にとんでもない額を賭けていたカルさん、ブランドさん、ルーベンスさん、そしてサンドラさんだけじゃないか。
後で聞いたその額に引いたね。
年収クラスの金額をギャンブルに賭けないでよ、いい大人がさ…。
お菓子ぐらいは絶対に買ってもらうおう。
とりあえず外で見られたら更にヤバくなりそうな、この祝福の能力だけでもどうにかしたい。
ティナに、タナさんへ石碑に来られないか聞いてみてくれないかなと聞いてみると、今晩石碑まで来てくれるらしかった。
そうして僕は無事、1週間ぶりに召されたのだった。
死んでいるから無事というのも変な話だけど。




