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薔薇の名前  作者: 菖蒲
23/26

再び





「・・・当然の感情だ。すまなかった、フェイ」


ハロルドは少し頭を下げてから、またフェリシティを見つめた。


「フェイがどう思っているか、なにを考えているのか・・・聞こうとしなかった。お前の幸せを考えて、私が勝手に判断していた」

「私・・・グレースの事を考えて、お祖父様の所に来ました。私は貧しくてもグレースと2人で満足でした。でも、それではグレースに苦労をかけてしまう・・・だからお祖父様にお世話になろうと決めました」

「そうか」

「私も、お祖父様と同じです。グレースはどうしたいのか聞かずにここまで来たんです。みんな相手の事を考えていたのに、相手の気持ちを考えてなかった・・・。だから、私はお祖父様とお話したいのです」

「フェイは強いな・・・私は聞きたくないと耳を傾けもしなかったと言うのに・・・自分の都合の良い方に考えて、それが許される立場というのもあって逃げていた。お前が向き合うというのなら、私も歩み寄ろう」

「ありがとうございます、お祖父様」

「フェイが話したいというのは、ウェスト伯爵の事か」

「その通りです。私とセオ様との間にあったお話です」


それからフェリシティはカインとの出会いから、先ほど記憶を取り戻したらしいセオドアの話をした。


「セオドア様にはなんと言われるかわかりませんが、それでもまだ離れる事はできないのです。どうか、まだ婚約は継続させてください」


フェリシティの話を最後まで聞いていたハロルドは、しばらく黙って何事か考えている様だった。フェリシティはその間息を詰めじっと待った。


「・・・そうか。もう私はこの婚約について口は出さない。フェイの思うようにやりなさい」

「ありがとうございます、お祖父様・・・」


ハロルドの言葉にフェイは安堵するように、ゆっくり息を吐き出した。


(これで、誠心誠意、セオ様と向き合える)


その後フェリシティは部屋に戻るなり、セオドアに手紙をしたためた。






◆◆◆◆◆






先日はセオ様を苦しめてしまい、申し訳ございません。私の自己満足ですが、セオ様に償いがしたいのです。私にできる事があれば、なんでも仰ってください。

罵りたいなら、いくらでも。

痛めつけたいなら、いくらでも。

貴方にとって、なにが最善かを探したいと思います。

姿を見せるなと言うことであれば、お返事をいただくまでは社交界には出ません。

婚約を破棄したいと言うことであれば、そのように進めます。

貴方の御心のままに。




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