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転々転生  作者: まつり
タナと1000人の悪霊

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新しい家族

「なぁ、ルーベンス。

やっぱり最初の剣術の指導は師匠に頼もうと思うんだけど、どう思う?

大事だろ?始めの稽古ってさ。

それで剣が好きになるか嫌いになるか決まるって言ってもいいだろ?


あの爺さんも教え魔人の片割れだけあって、指導はマジで上手いからよ。」


カル兄はちょくちょく屋敷へとやって来る。

以前はそうでもなかったが、最近は特に。

理由は、我が家の新しい家族、ラルフの様子を見に来たとの事だ。


門番の彼はラルフが事故に巻き込まれて行方不明になった際、先生と共にいた。

なので忙しい間を縫ってラルフの探索を続けていた所を見ると、責任を感じていた様だ。


「ウチの親父に?」


ラルフへ剣を教えてあげると話したらしく、律儀にも木剣を2本持って来ているのだが、剣士は最初の師匠というものを重視する傾向にある。


昔の徒弟制度の名残で誰に教わったかで流派が決まり、兄弟子が決まる。

それで強さが決まる訳ではないのだが、同門は家族同然、弟弟子の面倒は兄弟子が見るべしという教えが根付いているので、人は選んだ方がいい面もある。


その点、ウチの親父は悪くない選択肢ではあるが、大きな問題もある。


「いや、先生と仲悪いだろ。

私もラルフが弟弟子になってくれたら嬉しいけれど、仮にラルフが剣にハマったとするだろ?


それは良いんだけどね、好みとか特性もあるからさ。


良いんだけど、もしそれで魔法を疎かにしたら、また喧嘩が起きるよ。」


サシュマ先生と我らが大師匠、シャルルの仲は悪い。

それは都で暮らし、剣か魔法に生きるものなら誰でも知っていると言っても過言じゃあない。


昔何かあったかは知らないけれど、多分何にもない。

似たもの同士、同族嫌悪ってやつだろう。


「あー…いや、師匠はともかく、先生はそんな心狭くないだろ。」


普段はそうだ。

同じく徒弟制度の名残がある魔法使いである先生も誰が師になるかは大切だと考え、指導の上手い私の父に依頼する事はやぶさかではないだろう。


教えたがり同士が教え子を取り合っての喧嘩はしても、それが子供の為になるのなら身を引くぐらいの分別はついている。


普段ならば、だ。


現在、ラルフが来て三週間程か。

彼の言葉に少し、辿々しさが消え始めた。


朝食後から昼食までの2時間、一般的な教養や計算を教えているのが私の仕事なのだが、とても覚えが良い。

始めは戸惑っていた四則計算など、なにかコツを掴んだのか早くもミスなく素早く計算を終えてしまう。


午後からの2時間は魔法を学んでいて、そちらも覚えが良く、特に医療に関する新聖魔法の吸収が早すぎるぐらいだ。


先生の下で幾人も子供に教えて来たが、経験がないと感じる程の知性。

まるで中に大人が入っているのではないかと錯覚する程だった。


初子、年齢的には本来なら初孫か。

先生は、真面目で才能を感じる我が子に首っ丈。

浮かれきっている。


確かに私もそう思うが、1日少なくとも15回は天才だ!と褒めちぎっているのはやり過ぎではないかとも思う。


そんなラブマイサンな先生が、天敵の親父に我が子を預けるとは思えない。

良くない事が起きるに決まっている。


「私は…うーん、悩むね。

始めの一歩だけ、親父に頼ってみても良いとは思うけどね。

そうしたら、ほら、親父の悪癖も出ないだろうし。」


「あぁ、アレな。

そうだなぁ、一応最初だけって頼んでみるわ。


ところでよ…その、お前も先生もこの屋敷にいる人達は信用してんだけど、よ…。


あの、なんだ。」


カル兄が言い淀む。


いや、分かる。

彼の言いたい事は。


「…ラルフのクマの話だね?」


「おぉ、どうしたんだよ。

ツルツルの顔だったのに、まるで何日も寝てないみたいじゃねぇか。」


そうなのだ。

最近特に、ラルフの顔色が悪い。

勿論私達全員、勉強や仕事を押し付けたりなんかしていないし、14時には自由に遊んで回れる様に解放している。


その後の自由時間には、ララの手伝いやぺぺの所に行ったりしているらしいが、無理はさせていない。


ラルフの為にと屋敷全員の食事時間も早めて、17時には摂る様に変えたし、ラルフも20時には床に着いている。

それは何度も確認したのだ。


もしかして、覚えが良いのではなく、夜中に必死に勉強しているのかと考え、シーが魔法で姿を消して見守ったり、ララが添い寝してみたり、私と先生も定期的に覗きに行くのだが、いつもキチンと眠っている。


「謎なんだよ。

ラルフが何故あんな顔色なのか。


先生がこっそり診察の魔法を掛けた結果は、寝不足。

寝ているのは確認しているのに、だ。」


「マジかよ。

なんか顔が良い分げっそりしてると怖えーもんがあるな。

なんつーか、悪霊でも取り憑いてんじゃねぇのって感じがするわ。」



大正解。


僕の魔法の練習を少し離れて所で見ているルーベンスさんとカルさん。


2人は同じ道場の出身らしい。


『どこだ…。』


話の内容も聞こえちゃった。

大正解だよ。


やっぱ心配掛けてるよなぁ。

8歳児の疲労感じゃないもの。


『どこへやった…。』


顔のクマも確かに酷い。

でもこれは根比べしかないからねぇ、ら


『タナをどこへやった…。』


ちょっとうるさいなぁ。

今、魔法の練習してるから静かにしててくれるかな。


『おぉぉぉぉおぁああああ。』


そのいかにも悪霊ですみたいな重低音なら良いよ。

意外と気にならないから。


さてさて。

悪霊が根を上げるか、僕の身体が壊れるか、お父さんが心配のあまりハゲるか。

どれが一番早いかな?


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