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転々転生  作者: まつり
タナと1000人の悪霊

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32/82

君の名前は

「また無茶をしますね、貴方は。

あーあーあーあー、どうするんですかこんなに連れて来て。」


神様の前には僕と大量の亡者の粒が居る。

今まで殺すだのなんだの囁きまくってた死霊たちも、神様のあまりの神聖さにダンマリだ。

やっぱ最高に神々しいぜ、神様。


あっはっは。


「なに笑ってるんですか。

今更ヨイショしたって対応は変わりませんよ。


まぁいいですけど、救いも神の仕事ですからね。

たーんと働きますよ、1000人分。

そういばお供えされたパイは美味しそうだったなぁ、

1切れくれたらならいつもの倍頑張れるんですけどねぇ。」


ダメだよ。


僕の分をあげてもいいけど、家族で食べるからいいんだよ。

誰かが食べないと心配するじゃないか。

まぁ、でも、もし家族が奇数になれば一つ余るかもね。

そうしたら神様にもお供えしてあげるよ。


「…成程、そういうつもりですか。

まぁ、良いでしょう、お供えを楽しみに待ちますよ。


とりあえずラルフの御連れ様には、神様の聖属性魔法の凄さ、見せてあげましょう。」


神様が手を一振りすると、僕に取り憑く7、800体の死霊は、ざぁ、と消えた。

消えてなくなったのか、何か別の、天国や地獄的なところへ行ったのかは分からない。


尋ねるのも怖いからやめとこ。


「…ラルフちゃん、貴方、まさか、あの人、ラルフィード様…。」


やるじゃんエマさん。

そうです、神様のラルフィード様です。

それを聞いたエマさんは目を剥き、神様へ伏せるように頭を下げる。


「神様!神様!私の、私の娘を生き返らせて下さい!私は消えても良いから、お願いします、お願い…!」


必死に縋り、頼むエマさん。


しかし、神様は首を横に振る。


エマさんの唇が震え、涙が溢れる。

30年近くそれだけを願って過ごしてきたのだから、当然だろう。


「いくら私でも、死んでない人を生き返らせる事は出来ません。

貴女が精霊化し、偶然その胎内で見つけた娘の魂を、自身に宿して成長させるという無茶苦茶を成して存在している子。

この世界でもしかしたら唯一、私の手を離れた存在かもしれませんから。」


「そんな…!」


ふーん、そうかぁ。

現世というか、世界との繋がりがないのがマズいって話ね?


繋がりかぁ。


あるよ、繋がり。

僕はちゃんと聞いてきたんだ。

僕の名前を消すのが大変だった様に、名前というものの重要性を知っていたから。


誰にって?

そんなの、お父さんに決まっている。

僕の、そして、ティナの。


「…ティナ…?」


そう、君の名は、ティナ。

サシュマとエマの子、ティナ。


僕が名前を伝えるとタナの、エマの身体からパキンと音がして、割れた身体から光が漏れ出した。


「神様、分かっているよね、僕が次に望む力。」


「えぇ、でも、良いんですか?

もし今後貴方に大切な人が出来て、その人を失った時。

今その力を望んだ事を後悔するかもしれませんよ。」


しないよ。

元々ズルみたいなものなんだから。

人はいつか死ぬ。

産まれた瞬間から死に向かって歩き続けるんだ。

だから昨日より明日を良い日にしようって思いながら生きてるんだよ。


それが人の儚いところでもあるけれど、良いところでもあるんだよ。


だから、僕に蘇生の力を。


ティナは産まれてすらいない。

死に歩き出す事すら。


それはあまりに可哀想じゃないか。


「良いでしょう、しかし、蘇生などどんなに才能があっても、人の身で行える訳がないのは分かりますね?」


うん、そりゃそうだ。

使った瞬間に死ぬだろうね。


「ええ、分かっているなら良いですよ。

じゃあ次の次の力も考えておいて下さい。


ほら、ティナを生き返したあとに、案内する必要があるでしょう?

のんびり死んでいる場合じゃなくなりますよ。」


確かに。


うし、生き返って死んで、生き返るかぁ!


あ、ごめんねエマさん。

蘇生は1人だけみたいなんだ。

まぁ、ティナを生き返すのも無理矢理みたいなもんだし、許してよ。


「…ありがとう。」


うん。


次の次の力は、戦う力にするよ。

ほら、大切な人が出来た時に、後悔しない様に守る力も必要だろうし。


「えぇ、分かりました。

さて、蘇生の力を与えますが…痛いからね。

頑張るんだよ、ラルフ。」


そんな気はしていたよ。

人の力を超えているから、まぁ、しゃーないか。

死ぬのは慣れてるし。



私の娘、サシュマと、私の。

そう、ティナというのね、あの人ったら、名前を考えてくれていたの。

…それに、こんな長い時が経ってもそれを覚えてくれていたなんて。

それたけで私は幸せ。

それなのに、ラルフちゃんはティナを生き返らせてくれると言う。


「あ、ごめんねエマさん。

蘇生は1人だけみたいなんだ。

まぁ、ティナを生き返すのも無理矢理みたいなもんだし、許してよ。」


ラルフちゃんはそう言って申し訳無さそうに笑顔を作ったけれど、とんでもない。

私は、その為にだけ存在していたんだから。


感謝しか、ない。

ありがとうなんて、ありきたりなお礼しか言えなかったけれど、本当に心から、貴方に感謝を。


神様がラルフちゃんに手をかざし、何かを発動させた瞬間、ラルフちゃんの身体に異変が起きた。


「蘇生と簡単に言いますが、人の命は人の命でしか支払えません。

痛く、苦しいのは覚悟していたでしょう。

さ、頑張ってくださいね。」


ラルフちゃんが頷いた瞬間、ぼきぼきと骨の折れる音がし、肉がちぎれ、脳が潰れていく。


ゾッとする。

悍ましい光景。


ベキ、クチャ、ベチャ。

嫌悪感のある音が鼓膜に響く。

目を逸らしたいけれど、私は見届けなくてはならない。


ラルフちゃんが、ティナの為に辛い方法を選んだのだから、母親の私は目を逸らさずに見届ける義務がある。


何分経ったか、長くも短くも感じた最悪な音楽は途切れ、気がつくと神様の前に赤い球が浮いていた。


赤が圧縮されまるで宝石の様。


「ダメね、私。

その神聖であろう命の塊を見て、それのおかげで娘が産まれるって知ってても悍ましさしか感じないわ。」


そう呟く私に、ラルフィード様は優しく笑い頷く。


「ええ、生命なんてね、気持ちの悪い物ですよ。

私達だってそうです。

だからこそ、気高く生きる事は美しいのです。


エマ、貴女を輪廻に返したいところなのですが、実は出来ません。

長年死霊や屋敷の人々の祈りを受けた貴女は、精霊、神の卵となってしまいました。

神気、と言うんですが、生きる者が持つべきではない力を少しだけですが得てしまっています。


まぁ、これからは神の一柱として、ここから私と彼らを見守りましょう。」


そうなの?

ま、なんだっていいわ。

願いは全て叶えられたもの。


…2人の成長を見守れるなんて、嬉しいだけ。


エマは頷く。

現世に未練が無いわけではない。

愛するサシュマと一目会いたいとは思う。

だけど「母」として、満足してしまった。


死人として生きるには、困難な程に。


「エマの名は使わないでおこうかしら。

もし、神として現世に知られた時、あの人が貴方から私に信仰を鞍替えしたら申し訳ないし。」


「はは、そうですか。

はぁ、それにしても、貴女、神になるじゃないですか。

そんな貴女に信仰される、ラルフは一体何なんでしょうかね。」


神に信仰される人。

それを何と呼ぶべきか。

勇者、英雄、救世主。

なんでも良いか。


「ラルフィード、私の名は、タナ。

死と安らぎの神、タナよ。

これから、よろしくね。」


そう決めた時、ティナが身体から抜けた時に出来たヒビが消えた。

ラルフちゃんの言う通り、名前って大切なのね。


「よろしく、タナ。

結局、タナの名を使うのですね。」


「ええ、そうよ、分かりやすい様にね。」


娘の恩人に、私の勇者様に。

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