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転々転生  作者: まつり
タナと1000人の悪霊

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26/81

ぺぺ

祈りを終え目を開けると、目の前数センチのところに顔があった。


タナの。


びっっくりした!

何!?近いって!

昔ネットで、急に画面いっぱいに叫び声と共にお化けの画像が出て来て心臓が破裂しそうになったのを思い出したよ。


『お祈り、上手ね。

息もしてないんじゃ無いかってくらい真剣で。

本当に初めてなの?

ラルフったら、お祈りの天才じゃない!』


お、おぉ、ありがとございます。

本当に息もしてなかっただろうし、なんなら脈も止まっていたと思うけど。


…あれ?

なんか…フレーバーテキストみたいな語りしてた時、僕が死を繰り返しているのが分かっているっぽかったけど、このタナはそんな感じじゃないな。


あの声はなんだったんだ。


祈りは確かに深く、時間もかなり経ったらしい。

高かった日もやや落ちかけて、夕方。

屋敷の煙突からは煙が上がり、それに乗ってか美味しそうな匂いもする。


「真剣に祈る姿は見入るものがあったが、そろそろ夕飯だから、中に入りなさい。」


いつの間にか背後にいたお父さんに声を掛けられた。

普通の子供ならこんなに長時間外で祈っていたらとっくに止められていると思うけど、お父さんは唯一僕と神様の繋がりを知っているから、止めなかったんだろう。


「もし、ラルフィード様との対話が必要なら、部屋に像を置くといい。私の部屋に幾つかあるから、持っていくか?」


親子の初めてのお揃いが、神様の像ってのはちょっと…。

それになぁ。


「自分の顔と、同じ、像を置くのは、いや。」


爆裂ナルシストみたいじゃんか、ね。

鏡に語りかけ続けると脳が狂うみたいな話があるけれど、

それと同じ効果がありそう。


「ははは、そうか。

それにラルフは神子。

親の像に祈るのも変か。」


そんな宗教も否定はしないけど、違和感はあるかな。


「いいにおいがする。」


「ん?あぁ、ぺぺの料理は絶品だぞ?

なんせ、聖花に名を残す名コックだからな。


本人に言うと恥ずかしがるが。」


…聖花に名を残す…?


!!


聖花って…!


スタルビニアラルフィード・サシュマシャルルペペペぺ・チャチュムラッチャヌボンボの事だよね!


覚えてた!奇跡!


あれ、確かスタルビニアの部分が唯一なる偉大なって意味で、ラルフィードが神様の名前。


後半部分ってマジの寿限無なの?


「そうだぞ?聖花の後半は、当時有名な聖職者や、教会に貢献した者の名を連ねているのだ。」


はえー…そりゃ悪魔呼ばわりされるかもね、そんな名前名乗ったら。


ん?後半の頭に…。


「お父さんの名前も、ある。」


「ん?あぁ、同名の者だろうな、ははは。」


…同名?

そんなことある?

お父さんはかなり有名な聖職者らしい。

その名前と同じ有名な聖職者もいるの?

良くある名前なの?


『んふふ、恥ずかしがってるのよ。

この人が聖花の後半始めの部分、サシュマの由来なのんだから。

当時もすっごい嫌がっていたんだけどね。』


あはは、そりゃあ嫌だよねぇ。

何をしてそうなったのかは知りたいけど、お父さんには聞かないであげよう。


「ご飯、楽しみだ。」


『もしパイが甘いのだったらお供えしてね。』


はいはい。


連れられてダイニングへ入る。

広い部屋だが家具は控えめで、その代わり暖炉が存在感を放っている。

気温の低い季節では無いらしく火は入って居ない。

綺麗に整えられた灰と、積まれた薪がなんか男心をくすぐるぜ。

そのうち薪割りなんかも手伝わせてもらえるかな。


ダイニングテーブルもそこまで大きくないもので、6人掛けプラス、誕生日席に椅子が一つ置いてあるだけ。

僕が入ってこの家には6人居ることになるから、椅子は一つしか余らない。


てっきりお誕生日席にはお父さんが座るのかと思ったけど、促された並びの席の隣に座ってくれるみたいだ。


「まだぺぺは私が若返ったことを知らんからな。

驚かせるために普段と違う席に座るのだ。

ははは。

隣にいた方が、お前を紹介しやすいしな。」


後半が本音でしょ。


大人しく座りしばらくすると、遠くから鐘が鳴るのが聞こえた。

そういえば時計を見かけていないから、あの鐘が時間を表しているのかもしれないなぁ。


あの鐘、僕が生まれたはずれの丘の教会のやつかな。

都は高い建物が多くて、他にあったのかもしれないけれど見つけられなかったけど、多分そうだ。

あれが鳴る時はこんな音な気がする。


鐘の音に聞き入っていると、後ろから料理が運ばれてきた。

お父さんの前に置かれたのは、豆のサラダと、何かの肉を焼いたもの。

見た目はラムチョップなんだけども、羊が居るかは分からないから、謎の肉としか言いようがない。


「俺はぺぺ、ここのコックだ、よろしくな。

 

坊主は今日の主役だから、温かいのを食べられるように最後な。


アニキはジジイだから脂が少ないところを好むからよ、冷めても不味くなりにくいんだ。


な、アニ…あれ?どちらさん?」


快挙!

快挙だよ!


お父さんの顔が嬉しそうだもの。


お父さんが若返ったとて、ここまで3人誰も別人だと思ってくれなかったんだから。


「私はジェマ。

サシュマの息子だ。

よろしく頼む。」


ほら、ノリノリじゃん。


いつの間にか座っていたルーベンスさんとララさんもニヤニヤしてこちらを見ている。


「おぉ!アニキの息子さん!

長い付き合いだけど知らんかったなぁ!

こっちの坊主が孫って事だな?


子供が来るからよろしく頼むってそう言う事かぁ!

ならあんたも主役か。

アニキ用の赤肉は俺が食からよ!

うまい脂を堪能してくれ。」


わお、本当に気が付かない。

それを楽しんで、誰もお父さんが若返ったのだと指摘もしない。


「アニキの分の肉の在庫が気になるか?

大丈夫だ!

本当は年寄りだから魚の方が好きなのに、俺らに対抗して肉も平気な顔をしているだけだから、魚に変更しても文句は言わねぇよ。」


確かに胃に病巣があったし、消化に悪い肉はモタれた事だろうさ。

…マジで気がつかないの?


そろそろ気まずくなって来たんだけど。


まぁ、いつまでも隠しておけるものではないか、と考えていた時、遅れて着席したシーちゃんが悪気なくバラした。


「師匠、若返った髪の毛を調べてみたんだけど…。

あれ?なに?

若返って、はしゃいで肉いっちゃうの?

まだ体内がどうなってるか分からないんだから、少しにした方がいいと思うけどなぁ。」


それは僕も同意見です。


「え?若返り?

そんなことあんの?

アンタ…アニキの息子じゃなくてアニキ本人か?


はぇー…えぇ?

人って若返ったりすんの?」


困惑はごもっとも。

非常識なのはこちらサイドなので何にも言えないよ。

人はそうそう、と言うか、普通は若返ったりしないから。


「えー、と?

じゃあラルフは…孫?」


いやー、ほら、変なイタズラするからややこしくなってるじゃん!

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