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転々転生  作者: まつり
剣と魔法と聖女とジジイ

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裏ボス


僕の目の前には妖怪が立っている。


上裸になりムキムキで、白髪混じりの髪を結んだ剣を持つ妖怪、通称シャルル。


会場は緊張感で静まり返っている。


誰か茶化してぐだぐだにして帰ろうよ。

全部この爺さんが始めた茶番なんだから。


はぁ…。

強いんだろうな…。


意味のない戦いだよ。


「それではこれより、聖剣士ラルフ対元聖騎士団長シャルルの試合を行う。


両者構えて!


始めっ!!」


なんか称号ついちゃってなかった!?



剣を持つ姿が似合う。

まるで剣を抜いて構えた姿が本当のシャルルなのだろう。

怒っている様な、悲しんでいる様な顔で、何処を見ているかわからない目をしながら剣先をユラユラとさせている。


ラルフは2.3度小さく跳ねた。

それが決め手になるとは思ってはいないが、目に見えづらい風の魔法をいくつか設置する。

少しでも隙に繋がればいいと考え、そうした。


頭の中では、守り8、攻め2ぐらいの割合でいるが、その攻め気の無さをシャルルに見破られている様な、嫌な感じがする。


守って守り切れる技量差ではなさそうだと考えたラルフは、設置した魔法をの内一つをシャルルに飛ばす。

しかし、シャルルはそれを簡単に剣の腹で叩いて、ラルフへと接近する。


ラルフは距離を保つためにそれに合わせて後ろへと下がった。


その際、ほんの少し、時間にしたらコンマ何秒かだけシャルルから目を切って避ける事に専念した隙に、肩を打たれた。


痛みを感じてから気がついた。

攻撃されたと分かったが、それは目で捉えられていないまま。

それでも追撃の剣は、なんとか見え、剣で受ける事が出来た。


「ほほ、防ぐか。」


剣が見えたのは偶然に近い。

何をされたか分からないと次は防げない。

ラルフは、考える。

何をされたかを。


よく観察すると、自分で設置したはずの風魔法が一つ足りない。

肩を打ったのは剣ではなく、置いておいた風魔法か。

恐らく接近しながら剣でこちらへと弾き飛ばして来たのだろうか。


強い。


今の少しだけでラルフは理解した。

今まで会った人の中でダントツで強い。


でもなんか、調子がいい様な気がする。

いつもより良く見えるし、動ける。

でなければ追撃の剣を避けられてはいない。


ラルフ本人はよくわかっていないが、祝福で加護の力が強まっているので、避ける動作に関しては、文字通り神掛った反応を見せた。


そんなラルフを見ながら、シャルルは楽しそうな顔を見せる。


加護の効果は神の与える能力と比べるまでもなく弱いものだが、補助としては優秀。

祝福中のラルフなら、ブランドにもルーベンスにも勝てるかもしれない。


しかしそれでもシャルルの攻撃は当たってしまう。

次に繰り出して来たのは、上中下段に素早く振り分けたシンプルな横薙ぎ。


見えているが、避けきれなかった。


それが上手さによるものなのか、速さによるものなのかすらも、未熟なラルフには理解すら出来ていなかったが、加護のおかげでハードヒットにはならずに済んだ。


「シャシャシャシャ、やりますね、ラルフ。

楽しいですよ!シャシャシャシャ!」


この爺さんはとっくに人間を辞めているとラルフは思った。

変な笑い声を上げながら、振るう剣は、別の生き物のようだ。

見えているし、避けられてもいる。

避けきれない攻撃は、痛みの少ない部分で受けられている。

しかし切り返しの上手さと緩急で追い詰められ始めているのも理解している。


今のラルフに出来ることは、小さい魔法で牽制しながら防いで、無理矢理にでも攻撃することぐらいだ。


一発を狙って突撃したところで、体重差で跳ね返されるのがオチ。

それはどれだけ剣を強く振っても解決できる問題じゃない。


守りを固めて、チャンスを窺う。


しかし、いかに守りを重視して構えたとて、攻撃は当てられているし、こちらの攻撃は可能性を感じない防がれ方をしている。


シャルルの剣筋は手順も美しく、受け続けると何撃目かに絶対受け切れないタイミングで攻撃が来る。


防ぎながら、体重差で吹っ飛ばされて体力も削られる。

この小さい身体が恨めしい。


何か出来ることはないか?

今までの能力でヒントはないだろうか…!


家族から声援が聞こえる。

せめて一発くらいかましてかっこいいところを見せたいじやないか。

みんな練習に付き合ってくれたんだから、一矢は報いたい。


家族、家族か。

一つやれる事が、浮かんだ。


まずは距離を取らないと。

この爺さんは楽しそうなことを邪魔しないだろう。

さっきから工夫をしようとすると受けてから返している。


そのおかげで時間は得られる。

この爺さんは多分、ヒーローの変身シーンで攻撃はしないタイプだ。

ナメられているとも言えるけれども。


足元の石を剣の腹で飛ばしてシャルルへと飛ばした瞬間に大きく距離を取る。


ラルフは剣を足元に刺して、魔法に集中した。


爺さんはニヤニヤしながら様子を見ている。

やっぱり好きにやらせてくれるらしい。


助かる。

この属性自体久しぶりに使うから、時間が掛かるのだ。


この何年かで使われているところは何度も見ている。

僕と神様のせいで若返ったお父さんが、どうしても元の年齢の姿が必要な時に、ティナがかけていた死属性魔法。


その度に迷惑かけてしまったなぁ、なんて思っていた。

迷惑かけたのは神様だけどさ。


10歳分くらい老ければ、成長する事が出来れば、もう少しなんとかなるんじゃないか?


死属性魔法特有の紫色のモヤに包まれた「俺」は、25歳くらいの肉体に変化した。


サンキュー、ティナ!

見てなかったらこんな非常識な魔法、頭にも浮かばなかったわ。


「シャシャシャ、珍しい魔法ですね。

しかし、慣れない身体になって動けますか。

力やスピードは上がるかもしれませんが…


ガッカリさせるなよ?」


バカ言え、誰に言ってんだ。

もうちょい歳はイってたけど、このくらいの身体の方が慣れてんだよ。


「俺」はな。

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