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転々転生  作者: まつり
剣と魔法と聖女とジジイ

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困り事


僕は困っている。


お父さんも困っていたし、アンヌもブランドさんも困っていた。


溢れる困りごとの嵐。

まず僕の困り事からいきましょう!


はぁ。


僕は、いきなり大衆の前で決闘なんで意味のわからないものに駆り出されたことに困った。


これは一番シンプルだ。


そもそも僕は強いのかどうかもわからないのに、いきなり試合。


どうやら相手の…えーと、シャビエル君は、僕がアンヌの婚約者だというのが気に食わないんだって。


びっくりだよね。


手紙の内容によると、アンヌを賭けての決闘を申し込まれているのだ。

賭けるもなにも僕の恋人でも妻でもないのに、なぜそうなったのかが分からないと思っていたら、婚約者なんだってさ。


知らなかったよ。

僕だけ知らないならともかく、誰も知らないんだもん。


どうなってんだまったく、である。



私が婚約?ラルフ君と?いつ決まったの?


確かにおじいちゃんからそう言われたことはあったけど…。


2人をよそに降って沸いた婚約者騒動。


もちろんラルフ君が嫌って訳じゃないけど、なんというか、段階とかもないし、政治が蠢いているのがすごく嫌。


学校へ行くとその話題で持ちきりだし、外堀を埋め立てられて広い敷地が作られているのを感じちゃった。

そんな話知らないでは通じない規模で話が動いているっぽいのよ、これが。


ラルフ君は同じく何も知らなかったから可哀想だけれど、どうやらおじいちゃんの後の後の聖騎士団長の息子さんが私を欲しがっているらしく、彼が相手になるとか。


少年の部の優勝者よね、彼。

強いらしいけど、現時点で好感度は地の底。


思い込みで決闘状を送る考えなし、信じらんない。

手紙の端々から感じる、女をアクセサリーの様に思っているのも気持ち悪い。


でも公式戦になっちゃってるのよ。

手紙が他の人の目に触れる前に、おじいちゃんが抗議したから。


我が孫はラルフの正統な婚約者である。

気に食わぬならばこの決闘にて神に伺いを立てたらいい!とかなんとか言ってさ。


王様に宣言したから。

ラルフは負けぬって。


抗議するなら決闘に対してでしょ。

みんなそう思ったわよ。


だけど王様が認めちゃったから、撤回もないもの。

やるしかなくなっちゃった。


あーもう、どうなってんのよ、まったく!



親父がまたやらかした。


剣聖シャルルのライバル、賢者サシュマ。

そのお孫さんのラルフを、勝手に婚約者に仕立てた。


勘弁してくれ。


そもそも親父が襲撃してくるからって、3年も軟禁生活をさせてしまっている。


俺も罪滅ぼしのためにせめてもと修行相手をかって出ていた、謝罪相手なのに。


何度も一緒に練習をしているから、当然ラルフは可愛い弟弟子だ。

アイツは真面目だし、剣の才能もある。

親父の見る目もなかなかじゃねぇか、何で思ってた矢先にこの決闘騒ぎ。


マジですまねぇラルフ。


この2日で比喩じゃなく100回くらい謝ったわ。

ハゲそうだ。

こめかみとつむじ、両方からいきそうだ。


でもなぁ、困りごとは頭髪どころじゃねぇ。

相手が聖騎士団長の息子なんだってよ。


やってくれるじゃねぇか。


俺が騎士団に入る前から、ブランドは聖騎士団長になれると方々から言われて育って来た。

前聖騎士団長の息子だしな。

もちろん大会実績なんかもあったが。


だから俺が次の聖騎士団を背負うのだと、みんな思っていた。


だけど俺は騎士団の道を選んだ。


親父の信奉者だらけで、シャルルの息子としてやっていくのは、男のプライドが許さなかったからだ。


周囲の反対を無視して騎士団に入った俺は、出世していく中でいろんな奴と出会った。

俺の想いを尊重するものいたし、格として落ちる騎士団へ行ったことを逃げたと思っているものもいた。


それは仕方ないさ。

恨んじゃいない。

そう思われるだろうなとは分かって選んだ道だから。


まぁ、小さな嫌がらせはあったが、俺は自分で選んだ道なので気にはしていなかった。

だがある年の剣技大会で、現聖騎士団長、当時はまだ期待のホープぐらいの立場だったが、ヤツと当たった。


戦いは接戦だったが俺が勝った。


似た剣技で似た戦術。

そりゃあ当然だ、親父の門下って意味では兄弟みたいなもんだからな。

ヤツが俺と互角で嬉しかったし、安心した。


俺が聖騎士団に行かなくても、いい男が居るではないかとそう思ったのだ。


互いに正々堂々と戦ったので、思うところは何もなく、むしろ友になれるだろうかなんて考えていたがそうはならなかった。


卑怯者、と言ったのだ。

小さく、誰にも聞こえない声だったがたしかに俺だけに届くように、呟いた。

それを聞いた時、尊敬の念を抱いてすらいたこの男を一気に嫌いになった。


それからは俺もヤツに反目する態度を取るようになっちまってな、現在では兵士の中では有名なほど仲が悪い。


親父とサシュマ様みたいなもんだ。


神聖なる大会での決勝勝者を讃えるでもなく、貶した。

そいつの息子に娘をやるなんて腑が煮え繰り返る思いだ。


しかし勝ってくれとは言えないよなぁ。

巻き込まれたラルフには。


何やってくれてんだよ、親父。



息子が学園に通っていない理由、それは彼の容姿にある。


神職者が見れば一目でラルフィード様に似ている、と思ってしまうだろう。


それによる、政治的面倒に巻き込まれないように、聖職者コースがある我が学校を避けさせた。


少し大きくなった今なんもその印象は変わらず、むしろ逞しくなって来たことで説得力さえある。


その美しく神々しいラルフを衆目に晒すことになるなど考えていなかった。


しかも人質を取られたような形で避けられない。

私は当然アンヌもかわいく思っている。

3年も息子と共に学ぶ真面目な娘、嫌いになろうはずがない。


ラルフの実力は、魔法使いの私にはわからない。

魔法使いとして、特に医者としての実力は今すぐに病院で働けるレベルであるが…。


しかし常軌を逸した修行を続けてきたのは見守ってきたから、弱いはずはないだろう。

それに、忸怩たる思いではあるが、あの剣術馬鹿が才能を認めているのラルフがそんな努力をしているのだから、尚更だ。


正直この際、強いか弱いかはどうでもいい。


だが……。

ラルフィード様の、神様そっくりな男が現れて、勇猛な試合をし、美しい女性と婚約する…。


なんじゃそら!

聖典の一文か!


ラルフを応援する気持ちはとてもある。

とてもあるのだか、終わってからラルフに集まる虫どもの駆除を考えると気が重い。


その虫の中でもとびきりの大物、剣術馬鹿を退治するために今から魔力を練り始めよう。


退治ではないな。

駆除だ。

駆除。

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