69、帰還
「はい、到着」
不慣れな二人がいるため飛ばして帰る訳にもいかず、シェルターに着いたのは東の空が明るくなる頃だった。
「「……」」
地面に降り立ち、抱えていた双子を解放するが、おぶさっているアリスも含めて反応が無い。
「おーい、着いたよ」
「「あ……、すいません」」
ぽんぽんと背中を叩くと、ようやく双子は慌てたように離れてくれた。空を飛ぶという初めての経験がよほど怖かったらしい。
(ふむ、無い訳ではないと)
何がとは言わないが、力一杯しがみ付いてくれていたため、フェリと同じくらいはありそうな柔らかい感触がお腹の辺りに残っている。
「ほら、アリスも」
「むにゃ……、はっ!」
眠っていたアリスも、顔を真っ赤にしながら慌ててオレの背中から下りた。
(まぁ、悪い気はしない)
本来なら、レベルアップで高まったステータスによって、三日くらい徹夜しても何の問題も無い。つまり、苦手な空に居ても、オレの背中の上なら眠れるくらい安心出来るということなのだろう。
今回、アリスの珍しい姿を連続して見た気がする。
「むう」
「あはは、ごめんごめん」
ニヤニヤしていたのだろう、ふくれっ面のアリスに頰をつねられてしまった。
と、ここで。
「「あ、あの……」」
着いたと言われ、ぱっと見は何も無い所で放置されていた双子が、恐る恐る声をかけてくる。
「あ、ごめんなさい、こっちですよ。これから見る物は他言無用ですからね」
再び慌てたアリスがシェルターへと案内。
「「地下、ですか? ……こ、これは」」
戸惑いつつも下りた双子が、内部の様子を見て呆然としている。
最近、嫁たちがあまり驚いてくれなくなったので、何だか新鮮だ。
「ふふふ、ここで驚く人を見るのも久しぶりな気がしますね」
アリスも、驚いている双子を楽しそうに見ている。
ヒカリはさほど驚かなかったし、リリィの時はアリスが寝てる間に案内し終わっていた。アリス的には、カーラが驚いているのを見て以来になるのだろうか。
ーーーーーー
「ヴィナとディアね」
落ち着いた双子も眠くないと言うので、アリスとお風呂に入ってもらってから、リビングへ通して他の嫁たちが起きてくるまで話を聞くことにした。
「「はい」」
ピンクシルバーとでも言うのか、桃色がかった銀髪のショートボブを揺らして頷く双子。
ヴィナが姉でディアが妹という話だが、見た目では全く区別がつかない。
そして。
「「十五歳になります」」
ということなので、アリスの一つ下で、この世界では成人していることになる。しかし、小柄なカーラよりもさらに小さいということを抜きにしても、その容姿はかなり幼く見える。
とはいえ。
「そうか。じゃあ、赤色の物を何か用意しないとな」
ドワーフの女性は、他種族に対して成人していることを示すために赤色を身に付けるのが慣わしとなっている。成人しているのなら、そう扱わねばなるまい、とそう言うと。
「「あ……、ありがとうございます」」
驚いたように目を見開いて戸惑う双子。
子供だと思われるのを何よりも嫌うらしいので、成人しているのに赤色を身に付けていないというのはかなりおかしな事なのだ。しかし、異常事態下にあった双子は、あえて子供であると装うために種族の誇りを押し殺していたのだろう。
「良かったですね」
というアリスの言葉を受けて、今まであまり変わらなかった双子の表情が実に晴れ晴れとした笑顔に変わる。改めて自分たちが解放されたのを実感した、といったところだろうか。
「ひとまずこれで」
と、赤い髪紐を創って渡す。
今のところ全く区別がつかないので、ついでにヴィナが右、ディアが左で髪を結っておいてもらうことにした。
そうこうしていると。
「おはよ、う?」
目覚めてからオレとアリスが居ないことで異変に気づいたらしい他の嫁たちが、恐る恐るリビングの扉を開けて入ってきた。
「おはよう。ちょっと同行者が増えることになったから、それぞれ自己紹介しといてね」
お嬢様の件は隠し、暗殺者集団を潰しに行ったら双子を拾ったと説明すると、にこやかに挨拶をしてくれる嫁たち。
事情があることを察し、あまり詳しく聞いてこないのはありがたい。
だから。
〈次はみんなにも声をかけるから〉
〈〈当然です!〉〉
双子に見えない位置で体のあちこちをつねられるのは我慢しよう。
〈アキラさんも懲りませんね〉
〈あ、アリスも同罪だからね。今夜は覚悟しておいてね〉
〈……むむ、納得できません〉
カーラによってアリスの処分も決まったことだし。
「さて、じゃあ朝ご飯食べてから出発しようか」
「「世界を見て回られているんですよね。私たちも楽しみです」」
「うん。まぁ、よろしくね」
双子との距離感がいまいち掴めないが、まぁ時間が解決してくれるだろう。




