入学式からの変化
次の日、アリアンヌは鼻歌を歌い意気揚々と支度をしていた。
「お嬢様、今日はご機嫌ですね。」
そう声をかけたのはアリアンヌ専属侍女のランだ。
「そうなの!昨日はクラスメイトから怖がられていたみたいだけど、お母様のアドバイスを実行して、今日こそは友達をゲットできるのではないかと思って嬉しいの!」
「左様でございますか!私もお嬢様がお友達になれる相手に出会えることを願っておりますね。」
そんな話をしていると身支度が終了し、アリアンヌは馬車で学園へと向かった。
馬車が到着し、アリアンヌは優雅な仕草で一歩外へ出た。
その姿はまるで天使が舞い降りたかのように美しく、優しいオーラが出ていた。
そしてその瞬間、周囲は静寂に包まれた。
先ほどまで、話し声や足音などで音が溢れかえっていたのにも関わらずだ…
( やはり、怖がられているのだわ…)
アリアンヌは内心ショックを受けつつも、母のアドバイスを実行するため気持ちを切り替えた。
教室へ向かうため、廊下を歩いていたら、ある女子生徒がハンカチを落としていた。
(あら、ハンカチを落とさせれたわ。これはお母様がおっしゃっていた気遣いさをアピールするチャンス!)
アリアンヌは、そのハンカチを拾い、持ち主に声をかけた。
「そこのあなた。ハンカチを落としましたよ。」
落とし主である女子生徒は、振り返ると少しの間固まってしまった。
「ひっ!……あっ、あっ、ありがとうございます。」
そう言うと、彼女はお辞儀をし、足早に去っていった。
(あぁ…また、怖がられてしまったかしら?無事にハンカチを渡せたのは良かったけれど…)
(誰かと仲良くできるまでの道はかなり険しそうね…)
少しの間、アリアンヌはその女子生徒の後ろ姿を見つめ、教室へと歩みを再開させた。
教室へ入ると一瞬静寂になったものの、少し慣れたのか皆普通に動き出した。
アリアンヌは早速、お母様のアドバイス通り一人一人の名前を呼んで挨拶することにした。
「ハンライ伯爵令嬢、御機嫌よう」
最初は、扉近くで荷物を片付けていた令嬢に声をかけた。
「⋯ランイニ公爵令嬢、御機嫌よう。急いでおりますので失礼します。」
そう言うと、頭を深く下げ、足早に教室から出て行った。
その後も個人の名前を呼んで挨拶をしていたが、皆予定があるや、体調が悪いなどと言って一言挨拶を済ませると逃げていった。
(はぁ〜私そんなに怖いかしら?これでもキレたことは今まで一度もないし、優しそうな微笑みを忘れないように心がけているつもりなのだけど…)
(まぁ、挨拶を返してくれるだけ良かったとしよう。うん。そうしよう。)
アリアンヌは落ち込みはしたものの、挨拶を無視されるよりはマシだと思い込むことにした。
その後も、道に迷っている人を案内したり、教科書を忘れたと話してる人に予備の教科書を貸したりなどなど、いつもより周りを見て気を使うように立ち回っていた。
それから、1カ月は同じように周りを見て挨拶をしたり、困っている人を助けたりしていた。
たが、以前同様に怖がっている雰囲気は変わらず、アリアンヌに自分から話しかける人はいなかった。
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そんなある日。
アリアンヌはいつも通り教室に向かうため、廊下を歩いていた。
そこへ一人の令嬢が、挨拶をしてきた。
「⋯ランイニ公爵令嬢、御機嫌よう。あの…もしよろしければ、一緒に教室までいきませんか?」
彼女は、少し自信なさげにアリアンヌへ訪ねた。
「⋯ハンライ伯爵令嬢、御機嫌よう。ぜひ、一緒に行きましょう!」
アリアンヌは、人から話しかけてもらったことへの衝撃と嬉しさのあまり一瞬驚いて目を見開いたが、すぐに元の顔へと戻り、教室まで一瞬に行くことにした。
二人は、ぎこちないながらも学園での生活や授業の話などをすることができた。
その後も時々話すようになり、それから1週間後。
ナターリア(ハンライ伯爵令嬢)は緊張した面持ちでアリアンヌに話しかけた。
「アリアンヌ様、私お話しておきたいことがございまして…
今日の放課後時間があらばお話させていただきたいのですがいかがでしょうか?」
アリアンヌは、ナターリアの表情から今は言えないことなのではと判断し、放課後に会うことを了承した。
それから二人はいつも通り授業を受け、放課後になって裏庭に移動し、ベンチへ座った。
「アリアンヌ様、お時間いただきありがとうございます。
実は…アリアンヌ様に謝らなければと思い時間を頂戴しました。」
「えっ…ナターリア様が私に謝ること?そんな事ありましたっけ?」
アリアンヌは、ナターリアの突然の告白に驚きを隠せなかった。
ナターリアは、アリアンヌの言葉に頷き、出会った頃からの事を話し始めた。
ナターリア曰く、最初は睨まれるのではと怖かったが、名前を呼んで挨拶をしてくれたり、他の困っている人を助けている姿を見て、噂と違う人なのではと思ったとのこと。そして、そんな噂に翻弄されずに頑張っている姿を見て、是非一度きちんと話して自分の目で確かめてみたかったと明かした。
そう思ったからこそ、勇気を持ってアリアンヌに話しかけたらしい。結果的に話してみて、優しいアリアンヌともっと仲良くしたいと思ったらしい。
そして、最初に色眼鏡で見て噂を信じて行動してしまったことを恥じ、アリアンヌに謝った。
その上で、彼女は友達になってくれないかとお願いした。
「ナターリア様、まず謝罪はする必要ございません。」
ナターリアは、謝罪を受け入れてもらえなかったのかと思い、俯いてしまった。
「だって私、謝られるような事されていませんもの。私はそれ以上にナターリア様が話しかけてくださって、他愛もない会話ができることがとても嬉しかったですわ。
だから、私はあなたに感謝はすれども謝られる筋合いはございません。」
アリアンヌはナターリアの目を見て話した。
「ですので是非、私とお友達になって欲しいわ。
そうね、手始めにナターリア…いえ、リアと呼んでもいいかしら?
私のことはアリーと呼んで!敬語も不要よ。」
ナターリアは、目を輝かせて答えた。
「はい!ぜひリアと呼んでくださいませ。…いえ、リアと呼んで!アリー」
そう言うと、二人はお互いを見合って嬉しそうに微笑んだ。
それからというもの、アリアンヌの日々は以前に増して色鮮やかな日々となった。
休み時間や昼休みは基本的にナターリアと過ごすようになり、王太子妃敎育がない週に1度の放課後には一緒に出かけるなど楽しい日々を過ごしていた。




