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転々転生  作者: まつり
タナと1000人の悪霊

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ルーベンス

屋敷にいた透けた女の子はこちらに危害を加える様子もなく、ただ屋敷を巡回し、そこに住む人々を見守り、観察しているだけだったそうな。


本人が言うんだから、そうなんだろう。


『退屈なのよ、ラルフが来てくれて嬉しいわ。

見えているんでしょ?』


見えていません。

見えないはずなんです。


「ラルフ、石碑を見て、何かを思う気持ちは嬉しい。

だが、今は家族への紹介を先にしよう。


早くお前を皆に会わせてやりたいんだ。」


ぼーっと石碑の方に居る、普通には見えないらしい女の子を見ている僕を促す。


確かにこんな所でお化けに構ってまごまごしていても仕方ない。

そうしましょう、見えていない事にしましょう。


屋敷に入り、入り口からすぐの大きな扉の先はダイニング。

普段の食事はここで皆でご飯を食べるんだとか。


『私はね、石碑にお供えされた物を頂くんだけど、ぺぺのご飯はとっても美味しいから楽しみにしていてね。』


それは楽しみだ。

異世界メシに馴染めるといいなぁ。

好き嫌いは無いタイプなんだけど、あまりにかけ離れていたら困っちゃうし。


僕らはダイニングへは入らず、次の扉へと進む。


『ここはサシュマの部屋ね。

偉いんだからもっと奥にしたらいいのにって話し合いもあったんだけど、何かあった時に皆を守れる様に入り口近くに部屋を作ったんだって。』


へぇ〜。

確かに言いそう。

僕がムキムキになって殺すぞって言いながら門に走って行った件で助っ人としてやって来た時も、その後あぶないかもしれないのに教会へ調査に来た時も、1人だったもんなぁ。

自分が怪我するのは良いけれど、他の人が怪我する方が嫌なタイプなのかな。


その扉も開けず、さらに奥へと進む。

廊下の突き当たりを曲がると、奥には扉がいくつもあって、その左手の一番手前が目的の部屋、執務室らしい。


「ルーベンス、居るか?

サシュマだ、入るぞ。」


中から返答はなかったが、ペンが紙の上を動く音が聞こえる。

仕事中に申し訳ないが、お邪魔させて貰おう。


「…ルーベンス。」


一心不乱に書類を片付けるルーベンスさんは、僕らに気が付かずしばらく仕事を続けていた。

たまらずお父さんが声を掛けると、ようやく顔を上げてくれた。


ルーベンスさんは若い金色の髪を撫で付けた男の人で、疲れた顔をしていても知的は雰囲気を感じる。

細身だが筋肉質で、背も高そうだ。

剣を立て掛けてあるので、剣士でもあるのかもしれない。


「おっと、失礼いたしました。

夢中でしたので…………。


こんにちは先生、なんだか肌艶がいいですね。

おや?その子は…あぁ、その子がもしかして。」


マジか。

お父さんの年齢は、65歳から35歳くらいに変化した。

勿論見た目も相応に変わっているんだぞ?

昨日コラーゲン一杯摂ったから調子が良くって〜の比じゃない。

大物過ぎるって。


「そう、この子が私とカルで捜索していた子だ。

名をラルフと言う。

身寄りが無いから引き取ろうと思うと話はしたな。

その際、養子の書類を書いてもらったが、事情が変わったので相談もしたい、聞いてもらって良いだろうか。」


僕も続けてラルフですと挨拶をすると、わざわざ立ち上がって丁寧な礼をしてくれた。


「よろしく、ラル…フ君。」


しかし目が合った途端にピタリと動きが止まった。

何か信じられないものを見ている様な表情をしている。


もしかしてタナが見えているのだろうか。


「先生…その子…神様に…。」


あ、違った。

僕でした。

僕が神様似なのにびっくらこいたらしい。


「うむ、私が探していた理由も分かるだろう?

教会騎士の息子のお前なら、この子の容姿が何を巻き起こすかを。」


「はい…。

先生が出世欲に取り憑かれる心配はしていませんがね。

ラルフ君、大変だっただろう。

この家では、そんな心配しなくて良いからね。」


あぁ、この人も聖職者の家系なのか。

お父さんの懸念は大袈裟では無く、信心深い人達が僕を見ると本当に驚くんだね。


『へぇ〜ラルフったらスタルビニア教の神様に似ているのね。

私ったらラルフィード様の像を見ているはずなのに、あんまりピンと来ないけど、ルーベンスとあの人が言うならそうなんでしょうね。』


ねぇ、そうなんでしょうね。

ん?スタルビニア教が宗教の名前なのかな。

そういえば神様本人としかそういう方向の話をしていないから知らなかった。

唯一なる偉大なって意味だったよね?

じゃあ唯一神教、みたいな意味合いなのかな。


「そう言う訳だ。

そして、私の容姿も神の思召し、奇跡で若返った。

このままサシュマとして生きて行っても良いが、ラルフと奇跡がセットになると意味が変わる。


神の奇跡では無く、ラルフの奇跡として見る者が出てくるだろう。


だから私はサシュマの息子、ジェマとして生きて行こうと思う。

そしてラルフはジェマの実子としたい。


出来るか。」


「あ、変な魔法薬を飲んだとかでは無いのですね。


…うーん、先生が王や宰相、あとは先生のお兄さんにでも話を通して頂けるなら、書類上は何とかします。

細かいことは後で相談しますが。」


ノータイムで返答。

出来るのね。

身分の偽造をしてくれって言われて、ちょっと考えて承諾するぐらいには簡単に。


僕が思っているより、お父さんは偉い人なのかもしれないなぁ。


そしてお父さんは家族から謎のやらかし癖があるって認識されているのは間違いないんだなぁ。


誰も驚かないじゃん。

普段何して来たのさ。


「話は分かりましたし、先生が探していた理由も、ラルフ君が他に行き場がない理由も、会って理解出来ました。


そちらは私が何とかしましょう。


しかし…先生に起きた若返りの変化。

神の思召しと言うならばそうなんでしょうけど、それが魔法的な変化だとしたらシーはうるさそうですね。」


『そうねぇ、シーちゃんは魔法マニアだから調べたがりそうねぇ。

ねぇ、ラルフ、本当に神様が若返らせたの?』


うーん、神様の力を貰った僕のせいだから微妙な所なんだけど、神様が雑な処理してお父さんを天界に連れてったせいでこの姿になったそうだから、神様のおかげ…というか神様のせいだね。


作用としては神聖魔法の肉体の活性化が影響しているから、魔法マニアには調べ甲斐がありそうではあるね。


「ふむ、ラルフは異様に魔力が少ないが、異常な程強い魔法を発した事実もあってな。

早めに話しておこうとは思っていたが…。

そうだな、早い方がいいだろうな。


ルーベンス、お前も感じるか?

ラルフの神気とでも言えば良いだろうか、不思議な力を。」


え?なにそれ。

知らないんだけど。


なんかこの世界に来てから、自分の身体のことを自分が一番知らないんだけど。


「えぇ、感じていますよ。

流石に私も顔が神に似ているだけでは、ここまで脅威を感じません。


確かに異常に少ない魔力と別にある、この不思議な魔力。

調べるのは早い方が良いでしょうね。


私としては夕食前に顔を合わせておいて頂けると、面倒が無くて良いんですがね。


はは。」


魔法マニアを前に若返った人と謎の魔力を持った人が現れて、まともな食事になるとは思えないもんね。


っていか、不思議な魔力って何。

怖いんだけど。


「ではルーベンス、また後で改めて話そう。

私はラルフをシーに紹介してこよう。」


ねぇ、不思議な魔力って何。


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