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76、革命始め

 

 

「どうだった?」


 城を出ると、適当な建物の屋上にシェルターを設置。しばらく待って、帰ってきた嫁たちから報告を受ける。


「……商人登録は問題ありませんでした」


 と答えるリリィは、とても楽しそうな様子。未練はないと言ってはいたが、やはりあきないに関われるのが嬉しいのだろう。

 ちなみに、本人の希望により奴隷のままだが、契約をやり直して首にあった奴隷を示す青い線を消し、カードも本人が出せるようにしてある。

 そして。


「食料から布生地や鉄や銅などの工業の原材料まで、ほぼ満遍なく不足しつつあるようです」


 フェリ、カーラ、ヒカリと共に市場や商店を回り、そこで得た情報をまとめて教えてくれたのはアリス。こちらは少し不機嫌である。どうやら、オレと別行動が多くなりそうで、それが気に入らないらしい。


(まぁ、ふくれっ面も可愛いんだけど)


 そんなことを思いながら、オレの左側にぴったりくっ付いているアリスの頭を撫でてご機嫌をとる。

 それはともかく。

 木材などの近場で手に入る物は大丈夫なようだが、そもそもネシアス帝国は食料自給率が低い上に、ここ数年不作が続いているらしく、流通が滞っている現在、解放都市ラストンの食料事情はかなり逼迫しているようだ。


(不作、か。そりゃウルーク王国に手を出そうとするのも仕方ないかな?)


 平地が少なく農業の生産性が低いという話なので、魔の森の恩恵を受ける広大な麦畑は、さぞかし魅力的に映ることだろう。


(にしても、ついつい疑っちゃうよね)


 これまでの行い的にもタイミング的にも、不作が続く原因がソーグノ教にあるのでは、と思ってしまうのもまた仕方ないことだろう。

 と言っても、もう真実を知るのは難しい。オレに出来るのは、アーサーが王になった後のために、食料問題の解決方法を考えることくらいか。


「では、行動は予定通りだね」

「むう、仕方ありません」


 オレの発言で、少し持ち直していたアリスが再び不機嫌そうになる。が、今回はオレのワガママを通させてもらおう。


「じゃあ、ちょっと行ってきます」


 と、一人で外に出ると、シェルターをアイテムボックスに収納。


(よし! 気合い入れますか)


 そして、『光速行動』を発動。自分以外の全てが動きを止める中、魔力で足場を作り、動く先の空気をかき分け駆ける。

 周囲に影響を与えず、刹那に超長距離を駆けることが出来る。それは、オレ以外にとっ(以下略)

 

 

ーーーーーー

 

 

「本当にあっという間ですね」


 再びシェルターを設置して念話で呼びかけると、出て来たアリスが開口一番に呆れたように呟く。


「まだまだ改良の余地はあるけどね」


 現在地は、タオロン王国の王都デューロン。

 ラストンからここまで、アリスたち第三者的には一瞬の出来事。しかしオレの体感的には、距離相応の長い時間を駆けてここまで来た。オレの体感時間を減らすためにも、『光速行動』に支障のない良い感じの『思考速度上昇』具合を見極めたいところだ。


「おお、やっぱりアキラさんは凄いです♪」

「やれやれ、相変わらずですね」

「……さすがご主人様です」

「むむ、羨ましくなんかないんだからね!」


 フェリ、カーラ、リリィ、ヒカリ、とアリスに続いてそれぞれの感想を述べてくれるが、さすがにもうオレのやる事には慣れた感じだ。

 対して。


「「……ほ、本当に?」」


 仲間になって間もない双子は茫然としている。

 何をするのか聞かされていてもなお、実際に目の当たりにすると驚かずにはいられないようだ。


(まぁ、すぐに慣れるんだろうけどね)


 驚かれ過ぎても困るが、まったく驚いてくれないのも少し寂しい。

 なんて思っていると。


「ほら、リリィ。チャンスよ」

「え? 私が言って良いんですか?」

「もちのロンよ」


 ヒカリとリリィが何事か話し合い。


「……コホン。ヴィナ、ディア、ご主人様はこんな非常識なことばかりなさいます。あまり気にしないことです」


 妙に嬉しそうなリリィにサラッとディスられ、それを聞いた双子以外の嫁たちは当然とばかりにうんうんと頷いている。


(ぐぬぬ。これはアレだね、今夜は激しくして下さいというサインだね!)


 軽く仲間外れ感を味わったので、今夜はより仲良くなれるように努力することにした。

 それはともかく。


「ほらほらみんな、行動開始だよ」


 そこまで余裕が無い訳ではないが、今回は急ぐべきだろう。


「……では、行ってまいります」

「うん、よろしくね」


 リリィが向かうのは、リリィがお世話になったというマダムの所。

 バターやチーズ、ハムやウインナーなど、食品の状態を維持する生活魔法があった影響か、この世界には存在しなかった加工食品。それらの製法と当座の現物提供を条件に、解放都市ラストンへとキャラバンを派遣してもらう予定。上手く利益が出れば、その後も続けてくれるのではないかと期待している。

 また、キャラバン派遣の如何を問わず、リリィには馬車で交易してもらう。


(まぁ、運が良かったよね)


 比較的近い所に、力を借りれそうな人が居たこともそうだが。リリィがお世話になった人ということで、お嬢様を処理した後に何となくその時使っていた『使い魔』をくっ付けてあったため、『使い魔」の魔力を目標に『光速行動』で真っ直ぐここまで来れた。

 何が幸いするか分からないので、この機会に他の知り合いの所にも『使い魔』を派遣しておくことにしよう。


「じゃあ、オレたちも行こうか」

「「はーい」」


 そして、残り全員で手分けしてラストンがひと息つける量の物資を仕入れ、オレと双子はそれを持ってとんぼ返り。アリス、フェリ、カーラ、ヒカリはリリィと合流して護衛についてもらう。

 これが革命の第一段階。まずは戦うための体制作りだ。

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