表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/104

94、南部地方その2

 

 

「じゃあ、またなー」


 大きく手を振る大楯マッチョたちに手を振り返しながら騎獣を進める。

 五日間に渡って行われた、乾季の蟻渡りと呼ばれる討伐イベントは問題なく終わり。その翌日、オレたちは再び西へと向かって出発。


「やー、予想通り面白かったね」


 と言うヒカリに限らず、他の嫁たちも十分に楽しんだようで随分とご機嫌な様子。

 そんな嫁たちだが、村に入る前とは大きく違うところがある。


「また来ましょうね」

「お、おう、そうだね」


 それが、今日のパートナーであるディアへの返答が少し挙動不審になっている原因、服装の変化だ。

 と言うのも、オレも含めて全員が薄着になったうえに、今までと違ってマントをしておらず。特に嫁たちは膝下で絞ったダボダボパンツやハーフパンツにヘソ出しタンクトップやキャミソール、そしてお揃いの編み上げサンダルという格好。その中でも双子ドワーフは短パンにショートチューブトップとダツトツの露出度を誇っており、騎獣の上で支えるためにお腹に回したオレの左手が直接柔肌に触れているのが妙に気まずい。

 今までに散々見たり触ったりしているわけだし、今さら外で素肌に触ったくらいで平静を失うのもどうかとは思うのだが、落ち着かないものは落ち着かない。


(まぁ、すぐに慣れるとは思うんだけど。それでもなんと言うか、すべすべぷにぷにで触り心地が……)


 と、そんな感じでオレだけが集中を欠く中、いつも通りの嫁たちの先導により大楯マッチョたちが見えなくなったあたりから徐々に速度を上げて駆けて行く。

 

 

ーーーーーー

 

 

「へー、思ってた以上に賑わってるな」


 広大な果樹園を抜け、いくつもの似たような集落を横目に過ぎ行き、徒歩で五日ほどかかるという距離を数時間で駆け抜けた結果、昼を迎える前に海沿いの都市へとたどり着いた。


「はい、ずいぶん活気がありますねー」


 入市待ちの列の中、ディアが目の上に手をかざして騎獣の上で伸び上がるので、慌てて抱き寄せて支える。この数時間でどうにか慣れたので、今は落ち着いて実行できた。

 と、それはともかく、メアリの物語知識や村で滞在中に聞いた話では、南部地方は大まかに逆三角形をしている。その中を北から南にYの字を描いて大河が流れ、その流れと共に外周に無数にある支流が果実などの作物の輸送に活用されているそうだ。


「……莫大な流域面積と豊富な水量を誇る河川による輸送網。素晴らしいです」


 果物を満載した荷馬車が並ぶ街道、その横の川をこれまた果物を満載した小舟が下って行く。それを目で追ったリリィが手放しで褒める南部地方商業都市、その一つがここホウグアンである。

 南部地方はホウグアン、ヘグルドゥ、フートロワ、ヒルカトル、ハンサンクの五つの港湾都市の同盟によって統治されている。そして、その五つの都市以外は、南部地方の特産品である果物などの作物を作る集落がほとんどのようだ。


「港町なだけあってウルーク王国のカルノーに雰囲気が似ていますね」


 騎獣を降りて問題なく都市へと入り、緩やかに広がる川に沿って伸びるずらりと倉庫が並ぶ道を歩いていると、そんなことを言うアリス。

 港町カルノーを初めて訪れたのは、この世界に来て間もない頃。もう五年近く前になるが、あの時はまだアリスと二人きりだったのだ。


(ずいぶん遠くへ来たもんだ)


 それは物理的な距離だけではない。オレを取り巻く状況もまた、当時とは天と地ほどの差がある。

 そんなことを考えていると、ふとアリスと目があった。おそらく、同じようなことを考えていたのだろう。


「もう、アリスと見つめあっちゃって。何を分かり合ったんです?」


 オレの頬をつまむフェリ。


「ははは、ごめんごめん。カルノーに初めて行ったのは、もう五年も前になるんだなぁってね」

「ふ〜〜ん、まあいいでしょう、許します」


 許すと言いつつ頬をつまむのを止めないのは何故なのか。

 ……まぁそれはともかく、確かに川を挟んで両側に広がる港町という共通点もあって、カルノーと似た雰囲気はあるが、似ているのはそのくらいだろう。向こうは片側に結構な傾斜がある地形だったがこちらは平野だったり、向こうにあった両岸を結ぶ橋がなくて渡し船だったりするし、分かれ道の先に見える街並みは雑然とした雰囲気が漂っているし、なによりも街の規模がはるかに大きい。


「あ、大きな船が見えてきましたよ♪」

 

 と、隣を歩くディアが指差す先、緩やかに曲がる道に並ぶ倉庫の陰から、何本もの帆柱が姿を現した。


「さすが、大型船の数も多いねー」


 それまでも小型の船はあったが、河口の半ばから十分な深さがあるのだろう、その辺りから急に大型の船が数を増やしている。


(まぁ、大型と言ってもたかが知れてるんだけどね)


 この世界では、船で沖合いに出ることはない。なぜならば、沖合いは陸地とは比べ物にならないほど危険な魔物に満ちているからだ。

 これもまた主な情報源はメアリになるのだが、過去に何度も沖に出ようとしたことはあったらしい。しかし、時に船ごと巨大な魔物にひと呑みにされたり、時に無数の触手に絡みつかれて海中に引きずり込まれたり、そういった挫折の積み重ねにより今では試みられることすら稀になっているようだ。

 そんな事情により海路は沿岸部に限定され、船はあまり大型化していないのである。

 そんなことを考えてながら船を眺めて歩いていると。


「アキラさん、今から楽しみですね」


 と、つまんでいたオレの頬を引っ張って目をあわせてくるフェリ。

 目があった経緯はともかく、フェリもまた同じようなことを考えていたようなので。


「ああ、そうだね」


 と微笑み答えると、にっこり笑ってようやく頰を解放してくれた。どうやら、アリスとのことを羨んでいたようだ。


(まぁ、今さらつままれたくらいじゃ痛くないし、フェリもそれは分かってるだろうけどね)


 それはともかく、何が今から楽しみなのか。それが、改めて海の魔物や船などの情報を集め始めたきっかけでもあるのだが。


(使い魔を放ってから三日もかからなかったんだよなぁ)


 あっさりしすぎて逆にびっくりしたぐらいなのだが、そう、新大陸が見つかったのだ。

 そして、新大陸とは言ったが、他にも大小様々な島も発見されており、これがジャングルの半ばから進路を西へと変更した理由でもある。

 ようは、新大陸を目指す前に、この南部地方を効率よく回るための進路変更であり。南部地方の都市を巡って半周したあと、オレたちの旅はいよいよ海へと乗り出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ