面接
食いつきは、三日で来た。
『アヤさん、はじめまして! 高収入のパーティコンパニオン、興味ないですか?』
アカウントの名は蛭田。プロフィールは爽やかな笑顔の三十代。メッセージの文面は丁寧で、押しつけがましさがない。──手口が上手い。十四人がこれに乗ったのだと思うと、丁寧な絵文字の一つ一つが不快だった。
面接は、西麻布の会員制ラウンジで行われた。
現れた蛭田は、写真より十歳老けていた。名刺には『イベントプロモーション オフィス・グレース』。蛭田は俺を席に案内しながら、視線だけで別の作業をしていた。顔、胸元、腰、脚。上から下まで、家畜市場の目つきだった。値踏みの視線というものは、秘書もアイドルも関係なく、万国共通でこういう動きをするらしい。肌が粟立ったが、無表情の設定が俺を救った。
「いやあ、アヤさん、写真より全然いい。写真、盛ってないでしょ。今どき珍しい」
「……どうも」
「クールだねえ。いいよ、そういうの需要ある」
需要。人間に使う言葉ではない。
時給の説明は簡潔で、法外だった。パーティに同席して酌をするだけで一晩五万。「もっと頑張れる子」は十万。頑張るの中身は説明されなかった。説明しないことが説明だった。
「あ、そうだ。プロフィール用に写真撮らせて。立って、そこの壁の前」
スマホを構えた蛭田が、こともなげに言った。
「もうちょっと、こう……胸張って。スカート、片手でちょっと持ち上げてみようか。膝上まででいいから」
来たか。俺は無表情のまま、三秒だけ蛭田を見た。三十四年、取調室で容疑者を落としてきた目だ。蛭田の喉が、ひくりと動いた。
「……なんてね! 冗談冗談、顔だけでいいや、顔だけで」
シャッター音が一度鳴って、面接は終わった。帰り際、蛭田は上機嫌で言った。
「アヤさん、今度の金曜、デビューね。VIPのお客さんが集まるパーティがあるから」
デビュー。その言葉に、別の会社の別の男の顔が重なった気がしたが、気のせいだろう。どの業界も、女を商品にする男の語彙は貧しいのだ。
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