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薔薇の名前  作者: 菖蒲
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約束

今回は短いです。




セオドアはその日、緊張した面持ちで王立植物園の前に立っていた。果たして、フェリシティは来てくれるのか。手紙の返事はあれからも来ていない。キャンベル家のタウンハウスに行っても、門前払いだった。フェリシティが来てくれる可能性は限りなく低いように思われた。


約束していた14時を過ぎ、やがて霧が出てきた。それまで目の前の通りを行き交っていた馬車や人も、まばらになってきた。フェリシティは来なかった。その事にショックを受けながら、これがフェリシティの気持ちなんだと自分を納得させようとする。でも、もしかしたらと、諦められない自分もいた。

その時、わずかに馬車の走る音がした。音は段々と近づいてくるようだ。


(もしかしたらーーー)


じっと音のする方を見つめていると、馬車の止まる音がして、軽い足音が霧のせいか近くに感じられた。

果たして、その足跡の主は・・・


「フェイ・・・」

「・・・セオっ、様・・・」


公爵令嬢としてははしたないかもしれないが、フェリシティは馬車から走ってきたようで、荒い息を一生懸命に整えている。セオドアはその事が無性に嬉しく、表情が緩むのを感じていた。


「この霧の中、走ってきてくれたんですね」

「・・・約束の、時間を・・・大幅に・・・遅れてしまって・・・・・・、本当に、申し訳ございません」

「いいえ。会えただけで、とても嬉しいので」


その言葉に顔を上げたフェリシティは、頬を染めてすぐに俯いた。セオドアが本当に幸せそうに微笑んでいて、こちらまで恥ずかしくなるくらいに嬉しそうで、何故か見つめていられなかった。こんな顔を見せられたら、誰だって簡単に勘違いしてしまうだろう。


「ローズ・ガーデンの東屋で少しお話ししませんか?」


セオドアの言葉にフェリシティも頷き、2人はゆっくり歩き出した。




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