79、革命・中休み
「賑やかだねー」
革命のために色々やっていたらあっという間に月日は流れて冬になり、新年節を迎えた。
この世界では、十二月と一月の間に新年節というお祭り期間があり、五日から六日の間、人々は閉ざされた冬を忘れ、新年を祝い踊り騒ぐ。
「ウルーク王国の王都に引けを取らない賑わいですね♪」
オレの左腕をとるアリスが楽しそうにキョロキョロしている。
本来なら、地方都市であるここラストンがこれほど賑わうことはない。しかし、秋から冬にかけて、オレが食料支援をしなかった都市などから革命軍を頼って人々が流れて来たため、元の二倍以上の人口になっているのだ。これによって人が流出した都市などは、その力を落としているはずである。
ちなみに、故郷を離れるという選択を出来なかった人たちには個別に食料を届けているので、そちらも飢えることはない。
「こんなに陽気に騒げるのも、アキラさんのおかげですけどね」
と、こちらはオレの右腕をとるフェリ。
「あ、あはは。ま、まあね」
二倍にまで膨れ上がった市民をどう養っているかと言うと、答えは簡単、シェルター内の食料製造区画から放出したのだ。がしかし、これはオレがいろいろ見誤った結果でもある。
もともと食料製造区画から放出することは決まっていたが、ラストン以外の都市などへの食料支援分のみの予定だったのだ。だというのに、オレの想定以上の人が流れ込み、自給と復活させた交易だけでは足らなくなり、オレが補うことで革命軍に貸しを作ってしまった。
いつものように裏方に徹するつもりだったオレとしては、甚だ不本意である。
そんな話をしているオレたちのすぐ後ろには。
「「新年節のお祭り、すごく久しぶりです」」
「そっか、じゃあその分余計に楽しまないとね」
「「うん、ヒカリお姉ちゃん」」
ヒカリを中心に手を繋いだ双子が続き。
「なんとか、また新年節を迎えられたわね」
「ふふ、危ない事もありましたが、充実した一年でしたよ?」
「「にゃー」」
カーラとリリィが最後尾をのんびりとついて来て、精霊ズはオレと双子の頭上に分散してこちらもキョロキョロと周囲を珍しそうに見ている。
雪深い冬は交易も難しく、積もってからは全員ラストンで過ごしており、今日は祭の賑やかな雰囲気に誘われて街に繰り出してみた。
街の浮かれっぷりには、王国軍との本格的な衝突が迫る緊張の裏返しもあるのではと感じる。
(去年は王都ウルークスに居たんだっけ)
あれから一年。ヒカリ、ヴィナ、ディアと仲間も増え、チートがあるとは言え、危険の多いこの世界で誰一人欠けることなく新年を迎えられるのだから、上々の一年だったと言って良いだろう。
(まぁ、誰か一人でも欠けたら、正気でいる自信はないけどね)
嫁たちは、オレに力をくれる存在であると同時に弱点でもある。オレ自身の精神の安定のためにも、全力で守らなければならない。
アキラ・サトウ、新年の抱負である。
ーーーーーー
「完成だ」
さらに時は流れ。
気温が上がり、そろそろ雪が融け始める頃、とある物の開発が完了した。
「「とりあえず、現時点での全力です」」
これの開発には、双子の協力が必要不可欠であった。学習能力上昇のアビリティを活かして、異世界出版機で作った本で知識を学び、そして高めてもらった鍛治技術である。さすがドワーフと言うべきか、無事に鍛治スキルも取得し、すでにそのスキルレベルは20に達している。
ジャバウォックを倒した時のオレの剣術レベルが20だったので、おそらく一流の鍛治師に鍛治スキルを設定すればそのくらいになるのではないかと思う。
「わぁ! カッコいいです!」
「うん、悪くないわね」
場所はラストン城内の鍛治工房。最近入り浸っているオレと双子に合わせて、他の嫁たちもそれぞれ何かやりながら工房に居たりする。
そしてその完成品なのだが、にこにこ笑いながら見ている他の嫁たちは若干興味が薄そうだが、フェリとカーラの評価は高い。
そこで自信満々に。
「これこそが魔道具を組み込むことで様々な機能を持たせた革新的戦術甲冑、その名もモンスターだ!」
その全身鎧の説明をすると、一拍置いて響く破裂音。
「……痛いじゃないか」
実際には全く痛くはないのだが、ついついそう言ってしまう。
「アキラくん、悪ふざけし過ぎじゃない?」
振り返るとそこに居るのは、アイテムボックスにハリセンをしまうヒカリ。やはり、ヒカリには分かってしまったようだ。そして、そのヒカリの行動によってオレが何らかの悪ふざけをしていると知り、他の嫁たちもまたジト目を向けてくる。
(ぐぬぬ)
それにしても、アイテムボックスにしまったということは、召喚魔法を応用して作った即席の物ではないらしい。それを使う事態を予め想定していたとでも言うのだろうか。……解せぬ。
「むう、命名で少し悪ノリしたことは認めるけど、物は間違いないよ」
下手な言い訳は首を絞めることになりそうなので、素直にその鎧の有用性を説く。
「これはミスリルがふんだんに使われたアーサー専用装備で、王に相応しい優美さを持ちながら、内部に絶妙な配置で同期された魔道具により、身体能力強化(弱)と斥力場による攻撃の無効化という機能が付与された優れものなのだ!」
「「えっへん!」」
「「おお〜」」
オレの勢いと横で胸を張る双子のおかげか、素直にノってくれる嫁たち。
戦場で誰が新しい王になるのかを知らしめ、その活躍を目立たせる必要があり。さらに、目立つことで集中する攻撃に対処するために必要だと判断して作った。
サイズ的に自力では十分な機能を付与することが出来ないと諦めた剣はともかく、鎧の方には後の世で問題にならない様に《創造》は使っていない。……まぁ、材料のミスリルの入手は《創造》に頼ってしまったのだが、それ以外では手に入らないというようなものでもないし、鎧を作る中で革命後の産業に役立ちそうな技術も開発されたので良しとしよう。
「じゃあ、ちょっとアーサー誘って試しに行こうか」
「「おー!」」
ーーーーーー
「アニキ! これ凄いっス!」
そしてやって来たのはオークの集落。場所は精霊ズが特定しておいてくれた。
一年以上前に、ネシアス帝国の大規模な作戦で国内の多くの魔物が追い出されたのだが、精霊ズによると、すでに国内の至る所に魔物が生息しているらしい。戻って来たのか、新たに流れて来たのかは分からないが、革命後の治安維持に関しても何か考えておくべきだろうか。
それはともかく。
「おう。そうだろうそうだろう」
オレの目の前では、高速で動き回るアーサーによってみるみるうちにオークが討伐されている。
身体能力強化(弱)は鎧の重さを感じなくなる程度だが、元々アーサーが身につけている身体能力強化の邪魔をしたりせず、きちんと上乗せされているようだ。
「けっこう速いですね」
双子のデザインセンスにより、全身鎧でありながら動きを妨げることもなく、軽快な動きが出来ている。アリスが感心し、フェリ、カーラ、リリィ、ヒカリもうんうんと頷いているのだから、なかなかのものだろう。
「この技術は、他にも応用できそうですね」
と、時々アーサーを援護する魔法を放ちながら、自分が手がけた魔道具の部分に関して考察するグィネ。
想定していた用途ではないのだが、アーサーの体当たりで大きく弾き飛ばされるオークを見る限り、斥力場も問題無く展開されている。
「「あれを、私たちが作ったんですね」」
やはりドワーフという種族的に物作りに思う所があるのか、感慨深そうに眺める双子。今後も何か作る際には、積極的に頼ろうと思う。
(……うん、鎧の機能も問題無い)
本格的な衝突が迫り、ピリピリしていた本部からアーサーを連れ出せたのは良い気分転換にもなっただろうし、作った甲斐があったというものだ。
(集まった兵の訓練とかはオレの仕事じゃないし、オレが出来る革命の準備は終わりかな?)
考えつくことは全てやったつもりだが、所詮は凡人の浅はかな考えに過ぎない。いざとなれば、いつものようにチートで力押しする所存。
革新的戦術甲冑【Progressive Tactical Armor】→P.T.A=モンスター
ちょっとした悪ふざけで深い意味はございません。




