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転々転生  作者: まつり
タナと1000人の悪霊

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祈り

これは儀式では無く鎮魂で、向き合うのは心。


僕が祈り始めると、頭のすぐ後ろから声が聞こえて来た。


『ラルフ、貴方はあまり良くないわね。

死が隣にいるわ。

私という存在を感じているだけでも危ないのよ、本当は。


死が似合う、馴染み過ぎている、実感はあるかしら。』


さっきまで人物紹介に一口メモを添える存在だったタナが、意味深な預言者みたいな事を言い出した。


『貴方はきっと何かを成すでしょう。

だって、死と友誼を持ち、神とも近く、運命に抗うことが出来る。


人はそれを英雄と呼ぶ。


だけど忘れないで、英雄は死して英雄と成る。

生き続ける英雄は怪物、英雄譚は悲劇や喜劇に成り下がる。』


タナ?タナさん?

あれ、性格から違くない?


RPGの冒頭みたいになってるよ?

フレーバーテキストみたいなこと言うキャラじゃないじゃん。


『死は安らぎでも、救いでもある。

だけど、根源の恐怖でもあるはず。


きちんと恐れなさい。』


うん。

…いや、分かるよ。

俺はこの世界に来る前に一度ちゃんと死んでいる。

それに、前世は小児科医。

死の恐怖は身近にあったし、感じていた。


祈りは深まり、頭の芯の奥の方が痺れ、冷たくなっていく。


目の奥が白く光る。


神様は俺に何かをやらせたいのか?

そう考えたこともあるよ、正直。

意味もなく生き返して送り出すかなって。


神の意を得て戦う戦士。

それを勇者と呼ぶのか、タナの言う通り英雄と呼ぶのかはわからないが、もしそうなら…。

もし、魔王みたいな存在がいて、それを打倒せよと命ずるならば。


それならば。


もっと分かりやすく強い能力くれって思うよねぇ。

違う気がする。

あの神様はそんな事を考えてない様な気がするよ。


でしょ?神様。


「えぇ、別にラルフに倒して欲しい存在なんて居ませんよ。

ちょっと考えたら分かるでしょう。

人から見ての他種族も、等しく私の子。

兄弟喧嘩に口出す親などおりません。」


だよね。

どうしようかと思ったよ、神様が差別主義者だったら、僕の使命は神殺しになるところだったかもね。


「いやだなー、そんな事にはならないですよ!

あはは。


ただ、あの子の言うことも一理ありますからね。

貴方は死を抱き過ぎている。


他人の、ではなく、貴方自身の命を軽んじています。

別にこの世界に来てから、死に慣れすぎたからという話ではありませんよ。」


まぁ、ねぇ。

流石に前世の死因は思い出したわ。


俺ぁ。


そんで、あの子は助かったのか?


「えぇ。」


そうかい。

ならいいか…。


医者の不摂生とはよく言ったもんだがね、数パーもない適合者を見捨てるなんて運命に反すると思っちまったんだよなぁ…。


アンタもそうだろ神様。


俺を生き返す理由。

移植の適合率なんてもんすら生やさしい奇跡の様な、1000年現れなかった、話すことの出来る程に相性の良い俺を見殺しにするのが何となく嫌なだけだろう?


「まぁ、それもありましたね。」


他にも理由があんのか、それって教えてくれるのか?


「いやぁ、他人に言う事でもないですし。」


あ、そ。

ま、いいや。

そういやぁ、今回が初めてかもな。

死んだ理由はなんとなく分かるって。


同調し過ぎたってやつじゃない?


「そうですね。

石碑にこびりついた悪霊の塊。

普段はタナが慰撫し、屋敷の者が供養している為に落ち着いていますが…。」


元生者とて、死人は死人。

祈り重なり合えば引き寄せられる。


納得はいかないがそんな所だろうか。


「概ねその解釈であっていますよ。

それで、次の力はどうしますか。」


あの、悪霊を消す力が欲しいかな。


「ふむ、浄化はもう使えるでしょう。

力は無くしましたが、コツは覚えているでしょうから、コツコツと癒していけば、徐々に綺麗になりますよ。


ふふ…コツでコツコツ…。」


いや、上手くもなんともねぇよ?

ダジャレベル2ぐらいだぞ?それは。


んー、アイツらに長々と構いたくねぇんだよなぁ。


神様なら、タナの正体分かっているんだろ?

俺は祈り、重なり合ったってことで、あの石碑に何が起こっているかを理解できたけど、あんたは段階いらねぇもんな。


あの石碑は、戦争の慰霊碑。

それは間違いない。

何が原因で起きて、どんな悲惨なストーリーがあるのかは知らねぇが、葡萄畑の様に、丸く黒い魂の塊がくっついているのは寒気がしたよ。


戦争が終わってから…みんなの口ぶり的に25年ってとこか。

始まりはもっと前なんだろうなぁ。

多分、40年前とかか。


「おや、推測にしてもいい線行ってますよ。」


そうだろう?


根拠があんだよ。

だからムカついてんだ。


だから次の力は、悪霊をどうにか石碑から引っぺがせる力が欲しい。

力づくでもいいんだよ、何十年もママに甘えている奴らをいっぺん離してみてぇってだけだからな。


「ふむ。

では死属性魔法の才能を授けましょう。

使い手の少ない珍しい魔法ですが、死者の世界へと行けますよ。

そこからは自力で頑張る形になりますが。」


おっけー。

それでいこう。


あの甘ったれのマザコン共を叩き出してやらぁ。

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