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64、王都デューロンへの旅路

 

 

「けっこう遠くなってきたわね」


 今日も今日とて馬車の上。相も変わらず左隣にアリスが座る中、右隣に座ったヒカリがオレ越しに見ているのは「北壁」。まだまだ高くそびえているが、南東方向へ進んでいるので順調に離れてきてはいる。


「デューロンに着く頃には見えなくなるかもね」


 「北壁」の向こう側へ行き、触手ナマコを殲滅するために丸々三日も飛び回るはめになったのだが、あれは大変だった。

 ほんの一月ひとつきほど前のことを妙に懐かしく思いながら、ヒカリの呟きに応える。


「今更だけど。アレ、何だったんだろうね」


 どうやら同じような事を考えていたらしい。今度は明確にこちらに問うヒカリ。


「ふむ」


 五千年前の人々は運良く封じ込めることに成功したようだが、触手ナマコは速攻で滅ぼさないと、際限なく増えてあっという間に全てを喰い尽くすだろう。封じ込めた際も、それ以前の記録のほとんどが失われているらしい事を考えると、かなりギリギリだったはずだ。


(あんなのが普通に生まれてくることはないよね)


 ということで。


「宇宙から来た、というのはどうかな?」


 と、予想するが。


「えー、ファンタジーな世界にエイリアンはないなー」


 からかうようにオレの頰をつつくヒカリ。


「いやいや、その否定理由もないわー」


 それはあんまりだろうと文句を言うも。


「ふふふ、甘いわねアキラくん。今さら真実なんて分かりようがないんだから、ここは趣味に走るべきよ」


 ドヤ顔で返されてしまった。


「むむ、確かに。そう言われると、エイリアン説は粋じゃなかったかな」


 なんだかオレが間違っていたような気がしてきた。


「ということで。私としては、断然、錬金術による合成生物説を推すわ」

「なるほど、キメラみたいなやつだね。ホムンクルスなんて居たんだから、あながち間違いじゃないかも」


 そんなおバカな会話をしていると。


「そういえば。マンガに出てくるキマイラって、なぜライオンがベースになってるんですか?」


 とアリス。それに対して。


「元々キマイラ自体は神話に出てきた怪物なんだよ」


 と答えてから気づいた。


「って、そうか。ライオンって、こっちじゃ下から数えた方が早いんだっけ」


 もちろん普通の人間よりは強いのだが、武器を持つ訓練された人間ならば、一対一で勝てなくもない。ましてや、薄っすらとでも『身体能力強化』が出来るCランク以上の冒険者たちなら、かなり楽勝だろう。この世界には、ライオンよりも強い生き物が多過ぎるのだ。アリス的に、キマイラがあまり強そうに見えなかったとしても仕方ない。


(むぅ、オレ的にはキマイラってカッコイイのに)


 これがワールドギャップというやつか。

 つまり。


「元の世界では、ライオンは最強の生物として位置付けられてるからね。ライオンのキマイラの方が、そのモンスターが強そうだと分かり易いんじゃないかな?」


 この説明の方が良さそうな気がする。


「なるほど、ドラゴンみたいなものなんですね」

「そうそう、向こうのライオンは、こちらのドラゴン的な感じなんだよ」


 アリスも納得してくれたようだが。


「龍虎相打つって言いますもんね」


 ここで、後ろからオレの首に抱きついていたフェリからの不意打ちが入り。


「いやいや、確かに同じネコ科だけれども。と言うか、龍とドラゴンもかなり違うからね!」


 思わずツッコんでしまった。

 嫁たちは着々と知識を得ているようだが、その方向が少し間違っている気がしてならない。クスクス笑っている嫁たちの行く末が心配だ。

 ……誰の所為せいか、なんてことを考えてはいけない。

 

 

ーーーーーー

 

 

「お、これはゴブリンかな?」


 昼を過ぎた頃、右手の森の中に気配を察知。うろついている奴だけでなく、その集落の位置も「探知」の範囲内にある。


(どうするかなー)


 もちろん、ゴブリンは滅ぼさなければならないのだが、今日はわざわざ殲滅しに行く気分ではない。なんとかこの場から殺れないものか、と考えていると。


「わたしが殺りましょう」


 と、行動に移ろうとしないことからオレの考えを読んだらしいカーラが、本を閉じて立ち上がる。


「じゃあお願い」


 試したい魔法でもあるのだろう、と任せることにすると、荷台の横の幌を捲ったカーラが外に手を突き出し、魔法を発動した。


「……『追尾光線スターダストフォール』」


 斜め上へと放たれた無数の細い光線の軌跡が、上空で曲線を描いてゴブリンたちの頭上へと降り注いだ。


「おぉ、凄いな」


 他に被害を出さず、二十匹近く居たゴブリンの命のみを一撃で断ち切ったのも凄いが、屈折させるのではなく光線を曲げたことにも驚いた。


「光は直進するものだからね。それを曲げようなんて考えなかったよ」


 さすが魔法、と感心していると。


「アキラさん……。まったく! 散々わたしたちの常識を壊しておいて。どの口がそんなことを言うんですか!」


 後ろからカーラに頰を摘まれた。

 確かに。先入観が無詠唱などの魔法の発展を阻害していたことを知っているというのに、その上であの発言はなかったな。と、甘んじて受け入れようと思ったのだが。


「痛たた……、って、あれ?」


 なぜかアリスとヒカリに、抵抗出来ないようガッシリと腕を抱え込まれてしまった。


「ちょ……、反省してるから」


 さらに、フェリとリリィもオレの頰を摘みだす始末。


「何ということだー。ここには敵しか居ないのかー」


 その後、カーラの気がすむまで弄ばれた。それは予定通りだったし、嫁たちのチームワークが良いことも分かった。だがしかし、なんだか納得がいかない。今夜はハッスルさせてもらおう。

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