夢の中2
昨日投稿できなかったので、今日もう1話いけるかな・・・
セオドアはカインの部屋の前で佇んでいた。中からは小さな物音がしている。
しばらくしてゆっくり扉が開き、カインが出てきた。
「っ!・・・セオか、ビックリした。どうしたの?」
「植物園ですか?」
「え、は・・・なんで分かったの?」
「なんとなくです」
以前、家族で行った植物園から帰宅した日、カインはまた寝込んだ。元気になったと思い、はしゃぎ過ぎたのかもしれないが、それからしばらく両親から外出禁止を言い渡されていた。医師の見立てでは、まだしばらくは療養した方がいいだろうとの事だった。それから外出していないはずだが、週に何度かベッドの上から動けない日があった。動いている訳でもないのに、なぜ?と怪しんで部屋の前で見張っていたのだ。植物園だと思ったのは、それ以外に行った事のある場所がないからだったが、どうやら当たっていたらしい。
「お医者様からは、外に出てはいけないと言われていました」
「んー・・・そうなんだけど。大事な用なんだ。すぐ戻るよ」
「ダメです」
「・・・心配かけてるのは分かる。でも、この用事は本当に大事なんだ。ここで行かないと、僕はすごく後悔する」
「・・・その大事な用事は、僕よりも大事な事ですか?」
「セオ、それはズルいよ」
「僕が止めても行くって言うなら、僕よりも大事な用事なんですね・・・」
「セオも言うようになったなぁ」
カインはそう言って、誤魔化すようにセオドアの頭を撫でた。小さいカインはセオドアと同じくらいの背丈しかないので、どうにも腕を上げていられずすぐに手を下ろした。
「行きたいんだ、どうしても」
カインの真剣な顔の中で、綺麗な青い瞳が懇願していた。
「セオ、お願いだよ」
「〜〜〜っ。・・・わかりました。僕も一緒に行きます」
「よし、一緒に行こう」
いくら止めてもこっそり出て行くつもりだと思ったから、それならむしろ側で見守った方がセオドアも安心できる。カインは準備万端だったので、セオドアも急いで着替えて馬車に飛び乗った。
◆◆◆◆◆
王立植物園のローズ・ガーデンの東屋からは、薔薇のトンネルの奥にポツンと置かれたベンチが見えていた。そのベンチに座るのはカインと、いつか見たお人形の様な綺麗な子。セオドアの知らない間に、カインは仲良くなったようだ。
彼女が来るまでカインは1人ベンチに座っていたが、ベンチには屋根がなく暖かい日差しがカインを蝕んでいくのではと心配でならなかった。然もカインは少し苦しそうに見えた。だが彼女が来た途端、カインは笑顔を見せて話し始めた。
(ーーーああ。兄さんは、彼女が好きなんだ)
思わず握りしめた拳は、どんな意味があったんだろう。
◆◆◆◆◆
それからも、度々カインは植物園に行った。もちろん、セオドアも一緒に。彼女と会話するのはほんの数分。きっと体調の事もあって、数分しか話せないのだろう。苦しそうなカインは、彼女が来ると決まって笑顔になる。今まで見た事がないほど楽しそうにしているカインに、セオドアは何も言えなかった。たとえ彼女に会った後に、カインがしばらく高熱を出そうとも。彼女との邂逅が、苦しい時の慰めになっているとわかったから。最初はあまり笑わなかった彼女も、段々と笑顔を見せるようになった。その笑顔を遠めに見ていると、なぜかイライラとして目を背けてしまう。なににイラついているのかわからないまましばらくして、兄さんがベッドから出られない日が続いた。
「・・・はぁ・・・はぁっ・・・セオ、お願いだ・・・」
「・・・兄さん、今日ばっかりは無理だよ」
ベッドに横たわるカインは苦しそうな息を吐き、色白の肌は熱のためか赤みを帯びている。セオドアが熱い額をひと撫でし、カインに首を振る。
「でも、・・・きっと今日、フィーは来る・・・」
「・・・」
「僕・・・行かなかったら、・・・心配・・・かける・・・」
いつもと違ってぼんやりした青い瞳が潤んでいる。大きくため息を吐いたセオドアは、口を開いた。
「・・・分かったよ。僕が『今日はカインは来られない』って言ってくればいい?」
「・・・ダメ・・・。・・・僕・・・ぼく・・・セオって・・・」
「兄さん?ごめん、なんて言ったの?」
「・・・ぼく・・・・・・セオだ・・・言った・・・」
「え?彼女に『セオ』って名乗ったの?!なんでそんな事・・・」
「・・・」
カインはそのまま気を失う様に眠ってしまい、真相は聞けないままとなってしまった。




